ひと匙
光は赤信号を渡れずに
ソーダみたいな空気が肺を満たしてく
"悲しみの名前は?"
時計に訊ねた
答えはない
フロストで曇った窓の向こう
音もなく降る七色の泡
見えない手で撫でられたみたいに
心が静か
この街はグラデーションの檻
誰もが透明の仮面で笑う
でも名前のない捨て猫だけは
ひとつぶのノイズみたい
予定調和を裂く
言葉にならない夜のすき間に
蒼白い夢のピクセルがひかる
かたちのない音符が舞う
電波塔のてっぺん
誰かの寂しさが光る
星屑をひと匙すくって
胸に刺した