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人外失格  作者: 冬目投石
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雑史

      雑史



 恥を恥じとも思わぬ自分がかっこいい。天才らしい。酒を飲むのも良い。酒を飲みながら建物を設計して吐瀉物を吐きながらモンブランの万年筆を躍らせるのも天才らしい。天才でなくとも


凄そうな雰囲気を出していれば人はついてくる。少なくともバカな人間はついてくる。頭の良い人間は本質を見抜きついてくることはない。だが俺の抜きん出た能力を利用しようとしてくる。


利用してくる人間の考えは熟知している。今までたくさんの人間を利用して生きてきたから。利用しようとする奴は自分が目立つように周りをコントロールしていく。


自分さえ凄ければ良いのだ。自分さえ良い思いをしていれば良いのだ。そう思わない人間なんていない。何らかの形で目立っていたい。


何らかの形で世に、少なくとも自身の周りに爪痕を残しておきたい。


自身を忘れずにいてほしいという汚い欲望と願望が混濁したものに支配されて、できたものが人間なのだ。


人とはなんだ。小さい頃はよく人の漢字について下の線が上の線を支えている。つまり支えあって人というものはやっと生きている。と教えられただろうが、そんなことはなく上の線は自分が上に行くために下の線を利用しているだけのこと。


人という漢字を形成する二つの線は上に行きたい一心で支え合うべき存在を憎み、上に行くチャンスを伺っているのだ。そして上にいった線は線というものを見下すようになる。自分が線であることを忘れて、線を哀れみ始める。


そして自分こそが真の線だと勘違いを始める。勘違いの成れの果てには最も優れた存在になりたいと思い始める。しかしそんな存在にはなれない。最も優れた存在など存在しないのだから。


しかし、それを知らずに凄くなりたい、凄くなりたいと思い続けて自分なら凄くなれると更に勘違いし挫折する。そして最も優れた存在にはなれないと悟ったとき、凄そうな存在になりたいと思い始める。


どうにかして自分が凄くなりたい。少なくとも自分が他より優れていると他に思われたい。いつしか、自身のベクトルであった凄くなりたいなどという思想とはかけ離れた境地に行き着いていることにすらにも気づかずに盲目的に凄くなりたいと思い始める。それを狂気と呼ぶ。


こうしてできたのが人の世界というものだ。凄くなどなれない。自分を凄そうに見せようとしていることに自分で気づいた時にはもう遅い。そこにいるのは願望と凄くなりたい呪いが占める人の血が流れる人そのものなのだ。


自覚すれば自覚するほど自分が愚かに思えてくる。本来凄いはずの自分が愚かなわけがない。新たにそんな勘違いをして酒を飲む。全てを忘れる。嫌なことも好きなことも、人の血は不味いものだ。人の血は汚いものだ。


便所の底の変な汁と何ら変わりない。そんな血が流れている自分達はもっと汚くて嫌な存在なのだ。


稀に素直な人間がいる。その人間は自分が汚い存在であることを認め心底絶望する。そして選択する。これからも、汚い存在として自分を凄く見せて偽りながら生きていくのか。それとも自分を欲望の中に埋め廃人として生きていくのか。


たいていの人間は前者を選ぶ。勘違いを拗らせた人間は後者を選ぶ。そう考えてからもう一度、酒を飲んだ。


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