長すぎる二分
俺は時計を見つめた。
「……まだ二分!?」
エルゴードの襲撃が始まってから、すでにずいぶん経った気がする。
セリアがバリアを張り、必死に耐え、グリが応援の言葉を繰り返す。
状況はめまぐるしく動いている。
なのに——たったの二分しか経っていなかった。
(長すぎる……!)
画面の中では、エルゴードがさらに強力な魔法を繰り出そうとしている。
セリアは顔を歪めながらも、バリアに魔力を注ぎ続ける。
しかし、その魔力は次第に弱まりつつあった。
普通の人間である俺の目から見ても、それは明らかだった。
(まずい、もうもたない……!)
それでも、俺にできることはない。
ただ、グリを通じて応援することしか——
「ガンバレ! ガンバレ!」
グリが必死に叫ぶ。
セリアの歯がぎりっと音を立てる。
「……っ!!」
次の瞬間——
バリアが砕けた。
透明だった防御の壁が粉々に砕け散り、エルゴードの攻撃が解き放たれる。
「ハハハハ!! ついに貴様の力も尽きたか!!!」
エルゴードが勝ち誇ったように笑う。
村の人々が悲鳴を上げ、セリアは後ずさる。
(ダメだ、ここで終わるのか!?)
俺が絶望しそうになった、その瞬間——。
——シュンッ!!
何かが風を切る音がした。
次の瞬間、エルゴードの首が吹き飛んだ。
「……え?」
俺も、セリアも、村人たちも、エルゴード自身も何が起こったのか分からなかった。
エルゴードの体がゆっくりと崩れ、落ちた頭部が転がる。
その背後に、黒いマントをなびかせた人物が立っていた。
「遅くなったな。」
「……フィオナ!!」
セリアが驚きの声を上げる。
フィオナが、血塗れの剣を携えながら立っていた。
「貴様……!」
転がったエルゴードの頭部が、かすかに言葉を発する。
だが——その断面から、青白く光る核が覗いていた。
「待て……!」
エルゴードが何かを言いかけた瞬間——
フィオナの剣が閃く。
——ズバァッ!!
核が真っ二つに斬り裂かれた。
「が……あ……」
断末魔の声を上げる間もなく、エルゴードの体は黒い霧となって消えていった。
完全なる、消滅。
セリアは地面に座り込み、息を切らした。
「……終わった……?」
フィオナは剣を振り払い、冷静な声で答えた。
「……ああ。今度こそ、終わりだ。」




