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聖堂の奇跡

【クエスト】

・世界の救世

 発行者: アストリア

 報酬: 君が望む世界


――アレンは浮かぶ文字にツッコミを入れた。


かすかに浮かぶARインターフェイスを眺めながら、

『世界の救世』の文字に(…おいおい、主人公フラグかよ)。


絶対きついって、と心の中で茶化しつつも、期待感が胸の奥で渦巻く。

その思いがよぎった瞬間、視界がぼやけた。

遠くからリナの声がかすかに響く。


――そして、意識はすっと途切れ、暗闇が広がった。


目が覚めると、教会の冷たい石床に横たわっていた。

頭に包帯が巻かれ、頬に当たる布がひんやりと感じる。

遠くから女性の怒声が響いた。

「リナのせいで、アレンはどうなるのよ!目が覚めなかったらどう責任をとるの!」


目を開けると、聖堂の奥でリナが村の女性たちに囲まれていた。

小柄な彼女は声を絞り出すように震え、頬に青い痣が点々と残っている。

「は?」とアレン。

目の前で暴行をうけたであろうリナを見て、思わず息を呑んだ。


「何やってるんだよ!」

体が勝手に動き、アレンは大人たちの前に立ちはだかった。

リナを胸に引き寄せ、声を張り上げる。

「リナにひどいことをしないで!」


――その言葉に、聖堂中が一瞬で静まり返った。


「アレン、どきなさい!」とある大人が怒鳴る。

「子供でも一歩間違えれば死んでいたんだぞ!」と別の大人が続ける。

「村の掟で、けじめとして鞭打ちは受けてもらう」

「そんなの知らないよ」とアレンは首を振るが、


「リナがアレンを突き飛ばしたと聞いたんだ」と大人たちは告げた。

(リナ、嘘でもいいからついておけばよかったのに…)と心で呟くアレン。

だが裏表のないリナの一途さが、胸に熱く響く。


アレンは顔を上げ、静かに言った。

「僕も悪かった。鞭打ちをするなら、僕にもすればいい」

リナは震える声で小さく呼びかけた。

「アレン……」


アレンはぎこちなく微笑み、小声で言った。

「本当は、リナにキスされたとき、すごく嬉しかったんだ」

リナは驚いたように目を見開き、すぐに優しく微笑んだ。

「僕が、リナを守るから」


疲れきったリナをアレンはそっと抱き寄せ、穏やかな目で手を握り返した。

「いいから、どきなさい!」と大人が迫るが、アレンは体を固くして離れようとしない。



――シスター視点

シスターはアレンを教会に運び込んだときから、不思議に思っていた。

大量出血のあと、流石にダメかと思ったが、頭に傷跡はなかった。

何か特別な力が働いたのかもしれないと感じる。


『これは神のご加護に違いないと』


シスターは心の中で確信した。

「流石に止めなくてはいけませんね」

興奮する二人と大人たちを見て、静かに前に出る。

シスター「皆さん、もう十分ではありませんか?」


村人A「しかし村の掟では、子供といえどケジメは必要です...」

シスター「掟は重要です。でも今は、この子たちの体と心を守ることが最優先です」

そう言ってシスターは優しく二人を包み込み、大人たちを落ち着かせた。


――アレンの視点

シスターが大人たちをなだめる声を背に、アレンの視線はリナの痣に釘づけだった。

どうにかしたい──焦る気持ちを抑えきれず、あの崖から落ちた瞬間に浮かんだ画面を思い出す。

『回復魔法インストール完了』──確か、そんな表示が出ていたはずだ。

だったら、使えるんじゃないか?


(どうやって呼び出すんだ…?)と心で念じる。

たしかこう書いてあった

「ARインターフェイス」と静かに言葉を紡ぐ。

すると、視界の隅に淡い光の輪が現れて、メニューが浮かび上がった。

《スキンヒール》


アレンは深く息を吸い込み、画面を見つめた。

「大丈夫、リナ…今直すから」

「スキンヒール!」と声に出すと、掌から暖かな光が湧き上がる。

リナの痣を包むように、光がゆっくり広がっていった。


教会中が息をのむ中、聖堂は再び静まり返った。

リナは驚きで目を見開き、胸に稲妻が走るような衝撃を受けた。


『やっぱりアレンは私の運命の人だ』


鼓動は瞬く間に早鐘のように高鳴り、全身が熱く震えていた。

これは、終わりなき想いの始まりなのだと、本能が告げていた。


しばらくの静寂の中、シスターはそっと歩み寄り、優しく声をかけた。


シスター「アレンくん…どうして、その魔法を使えたのですか?」

アレンは緊張で包帯の締めつけを忘れそうになりながら、息を整えて言った。

「崖から落ちた瞬間、頭の中で声がしたんです。『スキンヒール』…ただ真似して唱えたら、光がほとばしって傷を治してくれました」


――大人たちの反応


一瞬、聖堂は呼吸を止めたかのような静寂に包まれる。

やがてシスターが胸に手を当て、かすかな声で言った。

「神様のご加護ね…本当に、奇跡です」

続いて大人たちは口々に感謝の祈りを捧げた。


「愛の神に感謝を――!」

「アレンくんをお守りくださり、ありがとうございます!」

聖堂には温かな祈りの声が満ちあふれ、信仰がさらに深まっていった。

リナはそっと目を閉じ、愛の神に祈りを捧げる。


『永遠に、アレンと一緒にいられますようにと』


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