おまけ。レイラとニコラスの会話
「のぉ、公子」
レイラはニコラスに優しい声をかける。
「妾の子にならぬか?」
ニコラスは意味が解らないとでもいいたげに、首をかしげた。
「養子ではない。実子じゃ」
レイラはきょとんとるニコラスの様子を見て、手をポンと打った。
「おおそうか。実子では無理があったのぅ。孫はどうじゃ? 孫なれば違和感はあるまいて」
そう言って破顔する。
「妾は昔はいろいろと、おいたをしてのぅ。30年前……いや、40年ほど前じゃな。女児を産んだ。名前は、そうじゃな、ライラとでもしておこう。当時、多忙だった妾は、ライラをある者に預けた。わが娘でありながらも、ライラは魔術に興味を示さなくてのぅ。生まれてすぐに他所へやられたせいか、妾に懐かず、ある日、妾の元を飛び出しおった。しばらくして戻ってきたのじゃが、身籠っておってのぉ」
ニコラスはレイラの物語をポカンとしながら聞いていた。
「ライラは腹の子の父親をついに明かさないまま、男児を出産し、また姿をくらましてしまったのじゃ。今となってはその生死もわからぬ。どうじゃ?」
レイラはそう問いかけると、ニコラスの顔を覗き込んだ。
「師匠……」
ニコラスの瞳の奥が揺れる。
「ライラの産んだ男の子は、魔術の才能に恵まれておってのぉ。名はニコラスというのじゃ。気に入ったかえ?」
レイラはニヤッと笑った。
「レイラおばあ様?」
ニコラスはつぶやいた。
「レイラ婆でよいぞえ。今よりそなたは、妾の孫。魔術師の名門・ザルリディア一族の一員。そなたは生まれ変わるのじゃ」
レイラは目を細め破顔する。
「レイラ婆」
ニコラスの目から涙があふれる。
「おいのう。ニコラス、はよう良うなって、この婆を安心させてたも」
レイラはあやすように、ニコラスの頭を撫でる。
「婆様」
ニコラスは嬉しそうに微笑む。
「よしよし、良い子じゃ。さて、もう疲れたであろう。ゆっくりと休むがよい」
レイラがそう言うと、ニコラスはホッとしたように微笑み、目を閉じた。