メリクリメリーちゃん
どうも。しせんどうでございます。
最近妙に冷えますよね。
僕はお絵かきがしたいのに寒くて手が凍って全然描けないのでtwitterをする毎日でございます。
冬休みの宿題は燃やしました。
12月24日。
クリスマス。
ホワイトクリスマス。
つまり雪が降っている。
そんな雪でさえ溶けてしまうくらい熱々なカップルで街はピンク一色に染まり、クリスマスという本来ならキリストの誕生日を祝うはずのイベントを大いに楽しんでいるのがリア充と呼ばれる者たちだ。
そしてそのイベントを嫌い、妬み、リア充爆発しろと2ちゃんねるでスレを立ててクリスマスを虚しく過ごす者たちもまた少なくはなかった。
鈴木優一もまたその一人だった。
鈴木優一は近くの高校に通うごく普通の男子高校生。
特別顔が悪いというわけでもなく、また背が低いというわけでもない。
普通。
それはまぎれもない普通だった。
これほど普通さを体中から発する男は普通じゃないくらい普通だった。
そのTHE・普通な男子高校生鈴木優一は今年もまた普通であったがために振られてしまったクラス1の美少女、高梨アリスの事を思いながら虚ろな目でこんにゃくをむさぼっていた。
「あああああ・・・・なんでだよ・・・・なんでだよ畜生・・・なんで俺が普通だから~とかいう理由で
振られるんだよ・・・くっそ・・・こんにゃくうめえ・・・」
もそもそとこんにゃくをかじりつつ、パソコンの電源を入れる鈴木。
せっかくのクリスマスだというのに振られてしまい、せっかくなのでこのことをネタにスレッドを立てようと思ったのだ。
「・・・・やっぱやめよう・・・むなしくなるだけだし・・・はぁ。死にてえ」
最後の一口をかじろうとした瞬間、鈴木の携帯電話が鳴った。
『♪♪♪』
「誰だ?こんなクリスマスの日に電話かけてくる奴なんていないだろうに・・・非通知・・・。うーむ、ますます怪しいな。でも暇だし・・・」
電話に出た。
鈴木は暇だった。
『あーえーもしもし?えっと・・・通じてますか?』
かけてきた電話の主はどうやら子供のようだった。
優しく、おどおどしたような可愛らしく聞いていて心地よいその声は、可愛らしい女の子を想像させる。
「・・・・・・・」
鈴木は無言になった。
おそらく、間違い電話だろう。ならばそう伝えてあげれば良いのだが、鈴木は暇だった。
『もしもし・・・もしもーし?うう・・・ぐすっ・・・間違えちゃったかな・・・?も、もしもぉし?』
「・・・・・・・」
『あのっ・・・き、聞こえてますよね?ね?・・・・・・・』
「・・・・・・・」
『うっ・・・・ぐすっぐすっうえっうえええええええええん!!』
「・・・・・・・」
『間違えたぁぁふえええええん!!』
「え、あの」
いたたまれない気持ちになり思わず声を出してしまった。
『ふぇっ!?』
「あ、いや、その・・・」
どうしてもどもってしまう。
悲しいコミュ症の性だった。
『つ、つながってたんですね・・・』
「え、ああはいそれはもう」
『えっ・・・と・・・ということは最初から・・・・?』
「はいそれはもう。ばっちりと」
『~~~~~~~~!!!!!!』
電話の主は電話の向こう側で悶えていた。
泣いたのを聞かれたのがよほど恥ずかしかったのだろう。
鈴木は気の毒になってきた。
「な、なあ悪かったって・・・その、非通知だったし、なんか怪しかったから様子を伺ってかんだよ」
『ぐすっ・・・そうだったんですか・・・すみませんでした・・・私、泣き虫なんです・・・』
「うん。わかる」
『うぐっ・・・ふぇぇ・・・』
「ああ!嘘嘘!!!嘘だから!!!ごめん!」
なんだこのガキめんどくせえなと思いつつもあやす鈴木だった。
子供は苦手だ。
『ぐすっ・・・いじわるしないでください・・・』
「うん、ごめん」
ところでなぜ初対面なのにこんなに仲良く話しているのだろう。
という疑問は一切湧き出てこなかった。
それどころかむしろ告白されるかもとアホなことを考えていた。
「それで、要件はなんだったの?」
『あっ!すみません・・・すっかり忘れてました。す、鈴木さんがいじわるするからですよ!』
「ああ、ごめんごめんって」
ニヤニヤしながら応答する鈴木だが、内心。
なんでこいつ俺の苗字知ってんだ?
と不安になった。
『えっとですね・・・その・・・言いにくいんですけど・・・こ、こここ、こ!!!!』
「こ?」
『ここここ、こここ!!!』
鶏かよ。
『殺されてください!!!!!』
「は?」
鈴木は何を言っているのかわからないといったようなポカンとした顔をしていた。
告白どころか殺されて欲しいと言われたのだ。
しかもなんの脈絡もなく。
わけがわからなくなるのも当然だった。
「えっと・・・ごめん何を言ってるのかさっぱり」
『私、めりーさん・・・です・・・えっと・・・今、あなたの住んでる町にいるの・・・です・・・』
「んあ?ちょっとまていきなり俺のセリフ遮って変なこと言い出すんじゃねえ!」
『ヒッ!!ご、ごごごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!は、早くいわなきゃってあせちゃって!!!怒らないでください!!!』
ベソベソと嗚咽混じりに謝る声の主は愛おしくすら思えてしまった。
「いや・・・怒ってないんだけど・・・その、意味わかんなかったからさ」
『あ、そ、そうですよね・・・すみません・・・えっとですね・・・もう、わかっちゃったかもしれませんが・・・・』
何もわかんねえよとは言わなかった。
『私は、メリーさんなんです・・・・・・』
「・・・・・・・」
『・・・・・・・』
「・・・・・・・」
『・・・・・・・』
「・・・・・・・」
ガチャッ。
ツーツーツー
5秒ほどの沈黙の後鈴木は電話を切った。
メリーさんごっこをしたがって電話した子供だろう。
なんて迷惑なガキなんだ。俺はついさっき振らたばっかで不機嫌だっていうのにふざけんじゃねえと思いながら携帯電話をベッドへ投げる。
それでも少しは気がまぎれたらしく、10分ほど外の風にあたりに散歩へ出かけた。
その頃、家に置きっぱなしにしてある携帯電話の着信履歴には30件以上の着信があった。
「ど、どうしてだろう・・・やっぱり私がメリーさんだから怖くて切っちゃったのかなぁ・・・どうしよう・・・これじゃあ大村さんに怒られちゃうよぉ・・・やっぱり私、メリーさん向いてないのかなぁ・・・」
とある町、鈴木の住んでいる家があるもちもち町。
もちもち町のとある公園のベンチに大人しそうで小柄なとても可愛らしい幼女が携帯電話を握りしめ、座っていた。
「やっぱりすぐに私メリーさんって言ってどこにいるか伝えて切るのが良かったのかなぁ・・・でも初めてだったし・・・もし鈴木さんじゃない人にかけてたら私メリーさん辞めさせられちゃうし・・・ふぇぇ・・・」
「ん?あそこにいるのは・・・」
そこに一人の少年が散歩しにやってきた。
ベンチに座って涙目になっている幼女を見つけ、親とはぐれちゃったのかな?と思いながら幼女に近づく。
「あの、お嬢ちゃん?」
「ふぇ?」
うわ!何この子めちゃくちゃ可愛い!人形みたい!
持って帰ってもふもふしてえ!!!
と思ったがあくまで鈴木は紳士的態度で接することにした。
「どうしたの?こんなところで。もしかしてお母さんとはぐれちゃったの?」
「お、お母さんはいないのです」
しまった。いけないことを聞いてしまった。
「じ、じゃあ保護者さんとはぐれちゃったのかな!?」
「ほ、保護者さん・・・です・・・か・・・保護者さんはいないです・・・」
「ん?じゃあ君・・・孤児・・・?」
「孤・・・児・・・!!!ち、ちちちちちがいます!!!孤児じゃないです!私これでも一人暮らししてるんですよ!!!!」
「え?でも君一人暮らしできるような年齢じゃ・・・」
「な、何言ってるんですか!私こう見えても132歳なんですよ!」
絶対嘘だ。
だが鈴木は優しかった。きっとそういう設定なのだろうと、幼女の言うことを信じてあげるふりをした。
鈴木は普通の男だが優しかった。
特に幼女に優しいロリコン紳士だった。
「わかったわかった。で、そのおばあちゃんがどうしたの?」
「む!お、おばあちゃんじゃないです!!!!人間からしたら確かにおばあちゃんですけど!私はメリーさんの中ではまだまだ新参なんですよ!!!!人間の年で表すならまだ8歳くらいです!!!」
「そっかぁ。8歳なんだね。わかった。とにかく、そんなところにいたら風邪ひくよ?早くおうちに帰りな」
メリーさんって言ったよなこいつ。
まさかいたずらの主はこいつか?と思ったが何も言わないことにした。
言ってはいけない気がしたのだ。
「むむ・・・・か、帰りたいですけど、帰れないのです・・・」
「ん?なんで?」
「お仕事が残ってるんです・・・その・・・こ、殺さなきゃいけないんです・・・メリーさんだから・・・」
なんて物騒なメリーさんごっこをしているんだろう。
世も末だ。
「そっか。メリーさんもたいへんだね」
しかし、それでも鈴木は付き合ってあげていた。
変態ロリコンだが優しかった。
「はい・・・そうなんです。鈴木さんって言う人なんですけど、途中で電話を切られたんです・・・それで、あとから何回もかけてるんですけど出てくれなくて・・・」
「ふうん・・・」
あ。やべそれ俺だ。
鈴木は嫌な予感がした。
さっき聞かなくてよかった。
ということはこの幼女が電話の主だったのか。
こんな可愛い子に殺されるんだったらいいかなぁ。と少しでも考えてしまった自分を殴りたい。
「鈴木さん・・・なんで出てくれないのでしょうか・・・」
「いや、そりゃあだってねぇ。自分を殺そうとしてる人の電話をわざわざ出る鈴木さんはいないんじゃないかな?」
「そうですか・・・やっぱりそうですか・・・」
「え、でもメリーさんなんだし電話しなくても殺しに行けばいいんじゃないの?」
「それじゃダメなんです・・・私たちメリーさんは、電話してる時にしか相手の居場所がわからないんです。それに何回かにわけて電話して殺しに行かなきゃいけないんです・・・。だから電話に出てもらえないと・・・ぐすっ」
ラッキーなことを聞いた。
ということはメリーさんの電話をでなければいい話だ。
ありがとうございます。
鈴木は内心勝ち誇った顔でいた。
が、鈴木はこの幼女が本当にメリーさんと信じているわけでもないし、小学生くらいなのによく設定作りこんだなぁくらいにしか思っていなかった。
「メリーさんの中では、無理やり電話に出なくても勝手につながったり、相手のいる場所の近くの電話、つまり他人の携帯電話だったり公衆電話だったりでもかけて、それをつなげたりすることができるメリーさんもいるのですが・・・私には到底できないことなのです・・・」
「そ、そっか・・・」
もしこの子にそんな能力があったら即死亡だな。
鈴木は少し用心することにした。
「多分、もう鈴木さんは電話に出てくれないですよね・・・」
「・・・いや、そんなことはないと思うぞ?」
「ふぇ?」
キョトンとした目で鈴木を見上げるメリーさん。
「ほら。つまりさ、相手に自分がメリーさんだって気づかせなければいいわけでしょ?ということは最初はメアドとか交換してさ。メールでやりとりして仲良くなってさ、相手が油断した時に電話して場所を突き止めればいいじゃん」
「・・・!!!!す、すごいです!!!天才です!!ありがとうございます!!!」
「はっはっは!なに、気にすることはないさ。困ってる子供がいたら助けるのが当たり前。ってね」
「そうですよね・・・その方法なら確かに大丈夫そうです!これなら確実に鈴木さんを殺せそうです!」
かくいう鈴木は目の前にいるのだが、この調子だと一生気づきそうにないな。
鈴木はメリーさんがすこし気の毒になってきた。
「ありがとうございます!さっそくメールしてみます!」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「あ、あのっ」
「?」
「メールアドレスがわかりません!」
「電話番号はわかるのに?」
「電話番号はわかるのですが、私にメールアドレスを割り出す能力はないのです・・・大体、その能力があるお化けさんは、電話なんてしないでメールで殺そうとしますもん・・・メリーさんはお化けさん、悪霊さんの中でもとっても弱いお化けさんなんです・・・」
「そうなんだ。それは気の毒だったね・・・」
「うっ・・・ぐすっ」
「・・・よし!わかった!じゃあお兄ちゃんが教えてあげよう!」
「え?・・・でも、お兄さんは鈴木さんじゃないですよ?」
「いやぁ。それが実は知ってるんだよ鈴木さんのこと」
「ほ、本当ですか!?」
パアアと目を輝かせメリーさんは言った。
「本当本当。なんだったら俺のメアドも教えるけど」
「それは結構です」
ニッコリとなんの悪意もない天使のような笑顔で断られたのだから鈴木はもれなく死にたくなった。
「そ、そうか・・・じゃあ教えるね。はいこれ。鈴木のメアド」
携帯の方のメアドではなくYahooの方のメアドを紙に書いて渡す鈴木。
流石に携帯のメアドは知られたくなかったようだった。
「わああ!ありがとうございます!」
それでも、メリーさんは鈴木を殺せる唯一の手段だと喜び紙を受け取った。
鈴木は若干の罪悪感が湧いた。
「ありがとうございました!!これで鈴木さんを殺せそうです!!!では!!!」
そう言うとメリーさんは走って行ってしまった。
「さて。俺も帰るか」
とある冬の出来事だった。
この後、メリーさんと鈴木との命をかけたメールのやりとりがあるのだが、それはまた別の話。