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人外失格  作者: 冬目投石
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たった一人の親友

      たった一人の親友



 全く、非常識という言葉が彼の生き様に似合う。二十二で祥子しょうこという女と結婚したが、夫婦仲は最悪なものだった。服も着ずに年がら年中すっぱだかで威張っていて気に食わないことがあれば物を壊したりした。


酒を飲んだら落ち着くんだと言って大量に酒を買って飲み、ついには依存症と嘲られそれを勲章だと勘違いし、自身を天才と名乗るようなことまでし始めた。彼の奇行をあげればキリがないからこの辺にしておくが彼の一度目の結婚生活は本当にひどいものだった。


第三者である私は、彼の妻から色々な事案を聞く度に「ああこれは離婚した方が良い」と思っていた。しかし、不思議なのは彼の妻から浮気や不倫という言葉を聞いたことがなかったということだった。


学生時代の彼はよくナンパをしていた。十回すれば十回ともうまくことが運ぶような美男子だったが彼についていった女性たちは最後には必ず泣くことになった。一日二日で振られたり、ひどいのは付き合って十分後に振られたと言っている人もいた。


彼は人に飽きるのが早かったと言うふうに思える。


私の印象で行くと彼は毎日違う人と付き合い、違う人と仲良くしていた。昨日はあの人、今日はこの人と決めているのかと思うほどはっきりとしていた。


だから浮気や不倫にまで手を染めていると思っていたのだ。


話を戻すと、彼は結婚五年でついに離婚したが、それから日も経たずに璃子りこという女性と再婚していた。


一度目は式を挙げなかったが二回目では豪華な式を挙げた。私は仕事の都合で出席できなかったが出席した別の友人の話によると彼は「彼女を一生愛する。」や「二度と悲しませることはしない」などと豪語していたらしい。


正直、信用していなかったし私の元に彼の妻から相談がくるのを今か今かと待っていた。意外だったのは周りが彼のことを信用していたと言うことだった。私は元妻から色々な事案を聞いて彼に対してクズという色眼鏡をかけて接するように


なっていたから信用できなかったのかもしれない。


他の友人は彼らのことを本気で応援していた。そんな友人たちを見て、ある意味愚かだとも思った。


この結婚生活の結論としては三ヶ月で終わってしまった。意外なことに今回に関しては彼には非がなかった。


璃子は彼と結婚する前から五十代の男と体の関係を持っていたらしく、その関係は彼と結婚してから不倫となってしまった。


それから二ヵ月後、彼は妻の携帯をうっかり覗いてしまい不倫の全容を把握した。


何かの夢だと、酒の飲み過ぎで幻覚を起こしているのだ、と信じ切って現実逃避をするためにさらに酒をあおった。


今思えばこの結婚が全ての間違いだった。現実逃避のために前の倍以上もの酒を買って飲むようになってしまったせいで本当にアルコール依存症になってしまったのだ。


普段から私にたばこをやめるよう言っているくせにアルコール依存症になってしまって本当に情けない。自分の酒癖を見るが良い。


そして何日か経った深夜のことだった。彼の母親が雑史を連れて自宅に押しかけてきて病院に入れてくれと懇願してきた。


目の下にくまを作りながら雑史を説得したが一向に応じない上に家を破棄しそうな勢いで暴れまわるため納から縄を出してきて


縛り付け、罵詈雑言が飛び出す口をテープでふさぎ、車のトランクに乗せて病院へ連れて行った。


私の妻が終始ニヤニヤしているのが少し気になったが寝巻きのまま病院へ直行した。


イライラしていたこともあってスピード違反をしてしまい白バイに止められ一万円近く罰金を取られた。そしてひどいのはここからだ。


罰金を払ったせいで診察代が足りなくなり、夜明けに妻に自転車で金を届けてもらう羽目にまでなった。いくら親友とはいえこれはひどいと思わないか。


何時間も受付と格闘してやっと入院できることになったのだが一日付き添わないといけないという変な決まりのせいで仕事に遅れが出た上に妻との出かける約束も果たせなくなってしまった。


あの日は本当に厄日だった。


そして嫌な一日も終わってそれから半年は大人しくなっていた。半年後、退院したら家にやってきて性懲りも無く感謝として高い酒を何本も送ってきた。


もうバカを起こすなよ。と念を押して帰らせたが正直この時点で嫌な予感がしていた。


この時の嫌な予感は四ヵ月後に現実になってしまう。もう一度結婚したのだ。彼にとって結婚とはトラブルなのだ。


彼の結婚は私にとってもトラブルである。何か起きる度に私を巻き込む。彼の家族も、何人いたかわからない妻にも辟易しつつあった。


彼は二回目の結婚式をとりおこなったが、私は意図的に参加しなかった。忙しいと適当に嘘をついて出席しなかった。彼の結婚をこれっぽちも祝福していなかった。


今回の女の名前は篤子あつこだった。


もう気づいたかもしれないが、彼は決して璃子や篤子との馴れ初めを教えてくれないのだ。つまり綺麗な出会い方をしていないと言うことだ。


 しばらくは何も起きなかったから円満に夫婦生活が進んでいるのかと思っていた。


この時点で既に私たちは三十歳後半に差し掛かっていた。四十前で三回も結婚して離婚している人はそうそういないだろう。


これが最後の結婚であってほしいと切に願っていた。


悲しい知らせが来るのはそれから三年後のことだった。


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