1.私は竜です。でも、秘密です!!
「光竜にあなたは生まれて来てくれて、ありがとう。愛してるわイディア……」
私の体を抱きしめながら、肩が震えている。抱きしめてる顔を上げて、私と同じ髪色で透き通る金髪。光が当たるとシルバーにも見える人。
涙をいっぱいためて、綺麗な笑顔を覗かす人はママだ。その時、わたしは暖かい光に包まれて人の体に変化した。
「……んあっ」
久々に生まれた時の夢の見たなぁ。ママに久々に会えたから心いっぱいに満たされる感じが心地いい。それにしても、ママは何処で何をしてるんだろう。早く帰って来ないかな……。
『イディアーっ!! おはようっ!! 早く起きてご飯ちょーーーーだいっ』
「ふふっ。わかった、わかったぁ。今、お外に出るからみんなでいらっしゃい」
まだ、ベッドから抜け出せてない私に、部屋の窓のとこでカァカァと鳴くメスの白いカラスのコーが頭の中に直接声をかけてくる。私は動物達の声が頭の中に響いて来て会話ができる。
よくコーにはドジな性格って言われるけど、数え年では人間で言うおばちゃんの年齢。
私は光竜として生まれたから人間よりも寿命が5倍位違う。人化の術を使っても、竜の年齢だとまだまだ若造だから見た目も、25歳位までは順調に老けてたのに突然老けなくなった。
この世界は現在、火竜と水竜の竜達が王族として世界をまとめているのを子供の頃に知った。
自分たちの他にも竜がいることを知った私は、その時ママに駄々をこねた。
「同じ竜のお友達が欲しい!!」
と駄々をこねた時にママに教えられた。
「私たちの光竜の存在は、時が来るまで誰にも気付かれちゃいけないの」
その時を教えてくれるはずのママも探し物があると言って20年前にパタリと姿を消した。
その時がいつ来るのかは、わからないけどママの言い付けを守ってる。
そのせいで、何十年も老けない姿で同じ町に滞在が出来るわけもなく、7.8年ごとに適当に転々と引っ越しを繰り返していた。
ここの村では最初に18歳と言って引っ越しをして来て、今は22歳だから4年目。みんな、優しくしてくれる。けど、ママの言い付けで竜とはばれないように暮らしてる。
そういえばね、私は生まれた日の記憶がある。
これはずっと普通だと思ってたんだけど、少し? かなり? 人間とは違うみたい。人間とそういう話をしたことがなかったけど、15年前に出合った男の子が教えてくれたんだ――。
******
『イディア!! イディア!! 呑気に洗濯してる場合じゃないよ!! ねえってば!!』
「なぁによ。天気がいいから気持ちよく洗濯してるのに。ちょっと干すまで待てないの?」
この町に来てから知り合ったメスの白いカラスのコー。
『待てない!! いいから早く来て!! 来ないなら無理矢理でも連れて行くんだから!!』
「あぁっ!! わかったから、引っ張らないで。行くから!! イタッ。ちょっとぉ!!」
私の服の首元をくちばしで銜えて、必死に森の中に引っ張るコー。
「もうっ、なんなのよぉっ……。って。え?!」
私は目の前の状況に驚いた。木の影に横たわってる男の子が居る。
「い、生きてるの?」
『だから、早く来てって言ったでしょっ!! バカイディア!!』
そっと胸の所に耳を当てると鼓動は弱いが心臓は動いてるようだ。怪我はしてないみたいだけど…。
「コー、ど、ど、ど、どうしよう?」
私の上をヒラヒラと飛んでるコーに助けを求めて見上げる。
『わたしが何も出来ないから、イディアを呼んだんでしょ!!』
「そうかもしれないけど…」
と、取り敢えず、私の光の力をこの男の子の中に入れれば起きるのかな? えっと、これは人にやっていいんだっけ? あぁ、でもなんとかしないと。
男の子の胸に手をかざす。フワッとその手からでた光をカラダの中に吸収させる。
「これで、大丈夫なはずなんだけどな……」
男の子の顔を上からジッと見つめる。
「――っ?!」
パチッと、目を開けた男の子と目が合う。
前振りなしで目が開いたからどうすればいいか考えてなかった。ど、どうしよう? 固まったまま男の子を見つめる。時間にしてそんな長い時間ではなかったはずだけど。
「誰だよ? あんた」
冷たい言葉で、私に言い放った男の子の言葉に余計になにも言えなくなった時にコーが怒りだした。
「カァカァ!! カァッッ!!(あんた、誰が助けたと思ってるのよ!!)」
「いてっ!! なんだよ、この白いカラス!!」
男の子にくちばしで突っついて暴れるコー。
「あ、コー!! 何してるの?! やめなさいって!!」
必死でコーを止めようとする。起きたばっかりでしょうがない…はず。
「カァッ!! カァーッ!!(だって、この子!!)」
「わかったから、突くのはやめなさい!!」
あ。ヤバい。人の前でコーと会話しちゃった…。
「あんた、カラスと話せんの?」
「え、あっ? あ、話せるわけないじゃない!!」
あーん。バカバカ。私のバカ!! でも、カラスが怒ってる姿を止めてただけ!! うん。私は話してない!!
「ねぇ、ところで…ぼく? なんで、こんな森にいるの?」
「ぼく? はぁ? 俺?」
「あなた以外に、話しかける子はここには居ないけど…」
「えっ?!!!」
ハッとした男の子は自分の体中を確認し始めた。な、なによ。もう……。 私とあなたしか居ないじゃないのよ。髪の毛は黒で目は赤。この目の色はこの国に来てから、見かける事なかったけど村の子ではなさそう。はぁっ。私、あんまり人と会話するのに慣れてないからどうすればいいかわかんないよぉ。どうしよう。
「ちっ。あんの、くそじじぃ…」
「くそじじぃ…?」
くそじじぃって…、最近の子供ってこんなに口悪いの?! えぇ、かわいくない……。
「あ~。あの、お姉さん?」
「は、はい!!」
あんたから、お姉さんに昇格したけど口調はきつい。
「ここって、ここってどの竜の領土?」
「ここは水竜様の…確かウォン様の領土のはず?」
それを聞いて、男の子はガクリと肩を落とす。あれ? この国の子じゃないのかな?
「お前、住んでる村は?」
「えっ?! 私は村に住んでないの。家はすぐそこだけど…行く?」
はぁっと溜息を吐いて頷く男の子。今度はお前って言ったよ……。
「ぼく、お腹空いてない?」
テーブルに座らせて、ミルクを出すとぐびぐび飲む男の子。そんなに勢いよく飲めればカラダの方は大丈夫そうね。窓の外でコーが心配そうにこっちを見てる。
「腹…は減ってる…。と言うか、お前!! ぼくと呼ぶのをやめろ!!」
「じゃあ、な、なんて呼べばいいのよ…」
朝ご飯の前に、私も洗濯をしてたからお腹が空いてたのを思いだして、パンと卵とハムを焼いて簡単な物を作る。
「俺の事はフレィと呼べばいい」
「よろしくね? フレィくん。私はイディアよ」
「フレィと呼べ!!」
「は、はい…」
パンと焼いた卵とハムをカタンッと音を立てて、テーブルの上に出す。
この子は…。子供扱いされるのが嫌なのか、それともませてるのか。話してると緊張しかしないよもう。
私が竜ってばれなきゃいいんだから、こんな事になるんだったらもう少し頑張って人と会話してみるべきだったのかも…?
「食ったから、俺は帰る!!」
「えぇっ?! ちょ、ちょっと!!」
ひき止めるのもむなしく、聞かずにガタンッと椅子を立ってさっさっと、家を出てってしまった。
『なに、あの子!! せっかく、イディアが助けてあげたのに!!』
「ま、まぁ。私はあまり人と関わるのいけないから…。元気になったならいいんじゃないの?」
コーがいつの間にか家の中に入ってきていて、文句を言ってる。
言ってる事は、わからなくもないけど…。
「ーー?!」
ガタンッと物音がする。
ビックリして、そっちを見るとフレィが申し訳なさそうな顔でこっちを見てる。
コーと話してるの聞かれた?! やばい? これって、やばいってやつだよね?!
「あの、イディア?」
「は、はい?!!」
今の聞かれた? えっと…。あぁぁああああああ、ど、ど、どどどどどどうししよう!!
「おい!! 聞いてるのか? イディア!! しばらく世話になる!!」
「え?!」
今、なんと? コーと話してたのは聞かれてない?
「だから、しばらく世話になる!!」
「はっ、はい!!」
って、え?! 世話って、なに? 思わず返事しちゃったけど、ここに住むってこと―――――――っ?!