10,広見先生の意外な過去
広見先生って、ぶっきらぼうな感じがするけど根は優しい人だ。
でも、学生時代は一体どんな生徒だったんだろう? 僕は疑問に思った。
流石に単刀直入に聞くのは心苦しいから回りくどい言い方するしかないだろうな……
ああ、でも気になる。丁度、広見先生が廊下を歩いていると何か紙のようなものを一枚落としていった。
「これはキツそうな女の子の写真だな。でも、この眼鏡を掛けた女の子は誰かに似ているような……あっ!もしかして、あの人では?」
丁度、廊下の後方から迫間が歩いてきた。
「おう、白金、どうした?そんな驚い顔して。」
「迫間、この写真見てよ。この眼鏡の子、なんか広見先生に似ていないか?」
「た、確かにあの先公に似ているよな……あの女、謎が多いぞ。」
どうしても気になるので直接、職員室に行って本人に聞くことにした。
ただし、迫間が傍を離れたタイミングを見計らった。
そして職員室に到着。
「失礼します。あの、広見先生。」
「あら、 どうしたの白金君?」
「実は廊下を歩いていたら写真が一枚、落ちていまして。」
「えっ! ああ、そう。ありがとね」
広見先生は何か動揺しているようだ。
「この写真に写っているメガネの女の子はもしかして……」
「ええ、そうよ。これは中学時代の私なのよ。何で落としちゃったんだろう。余り大きい声は出せないんだけどね。当時、私は不良娘だったのよ。反抗期で凄く荒れたわ。」
「へぇー、広見先生もそんな時代が有ったんですね。」
「中学時代は校則が厳しかったからね。勉強も嫌いだったわ。」
「でも、どうして教師になったんですか?」
「そうね、こんな荒れ果てた私でも受け止めてくれた教師が居たのよ。何度も喧嘩にはなったけど、その先生は決して見捨てなかったし、飛び降り自殺を図ろうとしても命がけで私を助けてくれた。そんな先生に憧れて私は教師になったのよ。」
「でも、勉強が嫌いだと学校の成績で上位を取るのも困難ですし、大学の進学も苦労したんですよね?」
「そうよ、教師になる決心をつけてから必死になったわ。あの頃の苦労は忘れないようにしているの。」
「そんなすごい話、初めて知りました。意外でしたね。」
「でも、他の生徒には内緒よ。白金君は口が固いから信用して話したのよ。」
「勿論です。有難うございます。」
そして僕は職員室を後にしてから偶然、赤尾さんや銀竜さんと鉢合わせになった。
「白金君、どうしたの?なんかとても満悦した顔して」
「あ、いや、なんでも無いよ。」
「あー!白金っち、ま、まさか他の女の子から告白でもされたんじゃ?」
銀竜がとんでも無いことを言い出した。
「ち、違うよ。僕は広見先生と話をしていたんだよ。」
「……なんだ、そうだったの。心配して損した。」
「もう、小梅ちゃん。変な事言わないの。」
何れにせよ。二人とも広見先生の過去は知らないみたいだが、生徒思いは憧れの先生の意思を引き継いでいるから今はそれで良いんだ。




