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02 親友からのアドバイス

「……クッソ疲れた…」

「おつかれー」


22時までぶっ続けで肉体労働を行った帰り、偶然同じ電車に乗れたネイトに愚痴を漏らす。

「今日は何の作業だったん?」

「民家の基礎工事」

「あーなかなかきついねー」

「掘削作業が地獄すぎんよ…」


民家の掘削作業では、300平方メートルほどの広さの敷地を、縦横1m弱のグルガル族用シャベルで1mの深さまで掘る必要がある。土が重すぎんよ…




「ネイトは何の仕事だったん?」

「俺は3階建ての民家で柱立てと梁かけしてきたよ」

「…お疲れ様です。」

「まージンよりは丈夫な身体してるし余裕よー」


さっきまで重さ数百kgの梁や柱を数百本も地上10mまで運び続けてきたのか…その体力が羨ましい。というか、自分の体力が忌まわしい。


「明日は何の仕事になるかなー」

「頼むから楽な仕事で休ませてくれ…」

「まー俺らの仕事に楽なのはないと思うけどねー」

ぐっ…おっしゃる通り…


僕らの職場は日によって違う。指定された州に電車で行き、電車を降りてから紙に書かれた数字に従い駅を進み、駅を出る前に電光掲示板でどこで働くことになるかが分かる。

これは人間が可能な限り僕らとの接触を避けるためで、指示する側が僕らに合わないようにするためらしい。


竣工した後、次にどこに誰が行くか、という指示を僕らに出すのも嫌みたいで、毎日その日に発行する番号で管理しているということだ。

まあ僕らからしても、工事の進み具合や次に何をするべきかなんて、現場に着いて一目でわかるから不便は感じたことはないけど。

ちなみにどこの州に行くかは、帰りの電車に乗る前に同じように紙で決まる。僕は明日もアンクーバーだ。




「そーいえばさー」

「なによ」

「ジンはアリエルと最近どうなの」


始まった…僕らは毎日、一日の大半を仕事に費やして、それ以外の時間は移動してるか寝てるかのどちらかだから、話題が尽きがちだ。

だからこういった色恋の話はどうしても話題に上がってくる。僕がそういうのよく分からないから、これまでこういう話は少なかったのに、いきなりどうしたんだろう。


「…どうとは?」

一応しらを切ってみる。

「アリエルはジンに気があると思うなー」

しらを切っていることを分かり切りながら、ネイトが返答してくる。


「こんな僕に?低身長でひょろひょろで瞳の色が変ですぐ怪我するくせに治りが遅いのに??」

かなり自虐を入れて返してみる。というより、心の底からそう思っていることだ。僕は僕があんまり好きじゃない。


「最後のはともかく、そこはジンの弱みじゃなくて魅力だと思うよ。俺の周りみんなそう思ってる。ジンの一番ダメなところは自己評価が低すぎるところだねー。正直気持ち悪いレベル。」

ぐぐっ…。またもおっしゃる通り。


正直、自己評価となると、僕は皆と比べて全てにおいて劣っていると思ってる。っと、こういうところだよな…でも事実だし…。


ネイトはほわほわしてそうでかなり周りを見てるし、しっかり物事を考えてる男だ。

だから、恐らくその『気持ち悪い』はネイトだけじゃなく他のみんなも感じてることであり、僕の直さないといけないことの一つなのだろう。

そしてそんな信頼してるネイトが言うんだから、アリエルのことも信憑性が増してしまう訳で…。


「そうだとしても僕は恋愛とかよくわかんないんだよなー。ネイトは彼女とどうなん?」

「彼女できると超いいよ!毎日が楽しくなる。仕事中も早く村に帰ってただいまのキスしたいなって気持ちで、捗りまくるよ!」

彼女の話題を振ると、今日一番のテンションで返事をしてくる。14時間肉体労働をしたとは思えないほど元気だ。


「いいねいいねぇ!ところで実際どこまで進ん「僕のことはいいから。今はジンの話だよ。」

こいつ…切り替えが早い…このまま到着までのろけてもらおうと思ったのに。


「ジンはさ、自己肯定感を高めたほうがいいと思うんだ。ジンの家族はみんな素晴らしい人たちばかりだけど、家族以外の人からもしっかり評価してもらわないといけないと思うんだよ。俺やダビデはちゃんと言葉にしてるけど、ジンはそれをお世辞ととらえて真に受けてくれないじゃん?」

「確かに二人や家族は僕の肯定してくれてるけど、その何十倍もダメだしと否定の言葉を聞き続けてるしね…」


仕事を思い出して少し落ち込む。今日も今日とて俺に対する罵倒の嵐だった。

「それは誰が言ってるの?」

「人間たち。現場監督とか道行く人とか」

「そんなの、ジンのこと何も分かってないやつらの悪口じゃん。何で俺たちより、その日あっただけの人間のことを信じるの?正直、めちゃくちゃ腹立たしいんだけど。俺らより人間のほうが信用できるの?」

グサッときた。


「でも僕が仕事が出来ないのは確か「ジンが村の中で一番力が弱くて体力がないことは、俺らが誰より知ってるよ。小さいころから一緒だったんだから舐めないで」


そりゃあ、そうだ。てか、色恋の話からどこに向かってるんだこれ…。

「俺もダビデもジンの家族も、そういうこと全部知りながら、ジンの自己評価が低すぎるって言ってるの。だから、彼女でも作って、こんな自分でも女の子に好かれてるんだってことを実感すれば、自己肯定感も高まるし毎日ハッピーになれるしで全部いいほうに転ぶと思うって言いたかったの。」

あ、色恋だ。


「とは言っても、こんなじ…」

『こんな自分』と言おうとして、ジトーッとしたネイトからの視線に気づく。

さっきネイトも言ったじゃん…。と思ったが、自分が言うのと僕が言うのだとネイトの感じ方に差があるようだ。

「んんッ。僕自身恋愛ってのがよくわかってなくてさ。アリエルはかわいいし良いヤツだし家族ぐるみで仲もいいけど、彼氏彼女になって、キスとかそれ以上のことをするってあんまりピンと来ないんだよね。そんな気持ちで付き合うのって失礼じゃない?第一、向こうが僕のこと好きってのも不確かなわけだし。」

咳ばらいをしつつ、心から思っていることを口にしてみる。


「失礼なんかじゃないよー。俺も最初はそうだったし。」

「というと?」


「今じゃ両想いのカップルだけど、最初は全然だったよー。向こうが俺のこと全然恋愛的に好きじゃなかったんだ。でも、ゴリ押しでお試しで付き合ったんだよ。それでいろいろなことを一緒にして、次第に向こうも俺のこと好きになってくれて、って感じ。最初にキスした時は感動したなー。」

やっぱり彼女の話になるとなかなか饒舌になるなコイツ。まあ嫌な気は全くしないけど。


「だから、今好きじゃなくても全然大丈夫だよ。一回付き合って、少しずつアリエルのことを好きになれば失礼ってことも全然ないし、むしろアリエルのほうが好きなやつを攻略してる感があって楽しむんじゃないかな。」

「なんじゃそりゃ。」

クスっと笑いながら軽くツッコミを入れてみる。恋愛なんてそんなもんなのかなー。


「まあそれはそうとして、アリエルが僕のことを好きなのはにわかには信じれないなぁ。接点といったら家が隣同士で、幼いころから近くにいたってことくらいだし。なんなら男の僕のほうが守られる立場だったからなぁ」

「それは俺を信じて良いよ。」

「信じ…うぅん…信じれない…」

「幼いことから一緒だったってことは、それだけジンの魅力を見続けてきたってことだから。自己評価の低すぎるジンに言っても響かないと思うけど。」

その通り。コイツ俺のことなんでも見透かすなぁ。


「まー、今回は俺のことを信じて、次の休みの日に二人で出かけてみたらどう?」

次の休みっていつだっけ…月1日の休日も把握できないくらい毎日がいっぱいいっぱいだ。


「んーーー…ネイトがそこまで言うなら出かけてみようかな…」

親友の言うことだし、今回は言う通りにしてみよう。二人で遊びに行くくらいで、僕もアリエルも自尊心が傷つくこともないだろうし。普通に遊んで終わったならそれでいいしね。


「そうしよそうしよ!俺から言っておこうか?」

「いや、次に会ったときに僕のほうから誘うよ。これで断られたら申し訳ないけどネイトのこと殴らせてもらうね。」

「ジンに殴られても一切ダメージはいらないから!好きなだけ殴って!」

何なんだコイツ…テンション高いし一言多いし自信満々だし…

「…全力だからな?」


にしてもデートかぁ。デートと思いながら女の子と二人で出かけるのは人生初だ。服装とかどこ行くかとかいろいろ考えないとだな…。まあ服なんて二着しかないけど。




話題が終わったタイミングで駅に到着し、肘でツンとあいさつをしてその日は帰路についた。

ひとまず、今夜は何時間寝れるだろうか…。

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