いざ曹霊寺へ
「レイさ~、曹霊寺行ったら俺達が何故こんな霊力あるか分かるんじゃね?」
アラタがボソリと言った言葉。
何で今まで思い付かなかったんだろう。
病室での何気ない会話は、戦いの日々の話
より圧倒的に修行時代のネタが多く、それが
また何よりも馬鹿らしくて面白かった。
そうだ、曹霊寺に行けばもしかしたら
破魔矢の秘密や空間の割れ目の事が
分かるかも知れない。
俺は本部の許可を貰い曹霊寺にヒントを求めて
やってきた。
この寺は霊能者の精神や異能な物や者、
もちろん、霊に関しての知識や人の亡き後の
世界まで、この寺独自の教えを霊務課で働いて
いる者は例外なく学んでおり、どちらかと言うな
ら密教でもある。
「陽華さん、お久しぶりですっ」
レイが挨拶しようとした瞬間に先を越すルナ。
「ちゅーかなんでお前がいるの?」
「そんなの当たり前じゃないですか~、レイさん人の話、基本聞かねーし」
「ほう」そうきたか。
「それにもしかしたら私も破魔矢具現化出来るかもだしねっ」
「そ、そうね」
心の中でお願いだからお前帰れと何度も呟いた。
切り出しのタイミングを失ったのをすぐ察知
したのか、陽華さんが「とりあえずお茶でも出す
から」と落ち着かせてくれる。
陽華さんはこの寺の住職であり、裏の世界では
世界的な予言者とも謳われてる人物でもある。
レイも過去に陽華からガラス越しにレイの背中に
見えた、レイの兄弟とも言える幼少期に共に過ご
した猫ののんべえの特徴をきめ細かく伝え
られて、レイがあまりに驚いて尻餅ついて縁側か
ら落ちたというエピソードがあり、今も
「あの櫻井レイですら…」と霊務官修行生に
なんかある度ネタにされてる事を今日初めて
修行生のヒソヒソ話から知ってしまい、寺に
いる修行生の目が真面に見れなくなっている。
普段は人の良さそうなおばさんなのに…
やってくれますわ、ハァ
「…で、今日来たのはですね先ず…」
「破魔矢についてね」とすぐ見透かされ、
「白い羽の…」と言えば、「あ~堕天使よね」
ハイ。
この人みんなテレパシーでいんじゃね?
「最初に言いますが、ここには関連ありそうな
文献はありません」
残念。レイとルナの顔にハッキリ分かり易く出てる
「ですが…世界的に観れば【神】や【悪魔】
はどの国のどの宗教でも存在します」
「で、
ここからは私個人の予想です」
「破魔矢を具現化出来る人間は…
前世、又は遺伝子に【神】又は【悪魔】が
関連してるのではないかと思ってます」
レイの目が見開く。確かにそれなら
「神が創った武器」の法則は成り立つ。
「そしてもう一つの白い羽を持つ魔神」
「もしかしたら大魔王とか大天使とかが覚醒
しようとしてるのかも知れません」
レイとルナはもう絶句するしかなかった。
陽華さんレベルが言う事だと重みが違う。
自分は人間なのか?
この話はアラタさんやケンヤには言えねえや。
「ルナ、悪い。帰り運転頼むわ」
「陽華さん、ありがとうございました」
俺達は聞いてはいけない事を聞いてしまったのか
も知れない。
「ルナ、もしまぢで魔王出たら俺達廃業だな」
無理矢理笑うのがレイには精一杯だった。