静寂
アラタの敗北はすぐに様々な国家機密にまで行き届いた。
悪霊事例解決方法において、この男の存在は
絶対であり、この男が生きてる間は現職の
官僚達もそっちの案件はまず問題無いだろうと
皆思っていた。
「で、アラタは堕天使にやられたと?」
「誰も天使なんて見た事ないのにわからんよ」
「アラタの後任はどうするんだ?」
実はこの世で知られてないだけで、霊による
事件は少なくない。
レイもアラタの安否を気にしつつも仕事を
丸投げってわけには行かず、ケンヤと分業しながら
関東地区の細かい事件を解決してたが、
アラタのリタイアと同時に行者が現れなくなり、
仕事はそこまで忙しくはなくなっていた。
「俺としても都心に居れる方がアラタさんの近くに居れるから助かる」
「俺もレイさんに稽古つけてもらえるしありがたい」
「お前はもう一人前だ笑、すぐ俺のとこくんな」
実際、ケンヤの実績は誰もが認める物であり、
アラタの後任代行候補に名が挙がる程の域に
充分届いてた。
「レイさん、レイさんっ」
東京本部で事件簿をチェックしてる時に
突然マキが泣きだした。
「私があんな余裕見せてたからアラタさんが…」
いや、この国のこの案件であの人以上は…
レイはマキに掛ける言葉も見つからない。
レイが知ってる情報。今現在はしばらく堕天使は現れないと言う事。
アラタさんに堕天使が去り際に言ったそれだけだ。
出来るだけレイの負担を減らそうとケンヤが
頑張ってくれてるために、レイはアラタに
会いに行く機会を多くもらう事が出来た。
そして、片手を失ったアラタは相変わらず元気だ。
「天使ってよ、そもそも外国の文化じゃね?」
「なぁ、レイもそう思わね?」
本当に陽気だ。
本当に最近まで死にかけてた人間とは思えない。
出来ればもう堕天使様は来ないで欲しいと
思う自分と敵討ちをしたい自分がいる。
しかし、アラタの話の限りでは勝つのはまず無理なのは分かってる。
ふと気付く。
破魔矢は自分の霊力を具現化した武器。
でもそれは異世界が生んだ産物?
自力?他力?そもそも破魔矢って何だ?
時間あるって余計な事考えて面倒くさい。
……
もしかして…堕天使の戻った割れ目の向こうでなら…ダメージ与えられるのかも…