“このまえとこれから”
4か月ぶりですね。
時の流れというのは早いものです。
ホントにごめんなさい。
俺には目標があった。迫害を続け被害者面をし続けている人を殺し、魔族が安心して暮らせる国を作ることだ。
所詮、人は脆くザコい。俺ら魔族が協力し、国を堕とす作戦を練れば俺たち魔族の国が作れると思った。
だから、俺は魔族を統べる「魔王」となり力の強いヤツ、頭がキレるヤツ、統制することが上手いヤツ。まぁ戦うことと国を統べることに重きを置いた人選をしてきた。
だからこそ、今目の前で起こっていることは理解したくないしできないんだろう。
「───なんだ?そんな信じられないみたいな顔して。まるで、いてはいけないヤツがいるみたいな?(笑)」
これまでも、よく見たニヤケ面をしている天敵がいることが。
少し予定外が起こり、俺と側近だけが数十分定期会議遅れた。ほんの数十分のはずだ······なのになぜ、俺の部下は床に血を流して転がっている?
「おい······おっさん。これは何の冗談だ?なんでテメェがこの場所にいて部下を殺してるッ!」
「ハッ。言う義理はねぇよ!」
「───お前はホントに邪魔だッ!クソ英雄ッ!!」
なんでよりによってこのタイミングでッ!コイツが来るんだ!?
まぁそういう反応するよな。会議する場所なんて極秘中の極秘だし、俺が知ってるのはコイツ視点では分からないだろう。
······ただ原作知識で知ってるってだけだけどな。だが、そんなことが分かるはずのないコイツは何でこの場所が分かってるのか理解できないだろう。少し可哀想ではあるが容赦はしない。
コイツら全員ぶっ殺すか、戦闘不能にしとかないと魔導士か勇者が死ぬことになるのは変わらない。
───あんまり殺したくはないけどな
俺は魔族は嫌いだが、コイツは話しが通じるっていうことが分かってるし、前世においてマテリアルでキャラ設定を追うほど好きだった。
······コイツ、今にも死にかけですよみたいな顔して、必死に魔族が安心して生きられる世界作ろうとしてんだよなぁ···
その情熱•頑張り•思想は立派なものだが、そもそも生かそうとしてるのが魔族なのがヤバい。
魔族ってのは控えめに言って大体がカスだしゴミだ。悪いヤツは他の魔族のことすらどうでもよく自分が楽しければそれで良いって感じのヤツらだ。···たまに自分の子どもや家族を気にかけてるヤツらもいるにはいるが、そんなヤツらは希少だ。
そんななか、コイツはイカれすぎている。自分の周りに国を強くするのに長けたヤツらを自ら選び、力が全てであった魔族の世界に革命を起こした。
「魔族が安心して生きられる世界を作る」という一つの信念を持ち、それに向けて最大限努力していること。それのなかでめっっっちゃ苦労しているという設定を知っているファンは、かなりこの「魔王」を好きになる人が多く、俺もその1人であった。
───だが、人間側に転生した俺からすると「何めんどくさいことしてんだッ!!!」ってなるんだよなぁ···
だって普通に考えてあり得ないだろ!何加護を貰ったばっかの勇者に対してゴリゴリの幹部送り込んでだよ···用意周到すぎるだろ···もっと慢心しろって······
「··················もっと慢心しろって」
「あ?慢心なんてする訳ねぇだろ?(笑)」
声出てたっぽい?
「ただの小娘に対しては慢心じゃなく余裕を見せるがなぁ、テメェだけは話が違ぇ。···俺は人類に絶望して欲しいのに、テメェが人類の希望として君臨してるから、アイツらゴミどもは絶望しねぇ。どれだけ強い敵、災害が来たとしても"英雄が何とかしてくれる"って甘い考えを持ってる」
「持ってて何が悪いんだ?(笑)絶望しながら生きるのより百倍マシだろ?(笑)」
「相変わらず腹立つにやけ面してんな。···テメェが英雄である限り、その顔を見続けることになるよな」
「ハッ!当たり前のこと言うなって(笑)。俺とオマエはどっちかが死ぬまで終わらねぇだろ」
「···そうだな···ここでお前を殺すのが1番手っ取り早いな。おっさん結構消耗してるのバレバレだぞ(笑)」
「さぁ?何のことだ?(笑)」
コイツ部下殺されてんのにバカ冷静すぎだろ。···確かに、魔王よりも2段階くらい弱い幹部たちの相手をしてMPもだいぶ使ったし、HPも削れてる。
普通に戦って五分五分のコイツと今戦って勝てるわけはない。
俺の目標は勝つことじゃないからいいけど···普通に削りきれるのかは心配だなぁ······
―――― ―――― ―――― ―――― ―――― ――――
「───あなたが今から神の加護を受けた勇者になりました。······勇者様?どうかされましたか?」
「は?···い、や······なん···で?」
「?」
私は神の加護がなくなって死んだはずじゃ?───いや、加護がなくなったら、イコール死ぬではないんだ。
···というか加護に量があるのおかしくない??どう考えても、魔王とか倒すのに全然足りてなくない??まだまだ何も進んでないんですけどぉぉぉおお!!!
「勇者ッ!!無事か!?」
「···無事だよロr···魔導士さん」
「···?何だ。意外と落ち着いているじゃないか。
アイツも間違えるときあるんだな」
「アイツ?···それって、もしかして英雄サン?」
「···あぁそうだ。だがよく分かったな」
「まぁ···ね。というか魔導士さんは何でここに?」
「魔力の波動を感じたからだ。勇者、お前のな」
「───ということは?」
「ふっ、この私がここに来た理由は1つだ。お前の魔力の指導をするためだ。···一応聞くが文句はあるか?」
「ある訳ないでしょ。お願いします!師匠!!」
「···やけに飲み込み早いが、まぁいいだろう。厳しくいくからな」
「うんっ!」
「···敬語はないのか?」
「ないっ!」
「···はぁ···まぁいいか。よろしく頼むぞ、勇者」
「こちらこそよろしく!師匠!」
「ほぉ···結構扱えるじゃないか。まるで1回目じゃないみたいだな」
「ギクッ···ま、まぁね···いやぁーーこれも勇者の才能ってことでッ!!」
「···?魔力を扱えることに越したことはないが、少々身体が弱いな。一般の村娘よりはあるみたいだが、何かやっていたのか?」
「───いや別に。何もしてないよ。ただ体動かすのが好きなだけ」
「そうか。だが、まだまだ身体が弱い。せっかくの魔力がそれでは10分の1すらまともに使えないぞ」
「えっ?···ちょっと待って待って!今ってそんだけしか使えてないの?!」
「あぁ。私と同等かそれ以上の魔力自体は持っているが基盤が雑魚すぎて、そのくらいしか使うことができていないな。それ以上使うと魔法を発動させる前に体が破裂して無様に死ぬな」
「···マジか···」
「マジに決まってんだろ。それに初級しか覚えてないから、威力ゴミカスだし」
「···《small》相変わらず《/small》一言多いんだよね。でもホントにそうだよね···ねぇ師匠ぉ、何とかならない?」
「体に関してはどうともならんこともないな。例えば、身体強化のバフをかけることが最善だろうな。···魔力消費エグいが、お前の魔力量なら大丈夫だ。」
「自分の体に身体強化のバフかけながら魔法とか加護とかぶっ放すの?···体死なないそれ?」
「まぁ大丈夫だろう。加護と魔法の組み合わせ次第なところも多少はあるだろうが···」
「怖いけど、体の面はいけそうだね。···じゃあいりょくが弱い問題はー?」
「それもあとで教えてやろう。中•上級くらいなら余裕だろうからな」
「師匠ぉ、お願いします」
「任しておけ。体力と魔力の回復用ポーションは死ぬほどあるし、なんなら疲れるから気にするな。だからな···」
「だから···何?」
「死ぬギリギリまで魔力使っては回復し、使っては回復し、を繰り返すぞ。とりあえず、上級のバリアをぶっ壊せるまで終わらせないから覚悟しろよ」
「この人やっぱ鬼畜だー!!」
「···私が思っていたよりも早く適応したな。というか、お前初めてじゃないな」
「えっ?···な、なんの話し??」
「魔力制御がうまいというより慣れている。まるで···習ったことのあるような···そんなキナ臭さがする」
「······それは·····」
(「さすが」としか言いようのない師匠だと思う。···普通に言うしかないのは分かってるけど、緊張するってッ!!誰にも言っちゃダメとかあるんじゃないかとか考えちゃうけど、この人とは、絶対長い間いっしょだから言っといた方が楽なんだよね···どう考えても···)
「···師匠はさ···」
「───あー教えたのは私か?」
「えっ??···ぃや、んーと、そう···だけどさ···なんで分かったの?」
「分かるに決まってるだろ。私が教える制御の仕方でやってるんだからな···」
「マジか···」
「そういえば···勇者」
「んー?何ー?」
「死んだとき、どう思った?」
「······そうだなぁ···」
前のときも聞かれたよね?···でも前のときより楽しくなさそうな感じ?
「───別にどうも思ってないよ。死んだとしても生き返れるし、加護無くなったとしてもここに返ってこれる。···まぁ痛いのと苦しいのは変わんないけど······だけど、今の私じゃ何も足りてないから何度だって死んでやり直さないと···」
「──ほぉーう。なかなか見えてるな。なら特別に、これをくれてやろう」
「···何これ?ノート?」
「あぁ。世界に1つしかないお前宛のノートだ。差し出し人は···まぁいいだろう。どうせ書いてあるし」
「はぁ···」
《center》勇者へ《/center》
これを読んでるとき俺は死んでいるし、勇者。君も1回以上死んでループしているはずだ。そうじゃなかったら、目の前の魔導士を恨んでくれ。···まぁあの人に限ってそんなことはないと思うが···
話しがそれたな。···あぁそうだ。目の前の魔導士は今や君の《b》唯一《/b》と言っていい信頼できる仲間だ。大事にしてくれ。神なんかよりも、よっぽど信頼できる。···君も1回以上死んでいるから分かっていると思うが、《big》世界は、神は、君に全く優しくない《/big》。
揺るぎない事実だ。諦めるしかない···君の加護が切れたり、多分戦っていないが高位魔族に殺されてても加護が奪われたりするから気をつけてくれ。加護の効き目が悪くなったら無くなるサインだ。こういうのがあるから、加護だけで高位魔族と戦うことは避けてくれ。···絶対死ぬから。
君はこれから何回でも死ぬことになるし、そうなると当然世界をやり直すことになる。素晴らしい神のおかけで。
そのなかで君は「勇者」であることを辞めてはならない。とても難しいことではあるが、仕方がない。君は選ばれてしまったのだから。
勇者であることを辞めてしまっても、結局君が勇者であることは変わらないし、世界はそれを強制してくる。
それがこの世界に定められていることだ。諦めてくれ。
だが、君には非常に心強い味方がいるだろう?スパルタで冷たそうな魔導士が。
彼女を存分に頼れ。君が彼女の教えを完璧に習得することができれば、きっと魔王を殺せる。
とりあえず私は魔王と幹部を殺せるだけ殺す。あとは勇者、君に任せた。
ゴミとカスばかりの世界だとしても、汚いところしか見えなくても、君は世界を救うしかないんだ。
では頑張ってくれ。君の幸運祈ってる。
「···やけに精力的に取り組むじゃないか。それほど英雄サマのノートがお前を変えるものだったか?」
「···まぁね。無駄な時間はないってことに気付かされたから、今は努力するしかないの!!」
「そうか。だが、色々すっ飛ばすことはできないんだ。まずは初級魔法死ぬほど放て。話はそこからだろう」
「そうなんだけどッ!消費魔力少ない魔法なのに、なんでこんなに疲れるの!?威力も弱いし···」
「必要以上の魔力使ってるからに決まってんだろ。何事もバランスだ。今のお前はいらん魔力を入れてるせいでバランスがおかしくなって、威力がクソ雑魚になってるのさ」
「対処法は??」
「体で覚える。以上。お前は魔力量が大きいから制御が難しいかもな。···まぁ頑張れ」
「もうちょい丁寧に教えてよぉー!!」
「甘ったれんな。合格か不合格かは判定してやるから安心しろ」
「···何も安心できないんだけど···」
〜6時間後〜
「───これはこのくらいじゃない?」
「あぁ。───なんだ。結構早くに初級終わったな。最低限勇者の素質はあるということだな」
「師匠の判定がまともなら、もっともっと早くに終わってたけどねぇ〜!」
「そう言うな。基礎を完璧に出来ていないと、どこかで死ぬことになる。これから先高位魔法を扱うなら尚更な。基本ですらブレてしまっていたら、高位魔法なんて扱えない。」
「まぁそうなんだけど···そういえば気になるんだけど私の魔力ってあとどのくらい残ってるの?結構体ダルいんだけど···」
「お前は小石を持ち続けろと言われたら筋力的にいつまで持てる?」
「えっ?···んーと···ずっと?」
「そういうことだ。始めの無駄な魔力を除けば、小石を持つ程度の魔力消費になる。今は基盤となる体がクソ雑魚だから疲れを感じてるだけで魔量に関してはまだまだまだ余裕だ。心配するな」
「えっ?その程度の魔力消費なんだ!なら大人ってゆうかみんな魔法使えないの?」
「あくまでもお前の魔力量が文字通り桁が違うだけだ。私やお前と一般人では違いすぎるし、普通の魔導士ですらお前からすれば一般人との違いが分からないレベルの魔力量だ。それを忘れるなよ」
〜12時間後〜
「…勇者お前、もしかして不器用か?」
「そうだけどッ!!何か?!」
「…いや。初級の魔力制御ができているなら、中級は魔力量に気をつければ本来ならすぐ慣れるはずなんだが…」
「真ん中の魔力量ムズすぎだってッ!!」
「中級は真ん中ではないが…まぁお前ほどの魔力量なら初級と中級の差を制御するのは難しいのは理解できるがあまりにも下手すぎるな」
「まじめに解説しないで!自分の不器用さが恥ずかしくなるから!」
「そうか……なら私は寝てるから。魔力切れたら適当にポーション飲んでやっといてくれ」
「えっ??師匠!?師匠ぉー!!!」