8,銃は持てなくても何か出来ることはある
「教頭先生、僕に銃を教えてください。」
僕はダメ元で千疋教頭に頼みこんだ。
「えーと、君は確か広見先生の……」
「はい。1年A組の白金剣人です。」
「いきなり何を言い出すんだい白金君、高校生に銃を持たせるなんて出来ないよ。何で銃を使いたいんだい?」
「そ、それは……さっき熊が僕たちを襲ってきてクラスメイトが殺されるかも知れなかったんです。
また、あんな大きな熊が襲ってきたときに友達を守りたいんです。」
「そうか、でも教師としてはやはり、武器を生徒に預けるわけには行かないんだよ。銃を持つ以外に誰かの役に立つことは幾らでもある」
「あっ確かにそうですね……自分に出来ることは何でもやりたいです。」
「ならもう少し自分で考えるんだ、あまり短絡的に決めないようにな。」
千疋教頭からは狙撃手って映画のようには旨く行かない事が多いと聞かされた。
更に銃を撃つことの重みもあるらしい。(物理的な重みだけでなく心も重い)
早とちりしてしまいそうだった。
再び迫間たちの所に戻ってきたら広見先生が駆けつけて銀竜さんや赤尾さんたちに突然泣きながら抱きついて来た。
「銀竜さん! 赤尾さん! 大丈夫だった!? ケガはない!!」
「大丈夫だよ。先生。別に大したことないって、それよりも腕を強く締め付けすぎだよ。苦しい」
赤尾さんが慌てふためいた。
「先生、大げさすぎ。」
銀竜さんも呆れてしまった。
「ちっ、この女狐。女子には甘いな。」
一平は小さくつぶやいた。
「はっ? ちょっと迫間君、何か言った?」
「いや、何でもないっす」
迫間は小声で悪口が聞こえるとは思わなかった。この女教師、地獄耳なのか?
とにかく勘が鋭いので侮れない。 その直後、白金は広見先生に声掛けした。
「先生、僕は人のために何が出来るのか教えてください。」
「えっ?藪から棒に白金君は一体何を言い出すのよ?」
「そ、それは、銀竜さんや赤尾さんたちが熊に襲われる事がありまして……銃を使えるようにならないかと教頭先生に頼んだら案の定、断られましたし、他に学生としてやれることはやりたいので」
「そうね、貴方は学生なんだから銃は絶対にダメ。もし使うとしたら私が使わせてもらうことにするわ。」
「分かりました、先生。」
やはり武器は駄目だ、一歩間違えたら取り返しのつかないことになる。
責任が重いから校内なら教師に限られる。
そんなこんなで一か月が過ぎた。
だが、地震の影響で学園内の警備や設備等は所々不具合が起きているので、完全復旧には至らなかった。