16,今後の学園の方針についての話し合い
千疋教頭が懲戒免職で更に警察に逮捕されて学園のイメージが悪くなってしまった。
しかし、それでも校長は自分の給料を大幅に削減して学園内の復興のために寄付をすることにした。
いわゆる自主返納である。
校長はこの一件で監督責任を取るためのケジメの一つだ。
極論を言えば、常勤講師並みの給料に相応する。
それでも校長は困ってはいない。過去に極貧生活をした経験が有るので貧乏には慣れているらしい。
そして、まだマタギに関しての課題が有る。
千疋が居なくなっても未だ熊や猪が学園側に向かっている情報を聞きつけた。
ヤツが園内にバラまかれた餌が原因である。
撤去したとしても森林内には匂いが残ってしまうのだ。
校長は銃は使わずに弓矢を使うようにしていたが、これも誤って人間に刺さってしまうリスクも考えるのでこれも見直すことになった。
そこで思いついたのがハイテク武装である。
彼の弟が工学博士で人間に装着できるパワードスーツを開発していると聞いて兄弟で話し合った。
「弟よ、済まんが兄の為に人肌脱いでくれんか?」
「どうしたんだ、兄さん改まって?」
「うむ、ワシが勤務している学園に何度も獣が現れるんじゃ。銃や矢を使うのは危険じゃからお前さんの科学力で便利な武装を作って欲しいんじゃ、ロボットでは無くてパワードスーツで十分じゃ」
「分かったよ。兄さん、出来る限りのことはやってみるよ」
一か月後、校長の弟が来て職員会議が開かれた。
「校長、私は反対です!生徒にこれ以上、怖い思いをさせたくは有りません!」
広見先生が珍しく校長に向かって反発した。
「分かっている、じゃがあの武装を使いこなすにはあの子たちの協力が必要なんじゃ」
「くっ…!せめて私にだけそれを装着される事は出来ないのでしょうか?」
「すまんが広見君には無理じゃ、あれは10代の娘が適任なんじゃ。君が使おうと思っても道具が拒否されて身動きが取れないだけじゃ」
校長はとても心苦しく思っているが他の術がない。
そして赤尾と銀竜が校長室に呼ばれた。
何故か分からないが剣人も来るように放送が掛かって来た。
「何で僕までが呼ばれるんだろう……」
とりあえず彼は彼女に呼ばれた後に続いて校長室に向かった。
「よく来てくれた、赤尾稲子君と銀竜小梅君」
校長の隣には広見先生が立っている
「校長先生が私たちを指名するのは珍しいですよね?」
赤尾が校長に尋ねて来た。
「急に呼び出して済まないね。後で白金君もここに到着するはずじゃ」
暫くして剣人も入って来た。
「失礼します。白金 剣人です。ただいま到着しました」
「ようやくメンツが揃ったの。まあ、そこのソファに座りたまえ」
校長先生が座っている側は広見先生と二人だけだが、何故か白金が座っている方には両隣に赤尾と銀竜が密着して座っている。なんかハーレムみたいな感じだ。
「ねえ、二人とも何か距離近すぎないかな?」
「仕方ないでしょ、このソファ二人用みたいだし」
銀竜が何か嬉しそうだが赤尾が反発した。
「小梅ちゃん、図々しいわよ」
そんな痴話げんかに様なことしていたら広見先生がゴホンっとワザと咳をして注意した。
「コラ、三人とも静かにしなさい」
「は~い」
因みに、迫間はこの件には関わる必要が無かったので、呼ばれなかった。
「はあ、俺は蚊帳の外かよ…」
傍から見れば本人は不満を言っているように感じるが、面倒な事を押し付けられなくて済んだので、内心ホッとしていた。
そして話の本題に入るのである。




