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馬車に揺られながら
道中、馬車の中で揺られながら、俺はぼんやりと画面を眺めていた。
セリアが手綱を握り、馬を操っている。
ふと、俺は呟いた。
「……意外と、かわいい子じゃん」
もちろん、俺の言葉を聞く者はいない。グリ以外は。
「カワイイコ!」
突然、グリが口を開いた。
その瞬間、セリアの肩がピクリと揺れる。
「……え?」
セリアはゆっくりと振り返り、グリを見つめる。
「ちょっと待って、今なんて言った?」
グリは首を傾げ、再び口を開く。
「カワイイコ!」
「……誰が?」
「カワイイコ!」
セリアの顔が一気に赤く染まる。
「え、なに!? なんでそんなこと言うの!? え、え、誰に言われたの!? ねぇ!」
グリは無邪気に羽をバタつかせながらもう一度。
「カワイイコ!」
「やめろぉぉぉ!!!」
馬車の中に、セリアの叫びが響き渡った。




