24.姉妹ご対面①
「そんで、あんたは何者なんだよ」
イディアを寝かしつけてから、さっきからずっと疑問に思ってた事をラースとか言う女に問う。
エーア様の姉貴って言うなら、ウォスタと俺の母親かもしれない女。
もし俺らになんかするようだったら、逃げないとまずい。
「さっきから、何度も言ってるけど敵ではないわ。そんな顔しないでよぉ~? むしろ、味方なんだからぁ」
ばばぁに今居るこの場所を教えたなら、どうこうするってわけではなさそうだけど…
「あら、私があなたの母親かどうか気になるのねぇ? 父親なら教えてあげるわよ? ふふふ」
父親…そうか、そうだった。俺ってば母親もそうだけど父親の顔も知らないんだった。
「さっき、あなた達を襲って来た子達はあなたの兄弟ねぇ」
「き、きょうだい?!」
「あ、ウォスタもね? だから、あなたは4人兄弟かしら?」
は? って事はこの女は自分の息子に攻撃したって事か?
「ちなみに、さっきの子達もみんな母親は違うわよ? 本当はウォスタにも会って、みんなが揃ってる時に話したかったんだけど…まぁ、しょうがないわね。少し、昔話をしましょうか」
「お、おう」
生唾を飲み込みながら、コクンと頷く。
ラースの顔はさっきと違って、真剣な顔になった。
「エーアがオゥクと結婚をしたばかりの頃、黒竜のクックに出会ったの。…人の姿で何故か倒れていたわ。まぁ、倒れているふりだったんだけどね? でも、倒れてる人をそのままにしとくわけには、いかないじゃない?」
まぁ、そうだろうな…。
竜には人好きが多い。だから、人と結婚する竜が多いのも確かだ。俺は人の事は嫌いではないが、そこまでは好きではない
イディアは人を苦手としてたが、あれは母親の言い付けで竜だという事がバレてはいけないって事で人を避けてたんだろうが、俺を助けてくれたのは竜が人の事が好きって言うのがあったからかもしれない。
ん? 待てよ? 俺ってばイディアの事を人だと思って結婚してやるとか言わなかったけ…やっぱ、俺も人好きになるのか?
「人だし、同族の竜じゃないと気を当ててあげても回復させる事が出来ないから、その人を保護して介抱したの」
ここで、気を入れてたならイディアと俺と同じ用な感じだったんだな。
「そしたらよ、突然キスされちゃってねぇ~っ? そこから、もぉ記憶はぶっ飛んだわよ」
「キッ?! キス?!」
思わず反応して叫ぶ。
ちょっと、待てよぉ…俺とその黒竜やっぱ同じ事してんじゃねぇか。
いや、俺はまじで気絶して倒れてたんだが…。
それが、父親か? そいつと同じ気が流れてるから俺もイディアに? なんか、俺…ものすごく恥ずかしい事してないか? 情けねぇ……。
「ちょっと、フレィくん聞く気あるの?」
「あ、あるって!! 考え事してたんだよ。それで、記憶がぶっ飛んだってなんだよ」
やばい、俺と黒竜のやってる事が似すぎてて思わず考え込んじまったし。
「そう、それなのよ。気付いた時には妊娠してたのよねぇ…」
気付いたら妊娠って…。
俺は、そ、そこまで俺はイディアにしてねぇからな!! 心の中で反撃をしてみる。
「フレィくん、さっきのイディアちゃんを寝かし付けたの黒竜の力って知ってて使った?」
「はっ?! し、知らねぇよ。俺の弟…レィアがもっとガキの時にあれすると、泣きわめいたり、我が儘言ったりしてる時にあれすると、気持ち良さそうに寝るからイディアにしただけだって」
ふーん。と顔で俺の事を見るラース。
「な、なんだよ。無理矢理寝かして、俺がイディアになんかすると思ってんのかよ。するんだったら、とっくにやってるし」
「まぁ、あれが本当は正しい使い方なのかもしれないわね。あれで、寝かされると起きた時スッキリしてるし。あ、さっきの続きなんだけど、キスをされたって事はどう言う事かフレィくんはわかるわよね?」
そりゃ、気を入れたって事だろ? 黙って、頷く。
「あの人の気を入れられるとどうも、変になっちゃうみたいなのよねぇ…。フレィくんは村を燃やした火竜は知ってるのよね? あれが、いい例だわ。あ、だからと言って気を入れられたからって、悪い事するってわけではないのよ?」
悪い事をするわけではない?
「感情をコントロールされるのよ。さっき、フレィくんがイディアちゃんを寝かしたようにね?」
「は?! 俺、そんな事は出来ねぇし!! 普段よりは深い眠りかもしんないけど、起こせば起きる!!」
コントロールってなんだよ。
俺の中には黒竜の気はもうないはずだし、そんな事が出来るわけない。
「あ、ごめんなさい? 言い方が悪かったわね。さっきのは、イディアちゃんの興奮の感情を抑えて眠りに誘ったって事はわかってるわよぉ。そんな怖い顔しないのっ!!」
「だったら、なんだよ!!」
「だから、気を入れられた場合がヤバいのよぉ。気で会話するのと同様に相手の行動を支配する事が出来ちゃうみたいなのよ」
行動を変えるって、じゃあ、あの時の火竜は村を燃やしたのは黒竜の気でコントロールされて燃やしたって事か?
突然、ラースが吹き出した。
「フレィくんったら、面白いわねぇ? フレィくんはイディアちゃんに気を入れて貰ったのかしら? 黒竜の気は浄化されてるみたいだけど、ちゃんと中には残ってるわよ?」
「残ってるってなんだよ?!」
「あら、そんなに興奮しないでちょうだい? 残ってるって言ったって、あなたは悪い事するつもりはないでしょ?」
「当たり前だろっ」
俺が気でコントロール出来たとしたら何に使うんだよ。
イディアを口説くため? けっ、くだらない。村を燃やした火竜もそうだが、ラースも気を入れられてからの記憶がないんだろ。
「まぁ、どの竜だって気の使い方によっては、なんでも悪い事に使えるんだから深くは考えなくていいんじゃないのかしら? 水竜だって、洪水起こそうと思えば出来るし、光竜だって…って、あら思い浮かばないわね? うふふ」
「……」
それで、こいつは何が言いたいんだ?
そう思ったその瞬間、ドカーンっと大きな衝撃が後ろから俺を襲う。
「――っ?!」
ぶわっっと俺を光が包んだ瞬間にバチーンと電気がカラダに走る。
これは、さっきイディアが放ったやつか?! 一体、なんなん……
「このクソガキぃ!!!! 私のイディアになにしてくれてんじゃ、ぼけぇぇぇぇっ!!」
「んげっ!! ばばぁっ?! っつ…。こ、これなんなんだよ!! 雷っ?! 待て、ぎゃあっ!! 焼ける!! 千切れる!! いってぇぇぇぇっつ!!」
「あんたは、当分その中にいなさいっ」
バサッとイディアの近くに着地するエーア様。
ちきしょう、不意打ちに打ちやがった…。ビリビリいてぇよ!!
「あら、エーアご立腹ね? ふふふ」
「うるさいわよ姉さん!! 本当は姉さんにもやってやりたい所だけど、イディアのキズを治すのが先決だから今は見逃してあげるわ」
「本当? じゃあ、フレィくんのお仕置き手伝ってあげるわね。はい、ドーン!!」
ラースに水を浴びせられて、余計に光…電気が俺のカラダに通るようになる。
「って、関係ないお前まで?! ぎゃあああああああっ!!!!」
俺、死ぬかもしんない……
泣いてもいいですか??