19.四角関係?!
「イディアーっ!! 部屋の準備出来たぞー。こっちこっち、早くっ」
朝食後にパパに腕を引かれて、どこかに引っ張られる。さっきまで居た部屋は客室とか言ってたっけ。
「あの、私さっきの部屋でも十分なんだけど…」
「ダメだ!! イディアは私の娘なんだからもう不自由などはさせないから」
「お、オゥク様。そちらの方向は今は使ってない側室の部屋ですよ!!」
「側室の部屋ってまだ存在してたの?!」
後ろから追いかけて来たウォスタさんの声にピタッと足を止めるパパ。
側室て…あれだよね? 良く言えば第二夫人、悪く言えば愛人って言うやつ?
「正室もまだなのに僕に側室って噂が広まったら、僕がクソ面倒なのでやめて下さい!!」
「側室用の部屋がまだ、あるの知らなかったんだもん…」
「そりゃ、そうですよね?! エーア様しかいらない、って騒いで側室問題は全て無視してましたもんね…。そのおかげで、僕がどんだけ早く子供をって言われてるか…」
クソ面倒…ウォスタさんも毒を吐くんですね。それにパパも、知らなかったんだもんって、2人とも面白過ぎる。
「…あ。オゥク様、正室の部屋だったら僕はかまいませんけど?」
「う、う、う、う、ウォスタっ!!!!」
「冗談ですよ。僕が前まで使ってた部屋に荷物など、移動させときましたから。オゥク様とエーア様の娘なんだから、そちらの部屋が妥当でしょう? イディアちゃん、あっちだからオゥク様はほっといて行きましょう」
私の肩を掴んでくるっと方向転換させて「こっちだよ」と道案内をしてくれる。後ろではパパが「まだ、イディアは結婚させないんだからぁぁ」と半べそで追いかけて来てる。
「…ウォスタさん!! なんですか?! こ、この部屋は」
「だよねぇ~、そういう反応になるよねぇ~。僕も最初はそうだったからねぇ」
ですよ!! なんですか、この無駄に広すぎる部屋は。ベッドはダブルベッドが二つ分位あるよね? それに、なんだろ? 扉がいっぱいありますけども。
「あ、イディア!! こっちは浴室で、こっちがトイレで、こっちが服をしまうとこで、こっちは平民の家をモデルにして作った部屋だよ」
なんで、パパがこの部屋の説明を始めたのかと思ったらウォスタさんが使う前まではパパが使ってたらしい。
しかも、平民の家をモデルの部屋って…。家の中に家があるってかなり引いたけど、キッチンがあってシングルのベッドもあって
「私の家だぁ!!」
「そうそう、ここに来てドン引きするのは僕が身をもって経験してるからね。同じようにしといたんだ」
「ここで、エーアもイディアが生まれる前に外で生活が出来るように料理の練習してたんだよ」
そっか、だから小さい時に住んでた家になんだか似てるんだ。やった、あっちの無駄に広いベットじゃあ落ち着いて寝る自信が無かったからシングルベッドがあって良かったぁ。
「あ、そうだ。ウォスタ、結婚は焦らなくて大丈夫だから。エーアが帰って来てくれたから、子供作れるから。イディアも妹か弟欲しいだろ?!」
「は、はぁ…」
「イディアちゃん、気にしなくていいよ…。昔からエーア様が大好きでしょうがない人だから」
耳元で溜息をつきながら、ウォスタさんが嘆く。
そっか…、なんだかママの尻にしかれるのは昨日から、なんとなく感じてたけど当たりかぁ。
「冷蔵庫の中には食料が入ってるが、夕食はみんなで食べるからここで済まそうと思わないこと。いいね? イディア」
「はい、わかりました」
「イディアちゃん、僕とオゥク様はこれからやる事があるから、なにかあったらミュアが近くにいるから聞いて」
「えーー。まだ、イディアと一緒に…」
「オゥク様!!」
「…はい」
パタンと部屋を出てった2人ですけど、今はウォスタさんが王様なのはわかるけど…。パパに威厳というう物はないのでしょうか? パパの見た目は、出来る男って感じなのにもったいないなぁ。でも、まぁママがいるんだから関係ないのかな。
さぁて、これから何しようかな。ただ、ここでジッとしてるのもかなり暇なんだけどなぁ。ミュアさんが、近くに居るって言ってたけどどこにいるんだろう? そっと、部屋の入り口のドアを開けてみる。
「イディア様、どうなさいましたか?」
「うわっ!! あ、ミュアさん。ちょっと、暇で何をしようかと思って」
ドアの横に居たのか、にょきっと出て来たミュアさんに驚く。
「お暇…。あ、もうすぐにこちらに着くと聞いてる方が来るはずなんですが」
「誰か来るんですか?」
「えぇ、フレィ様のご家族がこちらに到着するとの事ですが…」
火竜様たちが来るんだ。フレィのパパとママに会えるのかぁ、ん? パパとママじゃないのか? まぁいいや、家族には変わりないもんね。
「――――ぉねぇぇぇぇさまぁぁぁぁぁぁっ!!」
「うぐっ…?!」
部屋に大きな音を立てて、知らな赤毛の可愛いドレスを来た女の子の子供に飛びつかれタックルされベッドまでふっばされて思わず変な声が出る。
お姉さまって、呼ばれたけど気のせいだよね? パパとママの子だったら赤毛は出て来ないよね?
「あ、お姉さま、初めまして。レィアと言います」
「えっと、イディアです?」
「兄様から、先ほど聞きました!!」
「兄様?」
「はい!! フレィ兄様です!!」
あ、なるほど。フレィの家族が来るって言ってたもんね、兄妹がいてもおかしくないか。
しかし…なぜ、私の上に馬乗り? チラっとミュアさんを見るとニコニコしてる。まぁ、いっか。可愛いし、重くないし。
よいしょと、レィアちゃんを乗せたままカラダを起す。
「お姉さま! お姉さま!!」
んー。可愛いっ。やっぱり、子供は無邪気な感じが普通だよねぇ。子供とちゃんとかかわったのだって、フレィが子供の姿だった時だけで最近の子供はおかしいと思っちゃってたけどこれが本当の子供だよぉ~。
「なぁに? っ?! ん? んぐぐぐぐっ?!」
ニコニコ、お姉さまって呼ぶレィアちゃんが可愛くて頭を撫でようとした瞬間レィアちゃんに頬っぺたを両手で押えられ、音がなるんじゃないかって位にぶちゅううううううってキスを…。
なぜ?! しかも、力かなりあるよこの子!! 息できないから。離れないから!! なになになに?!
「あっ?! レィアなにやってんだよ?! このマセガキっ!!」
「いでっ!! 兄様なんで殴るんだよ!! 離せ。離せ!!」
どうしようもなくジタバタしてたら、ボカッとレィアちゃんを殴って、首根っこを掴んで私からレィアちゃんを離してくれたフレィ。
「フレィ、ちょっと女の子を殴るのは…」
「あぁ?! レィアはこう見えて男だ!! 女を油断させて色んな女を手つける為にこんな格好してんだよ!!」
男の子?! 女を手つける為の格好…って、どっからどう見てもレィアくん? 10歳位だよね? そりゃ、早すぎはしませんか?
「もう、男ってばれててもいいもんね!! ヘタレ兄様とちがって、もう気は入れたもん!! まだ、入れてないとか、兄様ヘタレなんだね~。あはは」
「う、うるせえ!! って、気入れただと? イディア早くそれ出せ!!」
「痛っ!! お姉さま、出しちゃだめっ!! お姉さまと僕は50歳位しか年は変わらなんでしょ? こんなヘタレな兄様ほっといて、お姉さま僕と結婚しようよ!!」
…なんだ、この2人は。ポカーンと喧嘩してる兄弟を見る事しか出来ない。確かに気は入れられてるなぁ。別に入ってても問題はなさそうだけど、結婚ってこの兄弟はってか、火竜はキスしてからプロポーズするのが普通なのでしょうか?
「あ、やっぱりここに居たのか…。イディアちゃん、あの2人は何をしてんの?」
「いや、あの…。レィアくんが、私に気を入れてる所にフレィが来てからあれです…」
2人を探しに来たのか、息を切らしてるここに来たウォスタさん。
「あいつらは、ほっといて行こうか」
「いいんですか? ほっといて」
「んー、止めたい?」
「止めた方がいいと思うけど…」
少し悩んで喧嘩してる2人をちらっと見て、私に視線を向ける。
「じゃあ、イディアちゃんこっち向いて?」
ん? なんだろ、ウォスタさんを見上げる。
「…っあ?!」
「消毒?」
私に軽くチュっとキスをして、ニコッと笑うウォスタさん。固まってると喧嘩してた2人もピタリと固まってこっちを見てる。
「う、ウォスタ?!」
「あ、ウォスタ兄様のが男らしいね」
ショボーンと肩を落としてるフレィとは反対に、レィアくんはウォスタさんを「男はやっぱこうじゃなくっちゃ!!」ってニコニコしてる。
「ウォスタ…気は入れたの?」
「当たり前でしょ?」
それを聞いて、またショボーンとするフレィ。
「あ、フレィ? 言い忘れてたけど、イディアちゃんをオゥク様達の子供だと公表した後に僕も2人の子供じゃないと公表する事になるから、僕もイディアちゃんと結婚出来る用になるんだよ」
「それ、本気で言ってんの?!」
「結婚出来るならイディアちゃんがいいもん」
「じゃあ、僕とウォスタ兄様はライバルですね!!」
「フレィはヘタレだから、ライバルにもならないからね。僕とレィアの勝負だねぇ」
「はいっ!!」
ライバル?! 結婚?! いやいや、レィアくんは置いといて。ウォスタさん、私と結婚とか本気で言ってるの?
なにが、どうなったーーーーっっ!!