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4_集落へ、世界へ

僕は地図を見ながら、ライトエルフの集落へ向かおうとした。後方をチラッと見る。

後方には、漆黒の髪をしているブラックエルフのウルシがズカズカ歩いていた。本を見るために僕が歩みを止めるたび、早く進めと言わんばかりに睨みつけていた。もし、こちらの世界のように食事や睡眠があったら、その時にウルシとしっかり話が出来たのではないか…?


このセカイも、ただの理想郷…ではない訳だ。


「あれ?」

無言で進んでいたが、僕は思わず呟いた。ライトエルフの集落に近づいている筈だが、何一つ見えない。僕の声が聞こえたのだろう。ウルシが僕に近づいた。

「変な言葉を出して、どうした。」

奇妙なものを見る目で僕を見る。ライトエルフの集落が見当たらないことを伝えると、見下すような目つきに変わった。

「ライトエルフはとうの昔にお前たち人間の里で暮らしているのだぞ?そのお前が大事そうに持ってるものは、エルフなら赤子でも知ってるような事すら記されてないようだな!」

ウルシの荒々しい言葉が僕に刺さる。本の知識…おじいちゃんが残したものを否定するかのような言いぶりは、僕が思っている以上に堪えた。

そんな僕のことを知ってか知らずか、ウルシは(本の地図を照らし合わせると)深い森の方角へ歩みを進めた。

「ど…どこへ行くの?」

ウルシの言葉で本当に刺されたかと錯覚するほど、弱々しい声を出した。

「無能な人間の代わりに、フフを探す。そこで待ってろ。」

僕の方を一切向かずに、歩みすら止めずに答えると、ウルシの姿は消えた。


日が沈む頃、ウルシが戻ってきた。耳の長いフクロウのような生き物を肩に乗せながら、僕の前に現れた。

生き物のことを尋ねるより早く、生き物が喋りだした。

『フフ。知識を持っている生き物。小さなフフは今のセカイのありとあらゆる事を、大きなフフは過去の世界の全てを知ってる。生き物の感情を理解することのみできない。』

「無能なお前には、フフがいないと何もできまい。」

ウルシは相変わらず冷酷な眼差しで見つめる。が、何も言わずフフを探してくれたのは、ウルシなりの優しさなのだろうか?

「ライトエルフの集落は向こうだ。お前が裏切らないか、そこまで見張るからな。」

もしかしたらウルシは不器用なだけかも知れない。少しこれからの旅への不安が和らいだ。


ウルシに向かってうなずき、立ち上がろうとした瞬間、突然、視界が揺れた。


身体が重くなる感覚、今にも倒れそうな倦怠感。あぁ、これは…眠……く……………


「……!ど……た!……だ?この……………?」

『……界の宝。持つ………セカ…の……。………死……ように目……じる。それを……と……。異世…………光る限……………。』

ウルシとフフの言葉をかすかに聞きながら、僕は初めて、このセカイで眠った。

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