写魂鏡 -シャコンキョウ-
まあまずは座りぃや。
兄さん、えらい落ちついとるが、今自分がどういう状況か、分かっとるんか?おお?
分かっとるならええんやがなぁ……兄さん見てると、どうもそんな気がせえへんねん。
ええか、正常な判断が出来とらんだけかも知れへんからわいが確認したる。今兄さんは、暴力団の事務所で組長、まあわいの事なんやが、一対一で話しおうとるんやで?
おう、分かっとる言うんか。
………兄さん、ホンマに理解しとるんか?この場合の話し合いが、「話し合い」だけで済むと思うとるんか?
ほうか。理解しとるんやったらええんや。その余裕がどこまで持つか、楽しみやのう。
……………。
…………………………。
………………………………………。
兄さん、ホンマにええ度胸しとるのお。
ええわ、ゆうてみい。何が欲しいんや。
鏡か。こんなボロい鏡の為に、暴力団に喧嘩売ったゆうんやな。
ほお、そこまで知っとるんか。
なら話は早い、この鏡を渡せるわけないやろ?
……………兄さん。あんまり舐めとったらいかんで。
殺される事はない、とか思うとるんやろ。それは甘いで。
とりあえずえんこ詰めようか。
ほら、右手出しいや。
……………まだ兄さんみたいに根性あるもんもおるんやな。
気に入ったで、うちの組に入れや。
まあせやろぉな。
……………わいかてメンツ潰すわけにはいかんからな、あの鏡をやる事はやっぱり出来ん。
若いもんにはわいから言うといたるから、もう兄さんは帰ったれや。
おう、根性あるんと無謀とは違うんやで?
……………!!
……兄さん、ホンマに何者や?どこでそのネタを?
……………………………………持っていけ。
おう、もう顔見せん方がええで。
わい個人的には気にいっとるが、もう兄さんはわいらの敵や。悪い事は言わんから、ここ2、3年は身ぃ隠しとけ。
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○年2月。
G県のとある事務所にて。
霊斗【れいと】記す。