14,黒幕は教員の中にいた。
今更だが、初めて剣人達4人組が熊に襲われたときは鹿威しの前に現れたときはいくつか疑問点が有る。
剣人はその事に違和感を抱いていて広見先生に相談した。
「先生、僕たち4人が熊に遭遇したのは鹿威しが有ったのはよく覚えているんですよ。」
「あら、そう。それが何か?」
「僕はその事に何となく違和感が有るんですよ。この偶然が誰かに誘導されたというか……」
「白金君は何が言いたいのか先生には良く分からないから取り合えず現場に向かいましょう。」
「はい。」
鹿威しの前には、千疋教頭が撃ち落とした弾丸の跡が残っている。更に何か甘い匂いがして蟻が行列を作ってウロウロしている。
「先生、この場所だけ不自然に土が盛ってある箇所が有ります。」
「どれどれ、あらま! これは…他の先生方を呼んでくるから貴方はここで待っていなさい。」
「分かりました。」
暫くして、数人の先生方が盛った土を掘り起こして何か瓶のような物を見つけた。
よく見たら蜂蜜が入った瓶である。
「一体誰がこんなものを土に埋めたのかしら……」
広見先生は理解に苦しんだので黒川校長に報告する事にした。
翌日、校長は全職員を使って学園内の森林園内で不自然に盛ってある場所を探すように指示した。
調査から一時間後、園内の十数か所の穴から蓋の外れた蜂蜜が発見された。
「こんな事を考える奴はアイツしかおらん。しかし決定的な証拠がないな……」
校長は弁護士と探偵を呼び、心当たりがある教員の調査を依頼することにした。
そして、職員会議を開き、熊が出没した日の前後に不審な人物や行動が無いか確認したが案の定、生徒では無く、一人の教員が浮上してきた。
「これはあくまで憶測じゃ、皆の者。絶対に校外に漏らさぬようにな。」
「かしこまりました、校長」
会議に出席した教員たちもこれで熊問題が解決出来てホッとした。
後は犯人が尻尾を出すのを待つのである。
千疋教頭が職場復帰をした初日、黒川校長は直ぐに教頭を刺股で取り押さえた。
ただし、熊用ではなく、アルミ製の防犯用のものである。
「な、なんですか、校長。いきなり刺股で脅すなんて。それに私は病み上がりなんですよ」
「そんなこと知った事か! 貴様、この一連の熊騒動でとんでもないことしてくれたな⁉」
教頭は暫く沈黙した後に直ぐに不気味な笑い方をした。
「フッフッフ。まあ、ばれるのも時間の問題でしたか……」
「千疋!やはり貴様が犯人か⁉ 本性を現しおったな!」
「おっと、校長、動かないでくださいよ。これが何だかわかりますか?」
教頭が手にしているリモコンのような物は、赤いボタンに小さなアンテナが付いている。
「ま、まさか。それは起爆装置か⁉」
「その通りですよ、このボタン一つで学園内が吹き飛びますよ」
校長はこれまでに学園内の不審物を探したが蜂蜜の瓶以外に爆弾が有ることまでは気が付かなかった。
「貴様!一体何が望みじゃ⁉」
「望み? そうですね。この学園を射撃科の高校に変えたいですね、」
「馬鹿者!、学生に銃など持たせるわけにいかんじゃろ! そんな事許さん!」
「はあ? 貴方、生徒に刺股や弓矢持たせておいて、今更 銃はだけ持たせるとは筋違いでは無いでしょうか?」
「それは貴様がわざと熊を招き入れるような細工をしたからじゃろう。それが無ければ生徒に危険な真似はさせなかった。他の教員も熊を怖がって退職を希望する者も出て来た。貴様のせいじゃ!」