闇からの挑戦状
【その組織の名は霊務課】
「レイさん、レイさんっ」
「聞こえてるよ、なんだ?」
「例の行者がまた現れたとの事。現場の住所は……」
「またあのお坊さんか」
「仕方ねーな……分かった、すぐ向かう」
最近になって突如現れるようになった俺達の名付けた
(行者)とはお坊様の風体をした霊。
行者現れる場所には地縛霊が潜んでるのだが、
普段は波長の合う人間だけに粘着するだけの
地縛霊が行者の発する独自の経により、普段はない
凶暴性を出し様々な事件の原因をおこす事件が多発
している。
霊務課とは表向きには知られていない特殊部隊の
一つであり、まぁ名前から想像出来るとは思うが
幽霊と人々が呼んでいる別次元の者専門に活動する
部隊であり、活動内容は主に「悪霊退治」である。
「レイさん、遅いっすよ」
「んだよ、文句あるならお前やれよ」
レイは先に到着し現場の監視をしてるルナにわざと
出来ない事を言って皮肉った。
霊務課を簡単に説明すると、
「霊が見える者」「霊と話せる者」 そして
「霊を斬れる者」で構成されていて、レイのいる
北関東県で霊を斬れる者は今の所レイしかいない。
「出てきた……」
行者の経は霊感ある者にしか聞こえないが
その禍禍しい経は聞こえる人間にはとても不気味
であり、どの国の語源とも違う異世界の言葉である。
「オイ、胴体どこやったんだ?」
地縛霊はどうやらこの交差点で派手に引かれた
ようで下半身が無く、切れ目から内臓をひきずり
ながら両腕の力だけで歩き出す。
「レイさんっ!」
ルナが叫ぶ。
一瞬の内にレイの背後に回る行者。
しかし、レイの武器が瞬時に行者をロックし
クロス状にぶった切る。
禍禍しい経と共に消えていく行者。
そして行者が消えると地縛霊も消えていく。
「ありがとう」
自分の全てを思い出し、その上で消えていくの
かは誰にも分からない。が、人々に襲いかかる前に
消える事が出来た事は多分……理解したのだろう。
「レイさんの破魔矢は相変わらず凄い……」
ルナには到底出来ない悪霊を唯一倒せる武器。
それが破魔矢と呼ばれる異世界の武器である。
【破魔矢】
その形状は各都市の霊務部長ごとにかなりのばらつき
があり、中には巨大なナタのような形の破魔矢を
持つ者もいる。
レイの破魔矢は比較的破魔矢っぽい形状をしてるが、
見える者の第一印象は日本刀と矢を合わせて割った
ような形で、矢尻には白鳥の羽が付いてる。
しかもそれが二刀。双竜のレイと霊務課では呼ばれてる。
「ルナ~、腹減ったな」
「は? レイさんはあれ見た後に何の食欲湧くんです?」
「そんな事言ったって減るんだからしかたないじゃん」
「ルルル……はい、一条です」
「レイさん……なんか都内がキテルみたいですよ?」
「都内~? どこよ? ケンヤのとこか?」
「ケンヤさんもアラタさんの所へ向かってます」
「え? アラタさんのとこ? アラタさんが?」
「俺の車で行く。ルナの車は課に回収させとけ」
レイは一言言うと関越自動車道へと走り出した。
アラタさんはレイの尊敬する数少ない霊務の達人だ。
ケンヤは逆にレイの事を尊敬している。
アラタさんが苦戦? レイにはあり得ないと
思うと同時にいやな予感が交差する。
行者は地縛霊を起こす兵隊みたいな存在。
もし……全く別な何かが現れたら……
「レイさんっ聞いてる??」
レイはアラタさんの武勇伝を聞いて育った。
若い頃から強い霊感があったレイはかなり
早い段階から特殊訓練生として少年期を過ごした。
その時、嫌と言う程聞いた名前がアラタであり、
その時の後輩がケンヤである。
「レイっレイさんっ!?」
ルナ、五月蠅すぎる。俺は大丈夫だっちゅうの。
【アラタ】
日本の首都を任されてる男の霊感はもはや超能力
みたいな凄まじさで、あまりの霊力に
【アラタ】が東京にいるだけで、日本は安全と
勘違いしてもおかしくない空気すらあった。
敢えて言うなら歳はもうそれなりって事くらい。
破魔矢は死神の鎌のような形状をしており、
変幻自在に伸びる柄や、突然それを投げたりする
アラタの破魔矢捌きは本当に凄かった。
「レイさんっ目的地まで後40分程です!」
「ケンヤさんももうすぐ着きます!」
「ケンヤに電話して、着いたら状況を教えるように言え」
「はいっ」
少し苛ついてる自分がいる。
そして……ケンヤがアラタと合流する……
【死を司る神】
ケンヤは言葉を失っていた。
アラタが立ったまま動かない。
そして敵らしき者が見当たらない。
「アラタさーーんっ」
駆け寄るケンヤ。同時に崩れ落ちるアラタ。
「あれは行者ではない。何かが化けてる」
「何にしても今、その化け物は居ない、すぐアラタさんは病院に」
ケンヤも動揺してる。アラタには無数の赤く血を吸った
白鳥の羽が無数に刺さってる。
そのタイミングで電話に出ないケンヤに切れ気味
のレイが到着。