玉座は火気厳禁
リューゲン王国の城内。
玉座の間には煌びやかな装飾が施され、赤い絨毯が王の座まで真っ直ぐに伸びている。
その中央に立つのは、リューゲン王 。
威厳ある姿ながらも、その顔には優しげな笑みが浮かんでいた。
「いやぁ、ようこそ! 遠路はるばるご苦労であったな。」
セリアは緊張しつつも、しっかりと膝をつく。
「お招きいただき、光栄です。」
「うむうむ。わしはずっと、魔王討伐へ向かう勇敢な神獣と召喚士に会ってみたかったのだ!」
リューゲン王は満面の笑みでセリアとグリを見つめた。
「ゴハン!」
しかし、肝心の神獣(?)は、羽をバタバタさせながら落ち着きなく動き回っていた。
セリアは思わずため息をつく。
(ちょっと、落ち着いてよグリ……!)
明らかに様子がおかしい。
(さっきまで普通だったのに、どうしてこんなに落ち着きがないの?)
まるで、何かに気を取られているような——。
グリはそわそわと羽を広げ、玉座の間を飛び回り始める。
「お、おい!? 神獣様が……!」
「なんと気高き飛翔……!」
兵士や貴族たちは勝手に感動しているが、セリアは焦っていた。
(……もう、いい加減にして!)
「グリ! ちょっと静かにして!」
「シズカニシテ!」
言うことを聞くどころか、グリはさらに羽をバタつかせる。
セリアの額に青筋が浮かぶ。
「……もう! 動物は火が苦手でしょ! ちょっと驚かせてやるんだから!」
セリアは杖を振り、小さな火球を放つ。
「ファイアフレア!」
軽く驚かせる程度に調整したはずだった。
しかし——。
ボンッ!!
「——っっ!!」
直撃したのは、王の頭部だった。
一瞬の静寂。
「う、うわあああああ!!?」
燃え上がるリューゲン王の髪。
「陛下!!」
家臣たちが一斉に駆け寄り、慌てて火を消す。
バシバシッ! バシバシッ!
あっという間に火は消えた。
しかし——。
燃え尽きた髪。
王の頭頂部は、見事なまでにツルツルになっていた。
城内の全員が、絶句する。
「……」
「……」
「ゴハン!」
グリだけが、何事もなかったかのように元気に鳴く。
「おまえええええええ!!!」
セリアの叫びが、王城に響き渡った——。




