婚約破棄……構いませんけれど?
昔、一度削除した作品のあげなおしです。
当時読んでくださったかた、ありがとうございます!
「リテルシア、婚約を破棄してほしい」
婚約者は、そういって頭を下げました。
私は、リテルシア・メイノーデ・グレイス。
グレイス国第一王女にして、妖精からの祝福がなかった、役立たずのお荷物姫……そう呼ばれています。
が。これはどういうことでしょう?
困惑しつつも、薄々まぁ、そうなりますよね……と思っていた、私は、溜息をついて、目の前の婚約者を見つめます。
婚約破棄……ですか。別に構いませんが。
目の前の婚約者の事は、別に好きでもなんでもありませんから。でも一応、聞いておきましょう。
王族の経歴に傷をつけたくらいなのですから。
すごく大事なのでしょうね?
「理由をお伺いしても?」
「真実の愛を見つけたんだ……」
は?
シンジツノアイ……ですか。
何言ってらっしゃるのかしら。ようするに浮気……ですか。
馬鹿らし過ぎててここ数年全く仕事していなかった表情筋が、仕事を再開いたしましたよ?
こいつを前にして口角が上がるのなんて初めてです。
「お相手は?」
王女である私を捨ててまで、婚約したいというのなら、名前くらい聞きたいですね。
「……ミリイアだ」
同じ王女の上、義理の妹ですか……。
私は、側室の娘ですが、ミリイアは王妃様の娘。
第二王女といえど、王位継承権一位です。
そしてミリイアは、ほとんど生まれない妖精の愛し子。
「……公爵やお父様はどういっていらっしゃるの?」
「父は、妖精の愛し子であるミリイアと思いあっているならしょうがない。 陛下は好きにしろ、と」
馬鹿ですわね。
妖精の愛し子は、確かに滅多に生まれませんが。
だからと言って第一王女である私を蔑ろにするなど。
思わず顔をしかめた私の耳に聞き慣れた子供のもののように甲高い声が聞こえてきます。
『ねぇ! ルシアー! コレ、ないないしていいー?』
……だめですよ、ルプシー。
玩具を片付けては。私はまだ、遊び足りません。
どうやら、彼女達も怒ってくれていますし、私も我慢の限界です。
「ま、確かにそれなら祝福がないとされる私が婚約破棄されてもしょうがありませんね……?」
婚約者にニコリと笑いかけます。
「よろしくってよ。その婚約破棄、お受けします」
そういうと、私は婚約者……いいえ、元・婚約者を追い出しました。
それにしても。
この国の者達は、本当に馬鹿なのですね。
妖精の愛し子。
その肩書きの効果は、確かに、凄まじいです。
妖精の愛し子というだけで、平民でも王妃になれます。
……ですがね。妖精の愛し子だけいても、妖精がいなければ、意味がないんですよ?
この国では、妖精が神のように崇められています。そして、その妖精は精霊を崇めています。
どういうことかと言いますと、まぁ、つまり。
『精霊の愛し子』である私を捨てたこの国は、もう終わりです。
今日中にあと1話更新予定です。