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32 神堕

病院の前に到着した。

ソフィーの足のこともあり、到着にいつもより時間がかかってしまった。


「ソフィー、お疲れ様。足は大丈夫?」

「はぁ…はぁ…結構、疲れちゃいました。」

「そうだよね…無理させて本当にごめんね。」

「へっちゃらですよ!ささ、病院に入りましょ!」

その言葉を聞き、二人で病院に入っていく。


廊下を歩くだけで、額から嫌な汗がにじみ出てくる。

病室の前に到着すると、息が上がり、身体が震えてくる。


「イネスさん、大丈夫ですか?」

「ふぅ…ふぅ……うん。大丈夫」


ソフィーが僕に気を遣う。さっきと立場が逆になってしまった。

自分に言い聞かせるためにも、大丈夫と言うしかなかった。


震える手で、病室のドアを開ける。

そこには、僕の想像とは違う、けれど渇望した光景があった。


母さんはパイプ椅子に座り、エマちゃんの視界を隠すように両手で顔を包んでいた。

そして母さんの視線は、ベッドの方に注がれていた。


「…あっ」


主治医が、ベッドに身体を寄せている。

そして、父さんが上半身を起こしていた。


「父…さん…」


父さんが、起きている。

顔には治りきっていない大きな傷があるが、間違いなく父さんだ。


「ロバートさん。今、私の持っているライトの光、少しでも分かりますか?」

主治医が父さんに問う。やっぱり、父さん、意識が戻ったんだ…。


「イネスさんっ」

ソフィーの嬉しさを隠しきれない囁き声で、ようやく現実に引き戻される。

「お父さん、起きてます!意識戻ってますよ!」


「うん…うんっ。そう…だね…っ」

胸の奥がふっと軽くなる。

父さんが生きていて、目を開けている。それだけで、昨日までの地獄が消えていくような気がした。


だが父さんは、主治医の問いに対して、ゆっくりと首を振った。

「…いいえ。何も、分かりません」


父さんの解答を聞き、顔に包帯を巻きなおす医師。

それを受けながら、父さんは続けて言う。

「あの、先生…それより、家族は…ここにいるんでしょうか?先生が来てから、誰の声も聞こえなくて……みんな、無事なんでしょうか?」


自分の目のことより、家族の安否。

その声があまりに穏やかで、胸の奥が締め付けられた。


包帯を巻き終え、母さんがエマちゃんを解放する。

「おじいちゃん!」

エマちゃんが大声を出しながら走り寄り、抱き着く。

「おじいちゃん!」


「あなたっ…あなたぁ!」

母さんも立ち上がり、父さんに縋りつく。


「ああ…よかった…。」

父さんの腕が、二人を包む。

その光景を、僕は少し離れた場所で見ていた。

胸が高鳴る。心が軽い。良かった。よかった。

そんな幸福な感情に支配され、足が動かなかった。


「ほら、イネスさんも」

ソフィーが、そっと背中を押す。


「…父さん。」

その声に、父さんが反応する。


「イネス…?その声はイネスか?無事なんだな!?お前は怪我はないのか!?」

「父さん…」


喉が詰まって、言葉にならない。

それでも、よかった、よかった、よかった、という感情だけが溢れてくる。


一歩踏み出そうとした、そのとき。


「……う、あ……」

低く、擦れた声が隣のベッドから漏れた。


「兄さん!?」


瞼が震え、ゆっくりと開く。

焦点の合わない視線が天井を捉え、やがて周囲を彷徨う。


「ここ、どこだ……あれ、イネスじゃん…。」

声は枯れていた。

兄さんは、状況を必死に理解しようとしている。


視線が、自分の身体へ向く。

「…なあ。俺の足……どうなってる?布団が邪魔で見えないけど……変な方向に曲がってないか?」


一瞬、間が空く。

「なんか…変だ。触ってるはずなのに…何も感じないんだけど…。」


兄さんが…兄さんも…起きたんだ…っ!

よかった、うれしい、よかった、うれしいっ!


「…イネス…さん?」

ソフィーが少し心配しているような声色で僕の名前を呼ぶ。

何でそんな声してるの?嬉しいことがいっぱい起こってるのに!!


「お父さん!」

「ジェームズ!」

母さんとエマちゃんが、今度は兄さんに抱き着く。


「なあ…」

兄さんの声が、少しずつ震え始める。

「力を入れても……動かないんだ。まるで……どこにも繋がってないみたいで…。」


主治医が入り、淡々と確認を進める。

やがて、無機質な宣告が下る。


下半身不随。


兄さんの顔から、血の気が引いていく。

声を失い、やがて嗚咽に変わる。


「…嘘だろ…頼む……夢だって言ってくれ……」

絶望する兄さんに母さんとエマちゃんが抱き着き、彼の涙を受け止めている。


けれど、僕の胸を支配していたのは、それらとは真逆の感情だった。


嬉しい!起きてくれた!これで皆一緒に居られるよ!良かった!

下半身不随?そうだよ!昨日言われてたじゃん!分かってたことだから大丈夫だよ!!

父さんは生きている、兄さんも生きている、それ以上何を望むの!?もちろんマリアさんも目覚めてほしいけど、今は、今起きた幸せを噛みしめようよ!それだけでいいじゃん!!


「イネスさん…大丈夫ですか?」

ソフィーが、僕の顔を覗き込んでいた。声だけでなく、瞳にも不安が浮かんでいる。

…なんで?


「もちろん!本当に、本当に安心してるんだ!ありがとうねソフィー!!」

「そ…そうですか…。でも…」


でもの後が続いてこない。

でも、なんだろう?父さんと兄さんが絶望してるのにこんな嬉しそうにしておかしいと思ってるのかな?もっと二人に寄り添った方がいいって思ってるのかな?でも、嬉しいに決まってるじゃん!起きたんだよ!?


…あれ?僕がなんか変なのかな?

なんかよく分からないや。とにかく昨日おとといの絶望から、今ようやく救出された気分だ!良かった、よかった!!

ん?やっぱりおかしいか?あまりに安堵に振り切れて、どこか壊れちゃったのかなぁ。でもいいや!僕が壊れても家族が平気ならそれでいいや!!…あれ?みんな平気なのかな?わかんないけど、皆が生きていてくれるならそれでいいや!


主治医が去り、家族だけになる。

そこで母さんが、マリアさんのことを話す。


兄さんは、声を上げて泣き崩れた。

エマちゃんと母さんも、泣きながら彼を抱きしめる。


でも、僕は動けない。

うれしい。

うれしい。

うれしい。


「……」

隣のソフィーが引き続き不安そうに僕の顔を見る。

そんな顔してないで、笑おうよ!


それから家族が今後の話をし始めた。

生活のこと。

仕事のこと。

家のこと。


不安、不安、不安。

暗い会話が病室を満たしていく。


なんで!?この三日間で今が一番幸せのはずじゃん!!みんなもっと明るく行こうよ!

…ちょっと我慢できなくなってきたな。


「大丈夫だよ!」

気がつくと、口が勝手に動いていた。

「僕が働く。全部、僕が頑張るから!」


家族みんなが、きょとんとしたような顔で僕を見る。


「あ、ああ。お前にはかなり迷惑をかけることになると思う。本当に、申し訳ない…。」

「謝らないでよ父さん!任せて!大丈夫!余裕だよ!」


「すまん…俺もこれまでの仕事できなくなると思う。俺にできる仕事を探してる間、大学が終わってからでも、エマを連れてマリアを見に来てやってくれないか…?」

「何言ってんの兄さん!大学なんてやめて働くに決まってるじゃん!仕事終わりに毎日エマちゃん連れてマリアさんのお見舞いに来るよ!」


「イネス…あなた大丈夫?」

「何が?大丈夫に決まってんじゃん母さん!大丈夫!僕がいっぱい働くから!皆が無理しないでいいよう、頑張り続けるから!」



家族が、沈黙した。

彼らの顔がきょとんから、不安そうな『懸念』へと変わっていく。


何?なんで?みんな喜ぼうよ。父さんと兄さんが起きたんだよ?なんでそんな不安そうな目で僕を見るんだよ。

みんな生きてたんじゃん。これ以上、何が不安なの?


そのとき、別のベッドから、かすかな声がした。


「…ん……」


「あっ…マリア!」

兄さんがいち早く気付き、駆け寄ろうとするも、ベッドに足をついた瞬間、立ち上がることができずに床に転げ落ちてしまう。


母さんが兄さんに駆け寄り、肩を貸して立ち上がらせる。

エマちゃんは「お母さん!」と叫びながらマリアさんのベッドに駆け寄る。


「……なに…これ……怖い……なに…?やだ…」

マリアさんが恐怖する声が聞こえる。

やはり彼女は動けないようだった。


ああ、あああ、ああああああ!


奇跡!奇跡が起きた!!3人全員が、同じ日に起きたんだ!

マリアさん不安だよね!でも大丈夫!安心して!!僕が頑張るから!マリアさんがエマちゃんの成長を見続けられるよう、働き続けるから!!


胸の中を支配していた恐怖も、焦燥も、絶望も、最後の一片さえ消え去っていく。


うれしい。

うれしい。

うれしい。


誰も、いなくならなかった。

少し形が変わってしまったけど、それでいい。それで十分だ。


そして僕の思考は、前向きな考え以外を、受け付けなくなっていた。



大丈夫僕が頑張るから僕が働く僕が働き続ける働きながら介護も全部やる僕がみんなを守る守り続けるエマちゃんを育てるエマちゃんを大学に行かせるソフィーも幸せにするソフィーと結婚しても大丈夫なくらいお金を稼ぐ結婚しても皆が幸せになれるくらい頑張って働くソフィーとの間に子供ができても幸せにする不自由ない生活を送らせる一生介護でも構わない僕が頑張る朝も昼も夜も働いて皆のためにお金を稼ぐ働いて介護してソフィーとの時間も作る大丈夫僕がみんなを幸せにするみんなのために頑張る僕がみんなの不安をなくす僕がみんなの希望になる僕がみんなの未来を照らし続ける僕が僕がぼくがぼくが…


「僕が、みんなの光になる」



バチンッ!



そう呟いた瞬間、頭の中で鎖を引きちぎったような大きな音がした。


…え?何今の音。聞いたことない変な音だったな。

周りを見渡しても、誰も反応を示していない。僕だけが聞こえたみたいだった。


「イネスさん…?大丈夫ですか?光って…どういう意味ですか?」

ずっと僕の隣に立ち続けるソフィーだけが僕の言葉に反応した。

一歩後ずさりながら、僕に質問してくる。あまりにも異様な僕に恐怖を覚えてるみたいだ。


その音を聞いた直後から、胸の中から暖かくて心地よい灯りが湧き続ける感覚が身を包んでいる。

あれ…?なにこれ……。これって…魔力…?


無限に湧き続ける暖かい魔力が、僕の頭を冷静にしていく。


……あぁ。

これまでの僕、やっぱり限界だったんだな。ストレスでおかしくなってたんだ。

不安と安堵、焦燥と安寧、恐怖と安穏、絶望と希望。全部の感情が押し寄せてきてキャパオーバーになってたみたいだ。

みんな、不安がらせてごめんね。そりゃこの状況でそんな変なテンションになってるやつがいたら怖いよね。


……それより、なんで魔力が増えてるんだろう。魔力って増えるものじゃないよね?

なんで…なんで…あっ。


そこで、唯一魔力が増えると言われている現象のことを思い出し、それが原因だと確信した。



神堕(かみおち)、したんだ。



父さん以外の家族全員がマリアさんを囲んでいる。そのため、僕の異変に気付けるのはソフィーしかいなかった。


「イネスさん、やっぱりちょっと横になりましょう?それか、二人きりになりますか?」

「大丈夫だよ。ありがとうソフィー。もう、大丈夫だから。」


そう言い、彼女を優しく抱き寄せる。

「もう、本当に大丈夫。何もかも、うまくいくはずだ。いや、いかせてみせる。」

「イネス…さん?」


冷静な僕から、さっきまで異様な僕が言いそうな言葉を聞いたことで困惑してしまっているようだ。

頭はとても冷静だ。むしろ、今までの人生で一番冴えている。


大丈夫。これは間違いなく神堕だ。教科書に載っているように、乾いた炸裂音が頭の中に響き、その直後に魔力が増幅した。しかも、自分でも怖くなるくらいの魔力だ。しっかり測らないと分からないけど、間違いなく3万は超えているだろう。軍入隊の足切りラインは超えているはずだ。しかも神堕したということは、魔力上昇以外にも超常的能力が備わっているはず。最初にそれを確かめよう。そして、軍に行こう。特別待遇で迎えられるはずだ。給与面は交渉し、気に入らなかったら他国に行くと脅迫すれば必ず僕の希望以上の条件を貰えるはずだ。もしかしたら5億…いや、最初から15億レンを交渉のテーブルに載せよう。そして全員治療する。大丈夫だ。うまくいく。いかせてみせる。…神堕したということは今は僕だけに留めておこう。これが世に知られたら恐らくいろいろと面倒なことになる。あと軍も秘密にしたいと思うかもしれない。よし、すぐにでも自分の能力を把握しないと。


一瞬で、これからするべきことが頭の中で組み立てられていく。

そうとなれば、善は急げだ。


「みんなごめんね。さっきはちょっと取り乱してた。冷静になりたいから、今日のところは帰るよ。彼女のことは、また次回会ったときに紹介するから。母さん、申し訳ないけど、可能なら今日も病院に泊まってほしいな。今日までで大丈夫だから。それじゃあソフィー、行こうか。」

「は…え…?あの……うわぁ!」


何が起こっているのか理解しようとするソフィーを、電気魔法で強化した身体で無理やり抱き上げる。病室の扉を開けようと手を伸ばしかけ、手を止める。


そうだな…みんなとっても不安だろうから、少しでも気持ちを楽にさせてあげたいな…。


そう思い、最後にもう一度、笑顔を作りながら家族に振り返り、ゆっくり口を開いた。



「大丈夫。僕が、みんなを守るから。」



それだけを言い残し、病室を後にした。ソフィーは「すすすすみません!失礼しました!」とかなり焦っていたけど、しょうがない。ごめんねソフィー。


「ちょっ、イネスさん!?何が起こってるんですか!?ご家族にすごく失礼なことしちゃったじゃないですか!」

「大丈夫。あとで僕が謝っておくから。」

「そういう問題じゃ…というか、本当に大丈夫ですか?病室でのイネスさん、正直かなり様子が変でしたけど…。」

「うん。今はすごく冷静。本当だから安心して。」


病院内で彼女を抱きかかえたまま、ずんずん歩く。周りの視線を感じるが、まあ彼女もけが人だ。大目に見てもらおう。


そのまま病院を出て、帰路を走り始める。

腕だけじゃなく身体全体を強化し、追加で足裏に電気フィールドを作り、かなりの速度で走り始める。これまで電気フィールドなんて作れなかったし、身体強化するにしても一部の筋肉しか強化できなかった。やはり魔力は相当増えている。


うん。間違いなく神堕だ。


「きゃっ!え!?なんですか!?どうしたんですか!?」

「ソフィーと二人きりになりたくて、今頑張っちゃってます。」

一応、嘘はついてない。


「でもイネスさん、魔力8ですよね?こんなことできるんですか?」

「すごいでしょ。実は毎日魔力行使の練習してたんだ。」

「でも8じゃこんな…はぁ、もう何が何だか…」

「8でも、僕みたいにうまく使えば化けるんですよ。」

「…もう好きにしてください。イネスさんが元気になったようで私も安心しましたし。」

「うん。そこは本当に安心して。もう昨日おとといみたいな情けない姿は見れないからね!」

「情けなくなんか…はぁ、もういいです。それなら、10分で進めるだけ進んでくださいね!歩くの辛いんで!」

「了解っ」


そしてさらにスピードを上げた。

ソフィーが怖がらないよう抑えているが、出そうと思えばまだ全然スピードを上げられる。全力を出すのは一人になってからだな。




「……着いちゃった…。」

「…着いちゃいました…ね…。」


徒歩で1時間かかる道なのに、10分で家まで着いてしまった。

マジか…なんというか……すごいな…。


「…ソフィーが歩かないでいいように超がんばりました!」

「それだけでこんな…本当に魔力8です?」

「魔力8です!証明書見せようか?」

「はぁ…大丈夫です。なんか疲れちゃいました…。」

「本当にいろいろ、ごめんね。」

「……身体拭いてくれるなら、許します。」

「まかせて!」


ソフィーを抱えたまま家に入る。

そのままリビングのベッドの上に座らせ、昨日机に置いたウエットティッシュを手に取る。


「そういえば僕のせいで、結局昨日の夜も身体拭けなかったもんね。」

「そうですよ!もう二日間も身体拭けてないのに、昨日あんなことまでさせて!あ、先輩もしかして匂いフェチですか!?」


僕が本当に回復したと分かって、遠慮のない冗談を言ってきてくれる。

ありがたさと嬉しさと気恥ずかしさをいっぺんに感じてしまう。

…反撃しちゃお。


「すぅーはぁー。…うん。そうみたい。今のソフィーの匂いすごい好き。」

「ちょ!やめ!ほんとにやめて!!」


ウエットティッシュの袋をベッドの上に置き、ソフィーを抱きしめながら首筋の匂いを存分に嗅ぐ。

年頃の女の子からしたらめちゃくちゃ嫌なことだろうな。顔を赤らめながら本気で嫌がってきた。


「なんでさぁ?ソフィーが言ってきたんじゃん。」

「やだっ!もう自分で拭く!」

「ははは。ごめんって。もうしないから、僕に拭かせて?」


ソフィーはしぶしぶ服を脱ぎ始める。

前を隠しながら背中を見せてくる。その背中を優しくウエットティッシュで拭き始めると、ソフィーが真剣な声色で話しかけてきた。


「…イネスさん、もう本当に大丈夫なんですか?」

「うん。心配かけたね。」

「はい。本当に心配でした。…ちなみに、なんで大丈夫になったんですか?」

「…僕にできることが、明確に分かったからかな。」

「イネスさんにできることって?」

「みんなを、幸せにすること。もちろん、ソフィーもだからね?」

「っ…あ…ありがとうございます…。でも、どうやるんですか?」

「そうだね…多分大学はやめることになるかな。」

「いっ、いや!やめないで!」

「ごめんね。でも、それは免れないと思う。」


間違いなく、免れないだろう。

仮に軍以外でこの力を活用できるとしても、それは絶対大学ではない。どこかで働く必要が出てくる。


「ごめんねソフィー。また今夜、いろいろ話そう?これから行かないといけない場所があるんだ。夜には帰ってくるから、そしたらお話しよ?」

「わ、私も一緒に行って良いですか?」

「ごめんね。一人で行かないといけないんだ。」

「…いやです。」

「ソフィー…」

「嫌です!私も一緒に行きます!イネスさんと一緒が良いです!」

「わがまま言って本当にごめん。帰ってきたら、何でも言うこと聞くから。だから今回は、僕のわがままを聞いてほしいな。」

「……分かり…ました。」


良かった。本当にありがとね、ソフィー。

二人とも無言のまま、僕はソフィーの身体を拭き続けた。

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