知りし痴れ者
ある夜のこと。ふと気になったそれは夜空に線を引いた流れ星……かと思いきや、こちらに迫りくる隕石……でもなかった。逃げようと思う間もなく、それは旋回、及び急降下し地上に、それも目の前に降りてきたのである。
「やー、どうもどうも、ワタシは宇宙人ですってネ。正確には△□星から来ましタ、※●▽と言うんですけドー。ん? ああ、やはりこの翻訳装置でも聞き取れませんかネ。まあ、宇宙人と呼んじゃってくださイ。地球人サン」
と、フランクな口調と立ち振る舞いに、この突然の事態に直面した者たちはひとまず胸を撫で下ろした。とはいえ、心臓は早鐘を打っている。一体なぜどうしてここに突然現れたのか。何を聞けばいいのか。
黙りこくる一同の代わりとばかりに宇宙人は喋り続けた。
――で、あるからして
――こういうことが
――あなたたちは対立してますが
――実はこういうことがあって
――ああ、人類の始まりはね
と、その最中。一人が手を上げ、話を遮った。宇宙人は嫌な顔一つせず、にこやかに『どうぞー』と手で指し示す。
「えっと、あなたがその手に持っているその装置は……」
「ああ、これはそうですネ、ウーン、なんというか、この星の歴史を簡単に調べることができる装置と言いますかネェ、人類の始まりから記録してあって、主要な事件なども精細に載ってるんでスヨ。キーワードを入力して、こんな風に検索。ははは、実はある昆虫はね、我々が放った監視装置なんですヨ。まあ、人類の皆さんにゃ、それを知るのは不可能ですけドモ」
「……なるほど。それでなぜ、あなたはここへ?」
「いやー、マーネ……まあ、この星のことは静観するって決まりなんですけド、と、いうかもう放置? 我々が管理している星はそりゃもう数が多いのなんの。まー、だから私がネェ、個人的に貰っちゃってもいいかなというカ、支配者というか、アレとして崇めて貰っちゃっ――」
銃声が夜空に響いた。何発も。もう話を聞く必要はなかった。どうやらこの宇宙人はその星の落ちこぼれであり、人類の秘密を握るものであり、ここが、宗教家、政治家、実業家など権力を持った者の集まりであることを知り、接触してきたのだと。
だが、不都合な真実など毒でしかない。
彼らは全てを覆い隠すことに決めた。そして、この夜。秘密結社が誕生したのだった。