秋雨の頃
『傘がないのです』の続編です。
前作よりもらぶらぶさせたいと意気込んではいますが…
また、保険で終わるかも…
楽しんでくださるとうれしいです♪
最近、よく雨が降る。
秋雨前線ってやつかな?しとしと降ったりゲリラ的だったり。
廊下の向こうの窓を眺めながら、私、三谷音々≪みたにねね≫はぼんやりと考える。
文化祭とか体育祭とか、いろいろ行事も控えてるのに、こんな天候じゃ準備もイマイチになりかねない。予定通りにとはいかず、居残りで遅くまで学校にいなくちゃいけなかったり、なかなか大変。
今日も朝から雨が降っていた。結構しっかりと。
午後からの5限目。体育の授業。
「今日の体育は体育館でやるんだってー。男子も一緒だから、合同でなんかするのかな?」
更衣室で着替えながら、私は親友の堂川茉実≪どうかわまみ≫に言った。
普段の体育は男女に分かれて2クラスずつで行われる。私たちは1組だから、2組の女子と一緒。
「バスケかなー?バレーかなー?」
のんきな声で茉実が言う。
「どちらかっつーとバスケの方がいいかな?あーどっちも苦手には変わりないけど。」
ちょっとしかめっ面な私。
「音々、足は速いのに球技は苦手よね。くすくす。」
「球技って、なんかコツがいるじゃない。球勘ていうのかなぁ?走るのはコツも何もいらないからね。」
「ま、そだね。」
まだ茉実はくすくす笑ってた。
茉実って、おっとりしているようだけど、運動神経が結構いいし、勉強もできる。それでいてふにゃんとした雰囲気でかわいいから、男女問わず人気が高い。
そんなふにゃんとした茉実の笑顔に癒されて、体育を乗り切る気力を充てんした。
着替えを終えて体育館に行くと、男子がバスケの準備をしてくれていた。男手って助かるねぇ。
「よお、音々。今日はバスケだってよ。」
永山朔≪ながやまさく≫が声をかけてきた。わざわざここで声かけなくてもいつでもしゃべれるじゃん、とは思うんだけどね。
彼は実はヴァンパイアで、私の血の匂いに惹かれて落ちてきたという、めっちゃ怪しい男である。
まあ色々あって、一応私の彼氏ということになってる。
「朔、バスケできんの?」
朔も運動神経めっちゃいい。本人いわく『高等魔だから不可能はない』らしい。
サラッと何でもできちゃうあたり、我が弟の奏≪そう≫と同じ?なんかむかつく。
フツーとか、並なの私だけじゃん…。軽くへこむわ。
「当たり前だろ。惚れ直すなよ。」
「ないから。っつーか、隣のクラスにはバスケ部のホープがいるんだから、朔なんて霞んじゃうかもよー?」
「あー、泉原≪いずはら≫な。」
「絶対彼の方が活躍しちゃうって。朔、見つけられなかったらごめんよー。」
私たちの視線の先に、隣のクラスの泉原潤≪いずはらじゅん≫くんがいる。彼は1年生ながらにレギュラー争いに名を連ねる、バスケ部のホープ。来年は絶対エースだろなぁ。
しかもカッコイイからすっごい人気!180㎝近い長身に、今時貴重な黒髪。それを短めにしてツンツンさせてるあたりが爽やかさUP!ちょっとたれ気味の優しそうな眼もとは、バスケしてる時にはきりりと引き締まり、そのギャップもたまらないらしい。(ファンの子いわく。)
でも、特定の彼女はまだいないらしくて、女子の皆さんがこぞって絶賛アピール中なのが現状。普段の部活の時ですら、見物女子がわんさかいるらしい。
「バスケをしてる時なんて、輝いて見えるもんね。」
と、ニコニコしながら茉実が言った。
「茉実も泉原くん狙っとく?」
「えー?それはないなぁ。目の保養にするってくらいでちょうどいいわ。」
笑顔で即否定。
「そおね~。同感同感。」
授業が始まって、初めは男女別れてのバスケだったけど、後半からは男女混合で試合をしたりしていた。
私は早々に応援係。お邪魔虫になるもーん。みんなも私が球技苦手なのを知ってるから、敢えて呼ばれない。
でも、茉実はできる子だから、男子に混じっても結構活躍してる。
「むきゃ~~~!!茉実ぃ!!かっこいいぞお!惚れ直した!」
茉実がドリブルから持ち込んでシュートを決めた時、思わずクラスの女子と一緒に大声ではしゃいでしまった。茉実もピースなんかしてる。
あ、朔がこっち睨んでるぞ。…気づかないふりしとこう。
2組との試合は結構接戦だった。向こうはバスケ部ホープの泉原くんを擁してるけど、1組もなかなか運動神経いいのを選りすぐってたからね。泉原くんがディフェンスをかわすと黄色い声が上がり、朔がシュートを決めると黄色い声が上がり。どうもクラス関係ないぞって感じ。カッコイイ子が活躍すると、そのたびに黄色い声援が響くって感じだった。
あまりに盛り上がってるから、なんとなく一歩引いてしまう。
体育の授業を終えて、教室に戻って第一声。
「音々は全然応援してくれなかった。」
朔、怒ってます?
「いや~、ほらね?ほかの女子がめっちゃくちゃ応援してくれてたじゃない。その方が喜ぶかなぁって思ってね?あはっ。」
笑ってごまかそうとしたけど、万事休す。朔、超不機嫌。あ~もう、めんどくさぁ。
「はいはい、ごめんね?茉実があまりにかっこよかったから、そっちに目を奪われちゃったのよ。」
「全然言い訳にもならねえ。」
そしてこっそり耳打ちされた。
「帰ったらお仕置きだ。」
って、何よそれ!!!
おあつきあい、ありがとうございました!