死人の鎌を持つ男
話は少し前に戻る。
「アラタさん、D地区に強い霊障反応、現場へ迎えますか?」
「OKよん、マキちゃん」
「D地区って事は水死体かぁ」
「私、怖がりなんですよ、これでも」
「やめてくださいよ~」
気楽なのも無理はない。今、向かってるのは
日本ではその世界ではトップと言われてる男。
「マキちゃん、着いたぜー」
邪気が強い。が、アラタが警戒する程ではない。
「ほう」
「これは期待出来る素材が釣れたようだ」
アラタは少し驚く。普通に話す行者もそうだが
その気配に声掛けられるまで気付かなかった
事も大きい。
「何者だ、お前…行者じゃないな?」
アラタが武器を具現化する。
その破魔矢は破魔矢と言うより巨大な鎌の
ような姿をしている。
「これなぁ~みんなに死人の鎌って言われてるんだぜ、お前、知ってる?」
行者の顔は相変わらず笑顔のままだ。
「いくぜ」
アラタが右手を上げると鎌は手の上で回りだし、
回転しながら行者に襲いかかる。
行者の体は簡単に二つに分かれる。
「中々の切れ味…しかも我を刻み切るパワー」
「だから~お前はなんなんだよ」
アラタも今の手応えに違和感をすぐ感じる。
「では…私からも」
行者の姿をしたなにかは切れた胴体も気にせず
背中から出てきた何かから大量の白い物を
飛ばしてきた。
アラタも鎌を前方で回転させてそれを捌く。
何か全てがおかしい。
行者が放った物は白い羽。しかも一度に500本
は放ってるのではないだろうか。
「うっ」
アラタが確実に捌いたと思われる羽の数本が
アラタの背中に刺さってる。
しかも…この羽…人の血を吸い込んでるようだ。
「やべぇな、なんだよ、こいつ」
不敵な笑みを見せる行者。胴体を切っても召さない。
そもそも…破魔矢自体に霊を浄化させる能力が
あるので、普通なら先手を取ったアラタの勝ち
なのだが、このチートななにかにはその破魔矢が
効かない。
「じゃあ、これならどうだ?」
アラタの鎌の首が真っ直ぐになり、一本の
巨大な破魔矢と化した。
「これ、放つの何十年ぶりだ…よ」
アラタの血色が良くない。
背中に刺さってる羽はもう全てが真っ赤に染まってる。
「行けっ、死人のドリルーーーっ!」
巨大な槍と化したアラタの鎌は見事行者の体中を
粉々に砕いた!