セルン・アシリエータ
あれから数日が経過した。
その間、何回かクエストに行ったが、セルンさんたちとは会うことはなかった。
俺たちもセルンさんたちも毎日来るわけじゃないので予定が合わないのだろう。
今日も一週間ぶりくらいにギルドに行った。
ー隣町アルフェット 冒険者ギルドー
「今日は、セルンさんたちいるかなー?」
リドルフォ「どうだろうな」
「あっ」
リエッタとゾミエルがいる。しかし、セルンさんの姿は見えない。
リエッタとゾミエルの顔はとても暗いです表情をしている。
俺はあんな顔をした冒険者を何人も見てきたが、まさかセルンさんが…
いや、まだそう決まったわけではない。
リドルフォ「ゾミエル、リエッタ、そんなところで何をしているのか?」
リドルフォもなんとなくは察しているのだろう。その上でリエッタたちに尋ねたんだろう。
ゾミエル「リドルフォさん…」
声のトーンが前よりも明らかに低い。
リエッタ「うっうぇーーん」
「セルンさんがセルンさんがーー」
やはりそういうことなのか。俺の目からも自然と涙が流れる。
セルンさんは俺の師匠であり、俺に魔術の真髄を教えてくれた。俺に戦い方を教えてくれた。短い期間でもセルンさんとの日々はとても有意義だった。
そんなセルンさんが…
リドルフォ「辛いのはわかってる。でも何があったか説明してくれないか?」
リドルフォも涙を流している。
ゾミエル「あれは一週間前のこと」
ー過去回想ー
リエッタ「今日もレラートたちいなかったね」
セルン「そうだね、でも冒険者ギルドに通ってたらいつかは会えるでしょう」
「私もまだレラートに教えたいことがいっぱいです!!」
ゾミエル「俺もリドルフォさんに色々なことを教えてもらわないと」
クエストの帰りだ
周りはもう暗い
リエッタ「今日はどうするんですか?」
セルン「食料もたくさん買えたし家に帰りましょうか」
「もう暗いですし少し急ぎましょう」
ゾミエル「夜になると魔物が多いな」
フバーース
象並の大きなモンスターと対峙していた
ゾミエル「ここは任せてください」
「烈赤と…
セルンがゾミエルの服を引っ張り後ろに投げる
ズザーン
セルン「っ!!」
「誰だ!!」
不必要なほどの魔力波
明らかにこちら側への攻撃
こんな辺境の場所
野盗とも考えにくい
まさかっ!!
男魔術師「はじめましてセルンさん」
「申し訳無いのですがあなたには死んでもらいます」
男魔術師はフードを深く被っている
そのローブには幻獣シフカの刻印
手下であろう魔術師を2人連れている
セルン「アレイストの魔術師か、私に何の用だ」
男魔術師「ただ罪人を裁きに来ただけだ」
セルン「罪人だと?罪を犯したのはお前らアレイストだろ」
男魔術師「反省の色はなしか」
「反逆者よ」
男魔術師「おいガキども」
「このセルンっていう女は罪人だぞ」
「アレイストの聖魔女でありながら、アレイストを裏切り聖本を持ち逃げした」
「こっちに来い俺がお前たちを救ってやる」
リエッタ「誰がお前らなんかに」
「セルンさんは私たちを救ってくれた」
男魔術師「そうか」
「死ね」
紫の魔力波がリエッタに向かう
セルン「聖の游套」
「リエッタ、ゾミエル逃げてっ」
紫の魔力とセルンの魔術がぶつかり合う
お互いが相殺する
リエッタとゾミエルは逃げた
セルンさんを助けるにも自分たちじゃ力不足であることを理解している
セルン「子供は聖の種なり」
「聖魔法で攻撃することなかれ」
男魔術師「たしかにそんな話もあったな」
セルン「アレイストも落ちたな」
「聖本の写しすら読んだこともないのか」
男魔術師「そんなのはどうでも良い」
「黙って製本を返せ、そして死ね」
「あの本はそこにあるだけで意味がある」
セルン「そうか、」
その頃
ゾミエル「逃げるのは無駄だ」
「セルンさんを見守る」
「いざとなったら俺たちが戦う」
リエッタ「でもセルンさんは逃げろって」
ゾミエル「もう手遅れだ」
「周りはもう奴らの仲間に囲まれている」
「俺たちはここでじっとしてセルンさんの勝利を信じよう」
リエッタ「そうかも…」
セルン「聖の游輪」
高密度のリングが2人の手下を襲う
男魔術師はそれを弾く
グァーー
手下が悲鳴を上げる
男魔術師「やはり強いな」
「だがこんなんでは俺を倒せないぞ」
セルン「ふふっ」
「思ったより弱いね」
「君たち」
「3歳児以下だよ」
男魔術師「なんだと、クソアマが」
セルンが間合いをつめる
男魔術師はセルンを遠距離魔術師だと思ってたのだろう
急に間合いを詰められ対応できていない
セルン「聖の游槍」
グサァ
男魔術師の顔面を高密度の槍が貫く
男魔術師は倒れた
顔面が原型を保っていない
死んでいるだろう
リエッタ、ゾミエル「やったー!!」
「さすがセルンさん!!」
セルンさんに駆け寄る
セルン「来るなっ!!」
ゾミエル、リエッタ「えっ?」
それからの出来事は一瞬だった
セルンさんがリエッタとゾミエルを
魔力の大波から守ったのだ
リエッタ「セルンさん…」
セルンは異様な魔気を覆っている
身を挺してリエッタとゾミエルを守ったのだ
セルンさんの背中は攻撃を受けて抉られている
リエッタ「ヒール」
回復魔術をかける
やはり治る気配はない
その男は突如現れた
さっきの男魔術師の死体を踏みつけながらセルンのもとに寄ってくる
謎の魔術師「セルン、やはりお前だ」
「この魔術を防げるなんて」
「でもダメだ」
「そのガキを助けてなければ完璧に防げてただろう」
セルン「イーバンアウト・ソルレイル」
イーバンアウト「俺の名前を覚えていたか」
「まあいい」
「お前の人生もここまでだ」
「聖の死裁」
セルン「聖の魔鏖破」
高密度の魔力がぶつかり合う
セルンはゾミエルとリエッタを抱きしめ守りっている
高密度の魔力同士はぶつかり合い
大きく広がる半径500mくらいの地面を抉り上げた
イーバンアウト「セルンさすがだ」
「殺すのが惜しいくらいだ」
セルン「お前はまだ聖本の教えが残っているのかな」
「この2人の子は助けてくれ」
イーバンアウト「聖本か、懐かしいな」
「じゃあなセルン」
セルンの頭に短剣を突き刺す
リエッタ「うああああーーー」
イーバンアウトの手下「イーバンアウト様このガキどもをどうしますか」
イーバンアウト「セルンのことだこのガキにも何か仕掛けているだろう」
「殺さずに置いておこう」
ゾミエル「…ろす、殺す、お前を絶対に殺す」
イーバンアウト「いつでも来い」
ー現代ー
ゾミエル「こういうことがあったわけだ」
リドルフォ「まさかセルンさんが…」
リエッタ「私がレラートくらい強かったらまだ…」
リエッタが俺に泣きつく。
リエッタ「ごめん、弱くて、こんな私で」
「リエッタ…」
ゾミエル「セルンさんずっとなんの関わりのない俺たちの世話をしてくれていた」
「俺にとっては命の恩人だ」
「セルンさんを殺したあいつを俺は絶対に殺す」
本気の目だ。本気で復讐しようとしている目をしている。
リドルフォ「それでお前たち身寄りはあるのか?」
リエッタ「私たちは戦争孤児なんで家族も親戚も知らないです」
「だから身寄りもないです」
リドルフォ「そうか、まあとりあえず俺の家に来い」
リエッタ、ゾミエル「ありがとうございます」
セルンさんの死はリエッタ、ゾミエルそして俺にも大きな影響を与えた。