夢の中で
「終わったら飯行くぞ!」
北村は笑顔を向ける。
とても不思議な光景である。
今までテレビの中でしか動いていなかった人物が、今まさに私の目の前で動いている。私の目の前で私と同じようにご飯を食べ、私に向かって話しかける。
「今日の話の続きだけどさ、俺は実咲の気持ちもわかるんだよ。俺って今はこうして仕事させてもらえてるけど、下積みが長かったから。」
北村が口を開く。
北村が所属するきみきす。は、今でこそテレビで見ない日はないほどのグループにまでなったが、下積み時代が長く、研究生として活動していた方が長いくらいなのだ。
「仕事がもらえるのって喜ばしいことだけど、その分のプレッシャーも大きいんだよな。そのうえ、この仕事次第で自分の評価も、これからの仕事も、自分の生活だって決定付けられるかもしれないんだもんな。」
「…北村さんには怒られるかもしれないんですが、俺は他の皆みたいにこの仕事がすべてだとは思っていないんです。中途半端なんです。だから俺よりも、もっとこの世界に一生懸命な人が仕事をやった方がいい。」
私にとって、この仕事は興味本位で始めた副業のようなものだ。芸能界という華やかな世界を見てみたいがための口実。だが、そんな軽い気持ちで入っていいような世界ではない。私はおそらく、本来足を踏み入れるべきではなかったのだ。
北村の顔を見ることができない。怒っているだろうか。自分が誇りを持っている仕事に、ずっと努力し続けて手に入れた仕事に、こんな私がやすやすと入ってきたうえに断ろうとしているのだ。
「…実咲。」
北村が口を開く。今すぐ耳を塞ぎたい衝動に駆られたが、それよりも北村の言葉が早く耳に入ってきた。




