17,今度は女の子を最前線に行かせることになる。
以前に出されたドローンについての案件だが、赤尾はともかく、銀竜は細かい作業が苦手なため、何度もコントローラーを壊した事が有った。
話は少し前に遡る。
「あ~もう、面倒くさいな、この、このこのこのおおぉぉおー!」
銀竜はあまりのもどかしさにイラついていた。
「小梅ちゃん、そんなに乱暴に使っちゃ駄目!」
彼女とは違い、赤尾は細かい作業が得意であり、物覚えも早かった。
「はあ……、こりゃ、考え直さないといかんな……」
黒川校長は銀竜が細かい作業が苦手であることを把握していなかった。
よく考えた結果、ドローンの操作ぐらいなら教員や他の生徒でも出来るという結論に至り、この二人には次の役目を果たして貰うことにした。
そして話は再び、元の時系列に戻る
マタギに代わって校長の新しい案は女の子に武装して野生動物たちを追っ払う事である。
(何故、女の子を使うかは後ほど説明する)
追っ払う事が出来れば彼らを殺さずに済むので死体を回収、処理是ずに済むので鳥獣保護法の規定を気にしたくて済むのだ。
因みに武装とは黒川校長の弟が開発したハイテクスーツである。
「まず、銀竜君にはこれを装着して貰おう」
校長はジュラルミン合金のような小道具を取り出した。
「ええぇええー! こんな高そうな物を私が身に付けるんですか?」
「そうじゃ、これを身に付けることで熊や猪に対抗できるんじゃ」
「銀竜さん、安心しなさい、全責任は私が取りますから」
広見先生は多少の不安が有るが、校長とその弟の博士の話し合いである程度は理解して貰えた。
用意された小道具を全て取り出したら白い動物の耳と尻尾があり、腕に付ける装備は大きな爪が有る。
「あ! これはもしかして白いオオカミのコスプレじゃないですか?」
「コスプレとはそこいらの安物に感じて失礼じゃな、まぁ良い。更衣室に行って着替えて来なさい」
「はーい」
装着するにも細かい調整が必要なので、銀竜は弟の博士に専属している女性助手が同行して行った。
流石に女の子の着替えに男性が付いていくわけには行かない。
次に赤尾が装着する装備である。
「そして、赤尾君、君にはこの赤い小道具をつけて貰う」
「わあ、なんかテコンドーか戦国武将に出てくる足軽部隊みたいな防具ですね」
「そうじゃ、この防具が獣から君を守ってくれるはずじゃ」
更に説明すると、鳥居の形をした大きな盾も出て来た。その鳥居の間には襖みたいな模様があり、
武器は稲荷寿司を模したハンマーが一本用意されている。
「でも、校長先生、この道具一式にも動物の耳と尻尾が有りますよね?」
「そうじゃ、これはキツネの耳と尻尾を模しているんじゃ」
「え! なんでキツネなんですか?」
「何故かというと、武器と防具をよく見てみ。稲荷寿司に鳥居を見れば稲荷神社を連想するじゃろ。その使いと言えばキツネなんじゃ」
「はあぁ?」
赤尾は理解に苦しんだ。何故、自分の武装が稲荷なのか。
「とりあえず、君も着替えて来なさい」
「は、はい……」
本人は未だ納得してはいなかったが学園を守る為だという事で割り切った。
丁度、銀竜についていった女性助手が戻って来たので赤尾もその助手に調整をしてもらう事にした。
そして暫くして武装した女の子が校長室に戻って来た。
「二人とも似合っているではないか」
「あ、あの校長先生。どうして私たち女の子がこんな役目をさせるのでしょうか?」
「今からそれを説明する。よく聞きなさい」
これらの武装はすべて動物の細胞を元に装備が作られている。
見た目通り、銀竜の装備は白いオオカミ、赤尾の装備はキツネの細胞が使われている。
しかも、その細胞は両者ともメスなのだ。
メスはオスと違い、子供を産む組織が有るのでメスの方が生命力が高い。
メスの細胞であるからこそ、装着するのは人間の女性つまり十代の女の子が細胞が活発であり、適任である研究結果を元に二人の女子生徒が選ばれた。
その二人が銀竜と赤尾である。
銀竜は見た目と性格からしてオオカミに近いので、この白い装備が選ばれた。
赤尾の場合、家系(祖母は元巫女)が神職をしている事情があり稲荷神社との繋がりが有る。
その関係からキツネに関する装備が彼女に適合したのだ。
因みに赤尾が何時も稲穂の簪を身に付けてるのは祖母からのプレゼントである。
「でも、校長先生。白金君が呼ばれた理由は何でしょうか?」
「そうですよ、私もそれが気になってました」
赤尾に続いて銀竜も加勢した。
「それは君たちが身に付けている装備の力を増幅させるためのカギとなるからじゃよ」
「鍵ですか…」
「君たち二人には白金君に対して特別な感情を抱いておるじゃろう?」
「えっ?」
「えええええぇぇ!」
銀竜と赤尾の反応は言うまでも無かった。
何故なら、二人とも白金が大好きであるからだ。
「校長先生でも私たち三人の関係が分かるんですね?」
「当り前じゃ、目を瞑っていても声で良く分かる」
そこで、広見先生が口を割る。
「三人とも不純性異性交遊は控えるように。特に銀竜さん」
「は、はい…」
銀竜は特に羽目を外しやすいから要注意人物である。
再び校長が話を戻す。
「その小道具をただ、装着しただけだと重いと感じるだけじゃろ?」
「はい、確かに普通の服に比べればそんな気もしますが…」
「では、白金君、それぞれ二人に抱き付きたまえ」
「えぇぇぇー!僕がですか!」
「そうじゃ、はよせんか。思いっきりやっても構わんぞ」
白金は顔を真っ赤にして恥ずかしながらも二人に近づいた。
「ちょっと、白金君…こ、心の準備が…」
赤尾も真っ赤になって戸惑っている。
それに対して銀竜はワクワクしている、この子は恥じらいがないのだろうか?
「じゃあ、私が先にハグするね」
銀竜は遠慮なく白金に抱きついた。
「ぎ、 銀竜さん、は、恥ずかしい」
その直後、身に付けた装備にエネルギーが溜まり、すごく武装が軽くなった。
「わぁ、これ凄い! このスーツからなんか元気が出ているよ!」
「その通りじゃ、この装備は嬉しいという感情に大きく左右される道具なんじゃ、更に適任者も限られる。 銀竜君には一番相性が有って良かったわい」
赤尾も負けていられないと思い白金に抱きついた。
「白金君、失礼するね」
「!」
その直後、赤尾の装備も力が入り、銀竜に誓った。
「小梅ちゃん、私も負けないから」
「ええ、望むところよ」
こうして二人はこのハイテクスーツ(通称、アニマルスーツ)でマタギ対策の最前線に出ることになったのである。