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容疑者は・・・

次の朝。


今朝も茉実と靴箱で出会った。

「おはよ~茉実。」

「おはよ、音々。まただよ。また返ってきてる。」

と、傘立てを指差しながら私に言った。指差されたところを見ると、ちゃんと傘がある。

「まったく同じ傘を持ってて、すっかり勘違いしてる…なんてないよね。さすがに二回も。」

私は楽観的意見を述べてみたけれど、真実をとらえているとは到底思えなくて、自ら却下した。

誰も「間違えてごめん」と申し出てくることもなかったし、あんまり気持ちのいい出来事ではないので、みんなにはあまり話さないようにしていた。もう少し様子を見ようということで。




教室で、席に着いた途端に沢口くんが茉実に何やらプリントを渡してきた。


「あ、これ、実行委員にって。昨日の学年委員会で渡されたんだ。松本と一緒に目を通しておいてって。」

「ありがとう。わかった。」

と言って、茉実はプリントを受け取ったところで、ちょうど通りがかった松本くんが声をかけてきた。

松本くんはもう一人の実行委員。でも、実行委員内での役割分担が違うらしく、そんなに一緒に行動はしていなかった。


「なにー?オレのことよんだー?」

何とも気の抜けた松本くん。

「呼んではないけど、実行委員に資料がきてるぞ。」

と、沢口くん。

「さんきゅ。でも、なんか忙しいよなぁ。部活が6時までになってるからまだいいようなもんだけど、堂川さんとかは塾行ってんだろ?大変だよな。そーいや、部活が6時までだから、昨日の雨はギリ免れてよかったぜ。」

と、松本くんは言った。

「松本くんて、サッカー部だっけ?部活って、全部の部活が6時門限なの?」

ふと、何気に私は松本くんに聞いた。

「そうだよ。うちは試合前じゃないからいいけど、試合前の部活は朝練を早目に始めてるらしいぜ?」

「それも大変だねー。」

朝に弱い私には無理な世界だ…。

「バスケ部なんて、6時から練習してるらしいぜ~。」

超他人事で松本くんが言った。




「なんで傘を隠すんだろ?」

根本的な問題を口にした私。


夜、寝る前の寛ぎ時間。

ベッドにもたれて座る朔の足の間に座り、彼の胸に自分の背中を預けてファッション雑誌を読みながら。

「そりゃ、傘がなくて困ったから、そこにあった傘を拝借したってのが普通の解釈だよな。」

朔は、私の髪を撫でながら言った。

「まあね。でも2回連続っていうのがひっかかるのよね。」

「だな。たまたま、って言われたらたまたまなのかもしれねーけど?」

「そうなのよね。まだ2回だし。…考えたくはないけど、悪意のある誰かが故意に隠してるなんかだと、やだなぁ。」

考えただけでも嫌な気分。自分の発言に自分でへこむ。

「でもさ、堂川さん、恨まれるような子じゃないじゃん。」

「そう!そこ!恨みっつーよりは妬みよ!かわいくてぇ、賢くてぇ、運動もできちゃうじゃない?それを妬んでよ。」

「でもさ、ほとんど音々と一緒にいるんだぜ?結界の中にいて、ほぼ守られてる状態だから、妬みとか悪意はないだろう。」

朔は優しく言ってくれた。

妬まれたり恨まれたりでの嫌がらせではないことを否定してくれて、なんだかうれしかった。

「えへへ、そっか。それならちょっとほっとした。」

安心して笑顔になる私。

読んでいた雑誌を床に置いて、ちょっと態勢を変えて朔に抱き付いた。

「堂川さんならありえねーって。むしろ好意からの行動じゃねーのかなぁ?」

「好意ぃ?」

歪んでないかぁ?好きな子のモノ隠すって、小学生かい!

「ん~。まあ、はっきりとは言えねーけど?」

「好意なら、掃いて捨てるほど容疑者は出てきそうなものよね。茉実のこと好きでも近寄れないって輩はたくさんいるし。逆に多すぎてわかんないじゃない!」

そうよ。茉実のこと好きな子は山ほどいる。

「でもさ、やっぱ怪しいのは一人じゃね?」

「一人?」

「そ。タイミングよく現れたやつ。」

「…泉原くん…」


そういえば。彼は2回ともとってもタイミングよく現れたのよねぇ。

文化祭準備のために部活動は6時門限になっていたにも関わらず、私たちの下校する時間までいてた。

そりゃ、帰る準備に手間取っていたのかもしれないけど?

朝も、バスケ部は試合前だからって朝練が6時からって松本くんが言ってたから、朝早く学校に来て人目につかず傘を返すことも可能。

何気に茉実の好みも把握してるし?


「…色々考えてみても、茉実へのストーカー容疑が深まるばかりね。」

「ストーカーって。ま、張ってみる価値はあるだろな。」

「朔、お得意の張り込みね!」

「得意って…」

朔が苦笑した。

「次、雨が降ってきたら…ふぁぁ…張ってみようよ…」

安心してきたからか眠気が襲ってきた。

「そうしよう。さ。寝るぞ。」

と言って、朔は私を抱き上げて布団に入れてくれた。それから優しく私をくるむようにして抱きしめてくれる。布団の温もりと朔の温もりで、すぐさま私は眠りに落ちたのだった。


今回も読んでくださってありがとうございました!

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