9,教員たちの防衛戦
学園内のインフラ整備が完了していないのに、また熊が出没したという警報が出た。
「やれやれ、また熊か、仕方ないのう。」
黒川校長が重い腰を上げた。
学校側の示しとして、警察や自衛隊ばかりに学校の安全を任せるのは世間的に不味いと感じたので、校長を含め、教員たちも熊の撃退に加わる事にした。
「お前ら、我が校、百丸学園 大柳高等学校を防衛するぞ!」
「おおおおー!!」
教員たちが一斉に立ち上がった。沢山学費を父兄から貰っているので給料分は働けという事だが熊の撃退の場合は危険手当が出ることになっている。
校門の前に熊がまた一匹、学園内に侵入してきた。
「仕方が無い、ワシが手本を見せてやろう。」
黒川校長が自ら先頭を立っているのは意外だった。でも学園の司令塔が自ら最前線に出るとは責任感のある人だと皆が感心した。
「凄いな、あの校長! 只者じゃねえよ。」
男子生徒たちも皆、驚いている。
校長は刺股を手に持っており、抑えられるととても痛そうだ。
一方、千疋教頭が小屋の上に登ってライフルを構えている。
その姿は渋くてカッコいいと皆が賞賛した。
「流石が教頭だ。スナイパー千疋!」
いつも片眼鏡をしているのはスコープをのぞき込むために必要な道具らしい。
しかし、スナイパーはあくまで後方支援のため、校長の背後で構えている。
よって敵に狙われたら直ぐに逃げなければならない。
3人目は広見先生だが狩猟刀を二本、構えている。
まるで双剣の騎士みたいでカッコいい姿だ。
「キャー、広見先生! 素敵!」
一部の女子生徒からは凄くウケが良いらしい。
空腹で苦しんでいる為、学園内の食堂の匂いを嗅ぎつけて来たのだ。
その熊が校門に突っ込んで来たら直ぐに校長が刺股で熊を押さえた。
一方、広見先生が熊の背後に回り、ナイフで刺した。
「千疋、今じゃ! コイツの頭を狙え!」
校長の叫び声と共に教頭がトリガーを引いた。
「ドォーーーン!」
一発の弾で熊の頭を打ちぬいた。
広見先生のナイフを抜いたと同時に熊は倒れ、死んだ。
「おおぉぉーやったぞ! 先生たちだけで今回も熊を撃退したんだ!」
高い学費払っているのなら当然という考えの者も居れば、払い甲斐が有るという者も居る。
何れにせよ、この一件で百丸学園 大柳高等学校のイメージが良くなった。