戦う兵士たち
黒樹のエルゴードが杖をゆっくりと振るうと、闇の波動が森を包み込んだ。
「……さて、神獣とその召喚士よ。余興はここまでだ。」
彼の冷たい声が響く。
次の瞬間——。
「ぐあっ……!」
一人の兵士が、突如足元から絡みついた黒い蔦に締め上げられた。
「なっ……!?」
セリアが驚く間もなく、蔦は一気に締め付け、
バキッ
鈍い音が響いた。
「……!?」
兵士の体がぐったりと力を失い、そのまま地面に崩れ落ちる。
「な……嘘でしょ……?」
セリアの喉が詰まる。
(魔王幹部の力……これが……!?)
恐怖で足がすくみそうになる。
「次は貴様だ。」
エルゴードが次の標的へと目を向ける。
残るもう一人の兵士。
彼に向かって、無数の黒い棘が宙に浮かび、鋭く飛びかかる。
「チッ……!」
兵士は素早く剣を振り、飛んでくる棘を次々と叩き落とした。
エルゴードの目がわずかに細められる。
「ほう……貴様は少しは楽しませてくれそうだな。」
「……こっちも、なめられたもんだ。」
兵士もまた、静かに構えを取り、剣を掲げる。
互角の戦いが始まった。
エルゴードが闇の魔法を繰り出すたび、兵士はそれを剣で弾き、巧みに回避していく。
「ふむ、ただの護衛ではないようだな……。」
エルゴードの口元がわずかに歪む。
兵士の動きは鋭く、まるで熟練の戦士のようだ。
「くっ……!」
兵士が一歩踏み込んだ瞬間、エルゴードが杖を大きく振る。
「影槍——!」
闇の槍が突如として生まれ、兵士の頭を狙った。
「っ……!」
槍がかすめるように兵士の兜を弾き飛ばす。
カラン、カラン……!
地面に転がった兜。
その下から現れたのは——。
「……!」
傷のある女性の顔だった。
セリアは目を見開いた。
(この兵士……女だったの!?)
エルゴードも一瞬、興味を抱いたように目を細める。
「ほう……これは面白い。」
戦場の空気が、一瞬変わった。




