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黒と白の翼

 空を飛ぶ夢は、まだ覚めていなかった。


 雀宮ちゅなは学校の帰り道、何度も空を見上げていた。


 青い空。

 白い雲。

 鳥たちの群れ。


(飛べたんだよね……)


 胸がふわっと軽くなる。


 でも同時に、不思議な気持ちもあった。


(わたしだけ……なのかな)


 あの力。

 あの翼。

 あの変身。


 誰にも話していない。


 言葉にしたら消えてしまいそうで。


 その時だった。


 空の色が、また濁った。


「……!」


 ちゅなが顔を上げる。


 高架橋の上空。


 灰色の歪み。


 格子の影。


 鳥の声がゆがむ。


 きぃ……きぃ……


「また……!」


 心臓が跳ねる。


 怖い。


 でも――


「行かなきゃ」


 ちゅなは走る。


 人気のない河川敷へ。


 空が開けた場所。


 風が通る場所。


 立ち止まり、胸に手を当てる。


「助けたい」


 想いを込める。


 光があふれる。


 羽が舞う。


「ちゅん・ちゅな・ちゅん!!」


 雀色の光が弾けた。


 空に舞い上がる。


 ***


 河川敷上空に、巨大な檻が浮かんでいた。


 中には――


 人影。


 子ども。


 座り込んでいる。


 周囲には鳥の影が絡みついている。


 中心の感情コアが脈打つ。


 檻が変形する。


 翼と嘴を持つ獣型。


 ケージビースト。


 灰色の咆哮。


 ぎしゃあああ!!


「……!」


 ちゅなが身構える。


 でも次の瞬間。


 黒い影が走った。


 空中を一直線に裂く影。


 ケージビーストの翼を掠める。


 ぎん!


「え!?」


 黒い翼の少年が空中に立っていた。


 細身の体。


 黒羽の翼。


 影の気配。


 鋭い目。


「下がれ」


 短い声。


「一人じゃ無理だ」


「……え?」


 さらに。


 白い光が広がる。


 柔らかな翼。


 穏やかな光。


 もう一人の少年が空に浮かんだ。


「大丈夫?」


 優しい声。


 白い翼の少年。


「……人……?」


 ちゅなが驚く。


 黒の少年がケージビーストを見据える。


「また出たな」


 白の少年が頷く。


「侵食が強い」


 ちゅなが目を丸くする。


「……二人も……飛べるの?」


 黒の少年は一瞬だけ視線を向ける。


「お前もか」


 白の少年は少し驚いたように微笑む。


「新しい翼だね」


 ちゅなの胸が高鳴る。


(わたしだけじゃない……!)


 その瞬間。


 ケージビーストが三人へ突進した。


 灰翼が振り下ろされる。


「来るぞ」


 黒の少年が消える。


 影のように高速移動。


 背後へ回り込む。


「クア・クロウ」


 黒い軌跡。


 斬撃。


 だが。


 格子装甲が弾く。


 ぎん!


「……硬い」


 白の少年が前へ出る。


 翼を広げる。


「クルル・ダヴ」


 白光の円が広がる。


 防御結界。


 衝撃を受け止める。


 どん!


 地面が揺れる。


 ちゅなは呆然と見る。


(すごい……)


 二人は慣れている。


 連携している。


 でも。


 ケージビーストはまだ崩れない。


 中心のコアが暗く脈打つ。


 黒の少年が舌打ちする。


「核が深い」


 白の少年が言う。


「浄化が必要だ」


 その言葉で、ちゅなの胸が反応する。


「……浄化」


 前へ出る。


「わたし、できるかも」


 黒の少年が眉を寄せる。


「お前が?」


 ちゅなが頷く。


「前に……助けた」


 白の少年が目を細める。


「共鳴型……」


 ケージビーストが再び咆哮。


 三人へ襲いかかる。


「クロ!」


「分かってる」


 黒翼が走る。


 高速で注意を引く。


 連続斬撃。


 白翼が守る。


 結界で進路を制限。


「今だ」


 道が開く。


 ちゅなの前に核が見える。


 黒色の結晶。


 中で震える感情。


 ちゅなが近づく。


 怖い。


 でも。


 檻の中の子どもを見る。


 膝を抱えている。


 動けない。


「……こわいよね」


 ちゅながそっと言う。


「でも」


 翼が光る。


 雀色の風。


「一人じゃないよ」


 光が広がる。


「わたしたちがいるよ」


 風が三人を包む。


 その瞬間。


 黒翼と白翼がわずかに共鳴した。


 空気が震える。


 リンクの芽。


「飛ぼう?」


 ちゅなが手を伸ばす。


「ちゅん・ちゅな・ちゅん!!」


 光が核を包む。


 黒色が割れる。


 ぱきん。


 結晶が砕ける。


 光があふれる。


 檻が崩れる。


 ケージビーストが光粒になる。


 中の子どもが解放される。


 ゆっくり地面へ落ちる。


 白の少年が受け止める。


「大丈夫だよ」


 子どもが涙を流す。


 灰色が消える。


 空が青に戻る。


 風が通る。


 三人が空に並ぶ。


 黒。


 白。


 茶。


 ちゅなが二人を見る。


「……ありがとう」


 黒の少年は視線を逸らす。


「礼はいらない」


 白の少年が微笑む。


「君、名前は?」


「ちゅな!」


 少し誇らしげに言う。


「雀宮ちゅな!」


 白の少年が頷く。


「僕はハク」


 黒の少年が短く言う。


「クロ」


 ちゅなの顔がぱっと明るくなる。


「クロ!ハク!」


 空に三つの翼が並ぶ。


 ぎこちない距離。


 でも確かな共闘。


 それは――


 チームの始まりだった。

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