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百丸学園にようこそ  作者: 濃州関丸
20/20

20,平和な学園生活が戻った。

 赤尾の勢いに負け、銀竜はクナイを二本とも落としてしまった。

「しまった。やられる!」

「もう、年貢の納め時ね、覚悟しなさい!」

バアァァァーン!

大きな衝撃と共に矛が柄ごと折れてしまった。

ぶつかったのは盾である。

矛が銀竜の顔に当たる瞬間、白金は、赤尾が投げ捨てた盾を使って矛を受け止めたのだ。


「赤尾さん、もう決着は付いている。もう辞めるんだ!」

「白金君、止めないで。これは私と小梅ちゃんとの問題なのよ!」


 その直後、白金は赤尾の頬を引っぱたいた。パン!と音が出た。

「痛っ!」

「赤尾さん。さっき、君は僕の事好きだと言ってくれたね?」

「えっ? あの会話、白金君。聞いてたの!!」

「う、うん。盗み聞きしていたのは悪かった」

それを知って赤尾は凄く赤くなってへとへと下に蹲り、顔を手で覆った。


「き、聞かれた。白金君に聞かれた。恥ずかしい…」

「僕はそれを聞いてとても嬉しかったよ。こんな気弱な僕でも好きになってくれる女の子が居るから、この学園に入ってきて良かったと思っている」


「じ、じゃあ…私の恋人にはなってくれるの……?」

赤尾は恐るおそる訊ねた。

「うーん、少なくとも今の状況だと無理かな。校長先生や広見先生の許可なくこんなに派手に暴れたんだし……」

「そ、そうよね。これだけ醜態を晒したんだし。無理もないか……」

赤尾は諦めようとしたが白金は助け船を出した。

「うーん、でもね。今回の事を反省すれば考え直してもいいかな」

「こ、こんな私でも好きになってくれるの?」

「あ、ありがとう。う、うわああああああー!」


 赤尾は嬉しさと罪悪感の両方で感情が高ぶり、号泣した。

そして白金の胸元で泣き崩れた。こんな彼女を優しく抱きしめた。


「あーあ、稲子ちゃんばっかりズルイ、白金っち。私も構ってよ…」

銀竜は頬っぺたを膨らませて拗ねていた。

「ゴメンゴメン、銀竜さんも大変だったね。でも赤尾さんをこれ以上は困らせちゃ、駄目だよ」

白金はもう少しこのままにさせてあげて欲しいと銀竜にジェスチャーを送った。


暫くして赤尾は何かつぶやいた。

「…稲子」

「へ?」

「白金君、これから私の事を赤尾さんじゃなくて稲子って呼んで欲しい…」

「う、うーん、いきなりそれはハードルは高いような…」

「さん付けは他人行儀だから嫌! 下の名前で呼び捨てしてくれた方が親しみがあって良いもん!」

赤尾は珍しく、白金に駄々を捏ねた。

「あっ、稲子ちゃん抜け駆け! なら私の事も小梅って呼んで白金っち!」

「えぇぇー! 銀竜さんまでぇぇー!……し、仕方ない。それじゃあ、えーと。稲子…」

「うんうん!」


赤尾は急に立ち直った。

「小梅!」

「うんうん!」

銀竜もテンションが上がった。

「じゃあ、僕の事も剣人で良いよ…」

「良いわよ。宜しくね、剣人君!」

赤尾はあくまで君付けの呼び方である。

「じゃあ、私は白金っちを改めて剣人って呼び捨てにするね!」

「ははは、まあ良いよ、呼びやすい言い方で」


こうして三角関係は良好に戻った。


一方、迫間は急いで広見先生と黒川校長を呼んで連れて来たが、もう争いは既に終わっていた。

しかし、激しい争いをした形跡は残っていた。


「こ、これは一体どういうことなの!?」

広見先生は目を大きくして唖然とした。

「あ、あの……これはその……コンっじゃなくて生徒同士での決闘を行いまして…コン」

まだ、赤尾のキツネツキの癖は残ったままだ。

「なんてことをするの全く! 頭を冷やして反省しなさい!」

しかし、校長は助け船を出すように話しかけた。

「無理もない。何れこうなる事は薄々分かった。今回は大目に見てやってくれ。誰も犠牲者は出ておらん」


 校長は生徒二人にアニマルスーツを貸与した責任を感じているので咎める気にはなれなかった。

これを機に今後、マタギが必要ならば生徒や教員たちのように身内では無く、専門業者に任せることなった。 最初からそうするべきだったのだ。

結果的に損害額で高い出費がついてしまったことを校長は深く反省した。


 その後、赤尾と銀竜はアニマルスーツによる身体への影響が残っている為、一か月間の休学を課せられた。しかし、学園の為に貢献してくれたのでこの期間分は無条件で単位が取れる事になったので決して悪い話ではない。


 赤尾の場合、狐憑きの後遺症が残っている為に神社でお祓いをすることになった。

「もう、これでコンって言わなくて済んだわ。有難う、おばあちゃん!」

「そうかい、稲子には辛い思いをさせてしまったわね」

「いいの、その分だけクラスメイトからの絆は深まったから。辛かったけどお稲荷様には感謝しているわ」

「お前も強くなったわね。流石が自慢の孫娘だわ。おばあちゃんも嬉しいわ」


 一方、銀竜は何の後遺症も無かったので精神科や外科の先生もビックリしている。

「嬢ちゃん、オオカミの遺伝子が微妙に残っているけど平気かね?」

「平気ですよ。私、もしかして前世がオオカミだったりして!」

銀竜は面白可笑しく笑い飛ばした。


 そして、白金は一時的であるがマタギに協力してくれた事に加え、赤尾と銀竜との争いを率先して引き留めてくれた功績をたたえて学費が卒業まで免除となった。

彼が居なかったら二人の争いが肥大化して学園が崩壊していたかもしれないのだ。

それを聞いて白金の兄は弟を見直した。

「そうか、全額免除なら俺の私立大の選択ができるな。よくやったな剣人」

生まれて初めて剣人の兄は弟を褒めて、さらに謝罪もした。


 一方、迫間は残念ながら全額免除では無く、半額免除となった。

以前、白金の悪口を言った同級生に対して胸ぐらを掴んで脅してきた事例が数回あったため、減額となったからである。

「すまん、僕を庇ったせいで全額が取り消さてしまって……」

「別に構わねーよ。どうせ俺はあのメガネ先公の事は期待してねーし。どうせ裏でもあったんだろうな」

本当は広見先生に言われたこと期待していたはずなのだが、迫間は強がりを見せた。


 更に、赤尾と銀竜も半額に減額された。

言うまでも無く、アニマルスーツの無断使用と決闘が原因である。

「残念だったね。小梅ちゃん。二人して減額だなんて」

「そうだね、ついでに稲子ちゃんのおっぱいも減額すればいい勝負だったのにね」

「こーうーめーちゃーん!!」

「アッハッハハハハハァー冗談だったばぁー!


 銀竜は笑いながら逃げ、それを赤尾は追いかける。

「二人とも走り回るとまた、広見先生に怒られるよ」

白金は二人の毎度の喧嘩にもう慣れてしまった。


 因みにハイテクスーツに関しては高リスクにより廃止され、赤尾や銀竜もリハビリ等で時間をかけて普通の女の子に戻った。

特に赤尾は「コン」を言う癖が徐々に無くなり一件落着となる。


 地震災害、野生動物の大量出没、マタギやハイテクスーツ採用など、学校法人 百丸学園 大柳高等学校は私立高校としては異例の学校であることが全国に認知され、そんな誇り高き学園生活を白金は謳歌できるのであった。


 時は秋。文化祭が開催され、白金、赤尾、銀竜、迫間は校門の前でこう叫んだ。

「僕たちは大柳高等学校の生徒です。災害事件等、色々有りましたが有意義に学校生活を満喫しています。当校は通称、大柳高校と言われていますが学校法人名は百丸学園です! それでは、百丸学園にようこそ!」




















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― 新着の感想 ―
 完結おめでとうございます。  これからは、もう少し平穏な学園生活が送れるといいですね(笑)
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