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【森の哲学者】たそがれ!木林春夫 #画材店でお買物の巻

作者: 薫 サバタイス

木林春夫という伝説の男を知っていますか❓


たぶん誰も知らないと思います。


私もよく知りません。


はっきりしているのは、木林春夫が伝説の男だということだけ。


ですが「伝説」となっているからには、何かしら根拠となるエピソードがあるはずです。


これからお話しする出来事が、木林春夫をして、伝説の男たらしめたかどうかはわかりません。


判断は皆さんにおまかせします。


では、聞いてください。






【#画材店でお買物の巻】


ある午後のことです。


木林春夫さんは、新宿へ向かっていました。


その日は緊急事態宣言が解除されて5日目。


画材店でキャンバスを買うためでした。


学生の頃に絵画をたしなむようになった木林春夫さんは、暇を見つけてはせっせと花の絵などを描いていたのです。


自粛期間中、空いた時間の多くが、絵を描くことに費やされました。


そのため、真新しいキャンバスが1枚もなかったのです。


ネットで買うという方法も、もちろんあります。


でも木林春夫さんは、自分の目で見ていないもの、自分の手で触って確かめていないものに、何千円も払うのは不安だったのです。


その慎重さは、吉と出ました。


新宿の画材店には、希望どおりの、荒目キャンバスが売られていました。


木林春夫さんの創作意欲を、これまでにないほど刺激しそうでしたし、値段も、思ったより安かったのです。


気分が高揚した木林春夫さんは、画材店を探検することにしました。


読者のみなさんの中には、木林春夫さんのこの行動を不思議に思う人もいるかもしれません。


こういうことです。


お目当ての品を買う楽しみを後にとっておいて、未知の画材を探す旅に出ようというわけです。


木林春夫さんは目を輝かせて、筆だの絵の具だのイーゼルだのを見て回りました。


それはずいぶん楽しい旅でした。


でも、気づくと、閉店時間の20時になっていました。


木林春夫さんはあわてて売場へ戻ります。


お目当ての品は、まだもとの場所で売られていました。


ホッとしてレジへ持っていくと、店員さんが困った顔をして、店長さんを呼びました。


木林春夫さんは優しそうな店長さんから、大変申し訳ないが、閉店時間を15分も過ぎている、したがってレジはもう閉めた、本来ならば、翌日以降にもう一回、来店していただくしかないのだが、今回は特別に明日の会計ということで処理させてもらおうと思う、それなら今日購入できるがどうだろう、という提案を受けました。


木林春夫さんはいたく感動し、こちらに落ち度があったことだし、店長さんのやり方でまったく問題ない、明日の会計でも明後日の会計でも好きにしていい、今日このキャンバスを持って帰れればそれで十分だ、本当に感謝する、今日のことは一生忘れない、もし私が金持ちなら、この店の商品を全部買い取りたいぐらいだが、残念ながら金持ちではないのでそれは難しい、という話をしました。


その時点で、時刻は21時を回っていました。


お店を出ると、辺りはもう真っ暗でしたが、木林春夫さんの胸の中は、すがすがしい晴天でした。


なぜなら木林春夫さんが感謝の言葉を述べている間、店長はちょくちょく腕時計を見ていました。


その行動から、木林春夫さんはこう考えたのです。


つまり、店長さんが時間を大事にする、優秀な人物だということ。


そういう人が店長をしているお店で買った画材は、さぞやしっかりしているだろうと言うこと。


そういうお店で買う決断をしたのは、ほかでもない木林春夫さん自身だということ。


以上のことが、はっきりわかったからでした。



   ↓↓↓↓↓

教訓☞店長さん、お疲れさまです。


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