閑話:夢と現実の境界線
薄闇の中、ふわりと浮かぶリナの唇。
「…リナにキスされたとき、すごく嬉しかったんでしょ?」
小悪魔のように微笑みながら囁く声に、胸の奥が締めつけられる。
夢の中のアレンは、言われるままに頷いていた。
「う…ん」
するとリナがくすりと笑い、唇をすり合わせてくる。
甘く、──しかしどこか切ないそのキスの瞬間、世界が一瞬止まった。
――カタン、と。
何かがはじける音。
目を開けたアレンの視界に飛び込んできたのは、
本当にリナの柔らかな唇だった。
朝陽が差し込む寝台の上で、ほんのりと糸を引く雫のように、二人の唇が離れていく。
その間もリナの瞳は熱を帯び、暗闇を切り裂くようにアレンを射抜いていた。
「アレン…おはよう」
寝起きの甘い声が、まだ耳に残る。
夢だと思ったのは束の間、肌に残るぬくもりと、心臓の高鳴りが、確かな現実を告げていた。
「うわーっ!」と悲鳴をあげ、アレンは咄嗟に布団の中へ身を投げ込んだ。
「ちょ、ちょっと…何すんだよ!」と布団越しに抗議の声だけが飛ぶ。
リナは枕に突っ伏してケラケラと笑い転げる。
「大成功~!アレン、すっごくビックリしてたよ?」
恐る恐る顔だけを出したアレンに、リナはいたずらっ子のように囁いた。
「ごめんごめん…でも、気持ちよかったでしょ?」
その言葉が突然、アレンの耳元で甘く響き、頬は瞬く間に真っ赤になる。
プイッとそっぽを向き、布団の中で小さく腕を組むと、アレンは拗ねたように小声で呟いた。
「…うるさいな、そんなこと言うなよ」
リナは満足そうに微笑みながら、そっとアレンをからかうように頭を撫でた。
――なんで俺がこんなませガキに…
今世ではまだ子どもなのに、精神年齢は大人なんだぞ!
こんな小娘に翻弄されるなんて、冗談じゃない!
本来ならここで一発説教してやるところだが…
そのとき、リナがふっと顔を近づけて囁いた。
「この前はありがとう。かっこよかったよ」
胸に刺さる──。
アレンは思わず「フン」と鼻を鳴らし、布団をぐっと引き寄せて再び頭からすっぽり潜り込んだ。
――マセガキがー! 俺より大人ぶりやがって!
赤面したまま俯き、アレンは小さくいじけるのであった。
死にかけた日の翌日の朝ですね。
この世界では男性が少ないので女性は積極的ですね。
リナちゃんは特にだと思いますが!