15,生徒が人質に取られた。
黒川校長の怒鳴り声も動揺せずに千疋は冷静に話を続けていた。
「校長、これ以上私を困らせると学園が吹き飛びますよ」
「で、これからどうするつもりじゃ?」
その直後、扉の向こうから声がした。
壁越しだが女子生徒の声であることは確かだ。
千疋が咄嗟に扉を開けた。バアァーーン!となり響いた。
「キャァァァーー!」
偶然にもそこには赤尾が目の前に立っていた。
千疋は彼女をすぐに捕まえて銃を向けた。
「い、稲子ちゃん! で、なんで教頭先生が銃を稲子ちゃんに向けているの?」
すぐ傍には銀竜もいたが運よく捕まらなかった。
「は、は、は! 校長! この方がスリルがあって楽しいではありませんか?」
「貴様! 自分が何をやっているのかわかっとるんか!」
「わかりますとも、これはゲームなんですよ。私は悪役で構いませんよ。こんな退屈な教員生活なんてクソくらえですよ。」
「な、なんで教頭先生が私たち生徒に銃なんか向けるんですか……」
銀竜は怯えながら千疋に訴えている。
「何故って、もう私はもう教師では無くなったんですよ。」
その直後、千疋は銀竜を足で蹴っ飛ばした。
「きゃぁああああー!」
銀竜は勢いで壁に飛ばされた。
「こ、小梅ちゃん! なんてことするの! 貴方なんて人間じゃない、この悪魔!」
「あああ、いくらでも言ってくれて結構。」
だが、その修羅場から勢いよく駆け足で駆けつけて来た男子生徒が一人いた。
その生徒は千疋を拳で顔を殴りつけて来た。
「ぐはあぁあ!」
千疋はバランスを崩して銃とリモコンを落とした。
なんと、その生徒は白金 剣人だった。
普段は大人しくて優しい男の子だが、この危機で潜在意識が覚醒した。
「お、女の子を苛めるなー!!」
「な、なんだお前は! お前みたいな気が弱そうな小僧に何故、そんな馬鹿力が出るんだ⁉」
「はあ、はあ、はあ……」
剣人は勢いをつけ過ぎてバテてしまい、その場で息をあげてしまった。
その隙に千疋は慌てて逃げだしたが迫間と広見先生と警察官が外で待ち伏せており、直ぐに逮捕された。
「おい、ハゲ! てめえの陰謀もこれまでだぜ! ざまあみろ はっはっはっ!」
「くそぉ…!」
しかし、何故、白金がすぐに駆け付けてきて迫間と広見先生が外で待ち構えいたかは疑問が残る。
それは後ほど説明する事とする。
教頭が逮捕されて黒川校長は一安心した。
「白金君、ワシの代わりに千疋を殴ってくれて有難う、本来なら懲戒を与えないといけないんじゃが、今回は大目に見よう。」
「えっ? 教師を殴ったのに本当に良いんですか? でも何か示しを付けた方がいいんじゃ?」
「ふむ、そうじゃな、停学一週間でどうじゃ?」
「はい、それでお願いします。」
こうして剣人は一週間だけ学校を休むことになったが、代償は軽く済んだ。
この一週間、クラスメイト達は教室で彼の話題で盛り上がった。
「なあ、信じられるか? あの白金が教師をぶん殴ったんだってよ」
「へえ、あの優男が信じられんなぁ」
「あう言うヤツに限ってぶちぎれるとヤバいんだってな、ハハハハ」
一部の男子生徒が彼を揶揄した直後、迫間がその生徒の胸ぐらを掴んできた。
「おい、てめえら、俺のダチの悪口言ったな!」
掴まれた男子生徒たちが怯えてしまった。
「へえええっ、も、もう言いません!」
その生徒は怖くなって走り去ってしまった。
「ふう、これでアイツの噂も無くなるといんだがな」
「有難う、迫間君、白金君を守ってくれて」
珍しく、赤尾が迫間と会話をした。
「そうそう、こういう時こそダチのオッサンが役に立つのよ」
銀竜も迫間を認めた。
「あのなあ、銀竜、俺はお前たちと同級生なんだぞ、せめて迫間と呼んでくれ」
迫間は呼び方に怒りはもう無く呆れてしまっている。
「じゃあ、迫間君というのはシックリこないから迫間氏よ呼んでみたい」
銀竜は何故か親しくなった男子生徒に対してはあだ名を付けたがる。
「まあ、それでいいや。宜しくな銀竜、赤尾」
これをキッカケに、改めて迫間も女子生徒と親しくなることが出来たのである。