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フローリア公爵家

※今回は末っ子(※主人公)視点でお送りします※

※誤字修正済みです<(_ _)>


〈SIDE・末っ子〉


―――次男・ルシウス兄さんと末っ子の俺を乗せた辺境伯家の馬車は、無事に人間の領域に入る。そして令嬢の待つ王都へと入った。


「やっぱり王都って、ひとがいっぱいいるんだ」


「そうだねぇ。セシナは初めて来るんだったね」


「うん、まぁ」

兄たちは何かと来ることもあるのだろう。特に次男のルシウス兄さんは剣豪だし仕事で魔物の討伐なんかもしているし活動範囲は広そうだ。


「あ、セシナ。見て、あそこ」

ルシウス兄さんが馬車の窓の外を示す。


「なに?」

俺も窓の外を見やれば・・・


「あの子!ハーパンッ!めっちゃハーパンが似合ってるショタっ子!!しかもかわいい!うへへ」

とりま変態丸出しなルシウス兄さんの頭をぺしゃりとやっておく。


「ぐへっ」


暫くすると明らかに高級そうな屋敷が立ち並ぶ区画に入る。


「ここが貴族街だね。例のご令嬢が暮らしているのは公爵家だから城に近い場所にあるよ」


「城かぁ・・・」

きっとどでかいんだろうな。吸血鬼の王族の城もでかかったけど。


「ほら、ついたみたい」

馬車が止まる。


「あぁ、うん」

ルシウス兄さんが俺のスーツの細かいところを整えてくれる。こういうところはちゃんとしたお兄ちゃんらしい部分である。


「お兄ちゃんは大丈夫かな?」

まぁ、ルシウス兄さんの身なりは完璧だけど。一応にやけそうな口角を指でぐぐっと固定しておく。


「え?セシナ何してるの?」


「変態予防」


「うえぇ~?」


馬車の扉が開かれれば、ルシウス兄さんに手を引かれながら馬車を降りて先方の公爵家の歓迎を受ける。早速公爵夫妻と思われる男女が出迎えてくれた。


まずは、少し癖のある藍色の髪の前髪を真ん中分けにしておりブルーサファイアの鋭い双眸の男性が公爵かな?。事前の情報では公爵なのに近衛騎士団長をしていると言う通り、体つきはかなりしっかりしている。


「ようこそお越しくださいました。フローリア公爵家当主・エルドと申します」

やっぱりそうか。


「フローリア公爵夫人のエステルです」

続いて名乗ってくれたのは、ほんわかしていそうなイメージの女性。淡い金色の髪はセミロングでエメラルドグリーンの瞳を持っている。確か魔法師団に所属している魔法使いだとか。公爵に比べるとかなり小柄に見える。


「ローゼンクロス辺境伯家の次男・ルシウスと申します」

無駄にキラキラしている兄の微笑に・・・


『はうわぁっ!』

堅物そうな公爵も一緒に夫人、周りの使用人たちと息を呑んでいた。


「ローゼンクロス辺境伯家の末っ子・セシナです」

俺はさらっと挨拶するが、みんな目線がルシウス兄さんに釘付けである。まぁ、こうなることは予測済みではあるけれど。


「それで、公爵閣下?」


「あ、あぁっ!」

ルシウス兄さんに呼ばれてハッとした公爵が早速屋敷の中に招いてくれる。客間と思われる部屋には3人の男女が待っていた。


ひとりは背が高く、藍色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ青年。顔だちはなかなか整っていてキレイな顔だ。


その隣にいるのはアッシュブルーのセミロングより少し長めの髪にブルーサファイアの瞳のかわいらしい少女。何だか目がしっかりと合った気がする?


そしてその隣にいた金髪にエメラルドグリーンの瞳の少女が前に出てくる。


「あぁっ!あなたが私の旦那さまなのね!ひと目でわかりましたぁっ!」

え・・・?突然のことに周囲も俺もぽかんとしていた。そして両手を胸の前で組み、少女はルシウス兄さんの前に立ちキラキラとした目で見上げていた。


「どうぞ私をお連れになって?」

そう言って少女がルシウス兄さんに手を差し出すが、ルシウス兄さんはにっこり微笑んで公爵を見やる。


「公爵閣下。この無礼な下女は何ですか?」

下女と来たか、ルシウス兄さんよ。どうやらハーパンショタっ子至上主義のルシウス兄さんの中では最低ランクに認定されたらしい。

そのルシウス兄さんの言葉に公爵がハッとなり慌ててその少女をとり押さえる。


「ソフィアンナ!お前、何と言う失礼を!」

そして公爵に続き、青年も彼女をルシウス兄さんから引き剥がす。


「やだっ!お父さまもお兄さまも何するの!?」

どうやら青年は公爵令息らしい。


「お前こそ何をやっているんだ!我が公爵家の顔に泥を塗る気か!」

何となく、あれは近衛騎士団長の顔だと感じた。

さすがにソフィアンナと呼ばれた少女も抵抗をやめてビクッと震える。


「とにかくこっちへ」

兄に手を引かれ元の位置へと連れられて行く。


「大変失礼いたしました、ルシウス殿。こちらが長男のトール、次女のフィアナ、三女の・・・ソフィアンナです」

あの青年がトールさん、あのアッシュブルーの髪の子がフィアナ嬢、あのソフィアンナと言うのは三女なのか。あれ、長女がいない?それに次男もいるらしかったのだが。まぁ、全員に会えるとも思っていなかったけれど。


それぞれ互いの紹介を終えると、案内されたソファに腰掛けた。


「それで、こちらのフィアナをローゼンクロス辺境伯家へ・・・」

そう公爵が言いかけた時、再びソフィアンナが立ち上がった。


「いいえ、お父さま。私が行きますわ!」


「はぁっ!?何を言って・・・!」

「ソフィ!座りなさい!」

公爵が呆気にとられ、慌てて隣に座るトールさんがソフィアンナを座らせる。


「いい加減にしなさい!」


「でもっ!社交界の余りものと言われているフィアナお姉さまよりも、社交界の華と名高い私の方がルシウスさまもきっとお気に召すはずよ!」

余りもの・・・?


「ソフィ!なんてことを言うんだ!」

トールさんが声を荒げるが・・・


「だってそうじゃない!お姉さまの婚約者だってお姉さまのことを見捨てたのよ!?」


「ローゼンクロス辺境伯家の方々の前で何と言うことを!」


「真実はちゃんとお伝えするべきよ!このようなお美しいルシウスさまに外れくじを引かせるようなことはできないわ!ルシウスさまだって私の方がいいですよね!?」

兄は相変わらずにこにこしながらキラキラオーラを放出させている。


「フィアナお姉さまは今まで2度も婚約破棄をされているんです!」

え・・・2度も?それを聞いたフィアナ嬢がうつむく。そんなに問題がありそうな子には見えないんだけど。むしろソフィアンナの方がちょっと・・・。


「ではソフィアンナ嬢は私にフィアナ嬢は相応しくないと?」

ルシウス兄さんが素の変態を完全に封印し、紳士らしいスマイルを向ければ、ソフィアンナがぽぅっと頬を赤らめる。


「はいっ!ルシウスさまに相応しいのはこの私です!」

そう豪語するソフィアンナにトールさんも公爵夫妻もげんなりしている。


「なら、問題ありませんね。フィアナ嬢のお相手としてあてがったのは私の弟のセシナですので」

そう言ってルシウス兄さんが俺を示せば『え、そっち!?』とみんなが口を揃える。唯一フィアナ嬢だけはただ不思議そうに俺の顔を見ていたが。


「え・・・そっちなの?ルシウスさまに比べたら・・・あ、でもカイム殿下よりはよさげかしら?」

カイム・・・殿下?確か人間の王国側の第2王子の名前では?この間の兄さんズ作のボードに写真があったな。


「フィアナの嫁ぎ先の方々だからどうしてもお会いしたいと言うから同席させたが、それがそもそもの間違いだったようだ」


「そんな、お父さま!私この方でもいいから私が嫁ぐわ!どうせお姉さまはまた婚約破棄されるのよ!それではお姉さまがかわいそうだわ!」


「トール、ソフィアンナを下がらせてくれ」


「わかりました、父上」

そう言うとトールさんが立ち上がりわめくソフィアンナを無理矢理引っ張っていく。


「いやっ!助けて!私を選んでよぉっ、ルシウスさまぁ!私みたいな美少女を娶れるなんて僥倖二度とないわよ!?ちょっとぉっ!」

いや、だからルシウス兄さんじゃないってば。あぁ、今までにもいたなぁ。この美形兄たちに懸想する残念令嬢の数々が。かつてのお隣の辺境伯家でのことを思い出した。


「た、大変なご無礼を」

「申し訳ありません」

公爵夫妻が項垂うなだれている。


「いえいえ、ウチに来てくれるのはそちらのフィアナ嬢でしょう?」

ルシウス兄さんがフィアナ嬢にキラキラオーラを向ける。だからそれやめろって!


「はい・・・私で、よければ」

フィアナ嬢は俯きながらも頷いた。う~ん、このキラキラオーラに振り向かないとはなかなかかも。


「セシナはどう?」


「まぁ、構わないけど」

さっきのソフィアンナに比べればまともそうだし。もし、あのソフィアンナを連れ帰ったら長兄は発狂、三男・ジル兄さんは瞬殺、四男・ゼン兄さんはウッキウキで解剖しそうだし。


「それでは、我々はフィアナ嬢をちょうだいしていきますので」


「よろしく、お願いします」

公爵とその夫人が何やら物々しい雰囲気でお辞儀をしていたのが気になった。まぁ、ルシウス兄さんが気にしない以上は事情を知っていそうだ。後でハーパンをちらつかせて吐かせるとして。


「どうぞ、フィアナ嬢」

俺が立ち上がり彼女に手を差し伸べれば。


「はい、セシナさま」

彼女は躊躇いなくその手を重ね、俺たちはフィアナ嬢を連れてフローリア公爵家を後にしたのだった。



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