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離席します

 馬車はなんとかオークの追撃を振り切り、無事に次の国へとたどり着いた。

 その国の名は 「リューゲン王国」 。

 魔王討伐の旅の中継地点として利用されることが多く、比較的安全な城下町を抱える国だ。

「やっと着いた……」

 セリアは疲れ果てたように馬車を降り、足を伸ばした。

「ゴハン!」

 グリが元気よく羽をバタつかせる。

「はいはい、ご飯ね……その前に宿を探さないと……」

 しばらく馬車で揺られ続けたせいか、体が少しだるい。

(今日くらい、のんびり過ごしたいな……)

 そんなことを考えながら、城下町を歩き始めたその時だった。

「お待ちください!」

 突然、甲冑をまとった兵士たちに声をかけられた。

 セリアは反射的に身構える。

「……な、何?」

 兵士たちは鋭い視線を向けながら、セリアの肩に乗るグリへと視線を移した。

「その鳥……いえ、神獣ですね? 噂はここまで届いています。」

「噂?」

「はい。神獣を連れた召喚士が現れたら、国王陛下に案内せよとのお達しがあります。」

「え、ちょ、待って、なんで?」

 セリアは混乱する。

(どうしてこんな短期間でそんな話が広まってるの!?)

 しかし、兵士たちは真剣な表情で続けた。

「何かをお伝えするためか、あるいは陛下のご意思かは分かりません。しかし、国王陛下があなた方をお待ちです。」

「ゴハン!」

「……いや、違うから!!」

 のんびり休むどころか、セリアはまたもや厄介ごとに巻き込まれる予感がしてならなかった——。


 ぐぅぅぅ……。

 静かな部屋に、不快な音が響く。

「……腹減った。」

 俺はモニター越しにグリとセリアを見つめながら、苦い顔をした。

 ずっとグリの動向を見守っていたせいで、まともに食事を取っていない。

 セリアが寝るタイミングで俺も寝るようになり、気づけば生活リズムがシンクロしつつある。

 とはいえ、空腹には耐えられない。

 仕方なく、家の中の食料を探すが——。

「……何もねぇ。」

 冷蔵庫を開けても、棚を探しても、ろくなものがない。

 外に出たくはないが、飢え死にも困る。

「……しゃあねぇ、買い物行くか。」

 渋々立ち上がる。

「王様に会うだけなら、別にずっと見てなくてもいいだろ。」

 そう思い、画面の端にあるバツボタンに触れる。

 すると、モニターがふっと消え、視界が開けた。

「……ま、すぐ戻るしな。」

 そう呟いて、俺は財布を手に取り、近所のスーパーへと向かった。

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