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07 加護

19/07/17 衍字修正しました。


 ど、どういうことなの?


 えと、神様と同じになるってことだよね?


 え?


「母上、どういうことかの? キッカ殿は現人神ということですかな?」


 ノルニバーラ様がアレカンドラ様に訊ねた。


「いずれはそうなる、ということですね。現状ではちょっと才能のある一般人ですよ」

「アレカンドラ様、なんでそんなことに?」

「へ? だってキッカさん、トキワ様に嫁ぐのでしょう? それに、キッカさんの魂もこちらの世界の環境により少なからず影響を受けます。その結果、この世界はもとより、元の世界の輪廻のシステムにも入ることができません。なので、選べる選択肢は神格化するか、消滅するかの二択になってしまうのですよ。

 本来なら最初から現人神の状態でもよかったのですが、キッカさんの希望により一般人レベルにまで弱体化してあります。鍛え抜けば、いずれは神と同レベルになりますよ」


 おぅふ。なんてこった。

 ま、まぁ、それなら仕方ないか。魂の消滅なんて不穏な言葉は聞きたくありませんよ。

 うん。もう体が四作目の(プレイヤー)(キャラクター)だと思えばいいや。


「りょ、了解しました。悪目立ちせず、死んだりしない程度には鍛えようと思います」

「はい。存分にこの世界を楽しんでもらえると嬉しいです。なにしろ私の生まれ故郷ですから」

「そういえば、元人間みたいなこといってましたね」

「はい、私は人からこのアルムロス惑星管理担当者となり、そして銀河管理担当者になったのですよ」


 嬉しそうに云うアレカンドラ様の顔が急に翳る。

 あ、あれ?


「えぇ、銀河管理担当者に選ばれたと思ったら、前任者にこの姿にされたうえ、管理するための知識を身につけるまで全裸で過ごすことを――」


 うわぁ、アレカンドラ様が死んだような目でブツブツと――


「あ、アレカンドラ様、アレカンドラ様、正気に戻ってください!」

「えぇ、勿論あの気障ったらしい、やたらと『ウィ』とかいってた前任者を始末しますとも! あんなのを神にしておいてはいけません!」


 まさに『くわっ!』という擬音が表示されるような表情で、アレカンドラ様が宣言した。

 いったいどんな辱めをうけたんですか、アレカンドラ様。


「はっ。これは失礼しました。少々、とりみだしました。ふ、ふふ……」

「い、いえ、私もそういうのが目的の男に五歳の時誘拐されそうになって、殺されかけましたから」


 いや、なに云ってんだ私。

 って、アレカンドラ様、そんな驚愕したような顔しなくても、顔芸レベルになってますよ。


「キッカさん。キッカさんがこちら側に来るのを待っていますよ。一緒にあの変態を()ちのめしましょう。あれは女の敵です!」

「わ、わかりました。私はとにかく、頑張って鍛えます」


 思い切り手を握り締められた。

 み、見た目以上に力強いですね、アレカンドラ様。

 ……逆らわないでおこう。


「そうだ、せっかく集まっているのですから、あなたたちもキッカさんになにか加護を授けなさいな。あ、くれぐれも突出したものは授けないように。キッカさんの希望ですので。あったら便利程度のものにしましょう」

「あらぁ。また難しい注文ねぇ」


「では、私から。『天の目』を」


 ナナウナルル様が私に手をかざす。

 淡い緑色の光が発し、すぐに消える。


「ナナウナルル様。『天の目』というのはどういったものでしょう?」

「言葉通りのものよ。自分を中心に、上空から地上を見渡すことができるわ」


 おぉ、リアルタイムでのマップ機能だ。この世界の現状からすればチートもいいところだろうけど。まぁ、私にとっては身近にあったものだ。まぁ、それはリアルタイムじゃなくて、普通の地図だけど。


「ふむ、では私は『看破』を授けよう。嘘を見抜けるようになるものじゃが、問題ないかの?」


 ノルニバーラ様からは嘘発見器。これは嬉しい。えぇ、五歳の時のアレがあるからね。嘘が分るのはありがたいのですよ。やったね、これで甘言が見抜けるよ。


「ありがとうございます。助かります」


 お二方に頭を下げる。


「なかなか難題ですね。私たちはどうしましょう?」

「そうねぇ……」

「ここはもう、聞いちゃいましょうー。キッカ様、なにか欲しい能力はあるかしらー」


 ディルルルナ様が胸元で手を合わせ、ニコニコと聞いてきた。

 欲しい能力か。なにかあったかな?

 う~ん……。

 あ、ひとつあった。

 ゲームでは存在しなかったけれど、リアルならありえる厄介なもの。これを回避できたらとても助かる。


「毒による即死を回避できますか?」

「毒の即死回避ですか。ルナ姉さんの領分ですかね」

「そうねー。健康とかは私ねー。即死回避だけで、無効化はしなくてもいいのかしらー? そーお? それじゃー……はい、どうぞー。『抗毒』っていう能力を拵えてみたわー。即死しないだけで、毒の影響は受けるから気を付けてねー」


 おぉっ!? 云ってみるものだね。本当についた。


「私はどうしましょうかね。『百科事典』にしても『鑑定』にしても問題ありそうなんですが……」

「ふむ、それなら機能を限定すれば問題ないでしょう。キッカさんには『鑑定』より『百科事典』の方が良さそうですしね。そうですね、抜粋して『植物図鑑』でいいのではないでしょうか。人の作った植物図鑑は不確かですし。キッカさんは製薬もするようですから」

「いや、私がやるのは錬金ですよ。でも植物図鑑はあると嬉しいです」


 ナルキジャ様とアレカンドラ様に答えた。

 うん、知識は武器だよ。


「では『植物図鑑』を。念じれば手元に具現化しますよ」


 ナルキジャ様が私に手を翳す。微かに青白く光り、私の中に消える。


「あ、あらー? ナルキジャ、なんだか加護がおかしなことになってるわよー」

「え?」

「あら、本当ですね。キッカさん、ちょっと『植物図鑑』を出してもらえますか?」

「は、はい」


 云われ、右掌を上に向けて念じる。

 すると、ぼん! と、革張りの小豆色の分厚い書物が現れた。

 その表紙にはタイトルを刻んだ金属板が打ち込まれている。


 【菊花(きっか)()奥義書(ぐりもわーる)


 ……なんで日本語。というか、タイトルが植物図鑑じゃない!?

 ん? なんか紙がはみ出してる。なんだろ?



『『植物図鑑』はインベントリに紐づけされました。今後『植物図鑑』には深山さんが作成した錬金薬等のレシピ、および錬金素材の詳細が自動的に記載、追加されていきます。また、この追加記載は薬物以外にも適用されます。これにより、この書物を『植物図鑑』から『菊花の奥義書』へと変更しました。


 今後、新たに得た能力によっては、統合されることがあります。あらかじめご了承ください。尚、このような統合が起きた場合には、インベントリの雑貨部分にアップデート情報として書面で通知されます。

 ――常盤兼成』



 ……常盤お兄さん、なにやってるんですか。あぁ、それともこれ自動通知なのかな? 銀河の運営も半ば自動化してるようなこと云ってたし。


「えーと、常盤お兄さんが、私の能力に紐づけて一部変更したみたいです」

「あぁ、さすがトキワ様ですね。自動で統合するようにしてあるんですね」


 あ、やっぱり自動なんだ。ここはアレカンドラ様の担当の世界だものね。さすがにこっちにまで直接手出しはしないよね。

 というか、この本、魔法まで記載されてるよ。

 これ、あとでちゃんとインベントリに入ってる取説みないとダメだ。


「なんだか複雑な気持ちですねぇ。『植物図鑑』は能力というより、神器の類なんですが」

「別にいいじゃないのぉ。相手はお母様と同等かそれ以上の方よぉ」


 アンララー様がナルキジャ様の肩を叩く。

 なんとなく、気持ちはわかるな。


「それじゃあ、次は私ねぇ。私は『不老』にしましょう。歳は普通に取るけれど、外見上は現状のままになるわよぉ。もっとも、神格化しちゃったら不死にもなっちゃうけどねぇ」


 えっ? いや、不死化は多分なることはないと思いますけど、見た目が年を取らないのはマズいのでは?


「あ、あの、それって問題になったりしませんか?」

「んー? ステータスに私の加護が反映されてるでしょう。それを見せれば大丈夫よぉ。昔、巫女のひとりにも同じ加護を渡したこともあるから、問題ないわよぉ」


 だ、大丈夫なのかなぁ。


「だいたい、キッカちゃん、そこまで私に似てるんだもの、私の加護を受けてるって云えば、みんな無条件に頷くわぁ」


 えぇ……って、みんな頷いている。


「では最後に我だな。我は『察知』を授けよう。そなたに向けられる悪意、敵意が分るようになるぞ」


 ライオン丸……テスカカカ様が手を私に翳す。今度は赤い光だ。

 さて、頂いた加護から察するに、


 む、殺気!


 ということができるようになるんですね、わかります。

 これかなり便利そうだな。


「な、なんということかしらー」

「テスが、まともじゃと……」

「お母様に殴られて、ネジが嵌ったんじゃないかしらぁ」

「あぁ、なるほど……」

「いつもなら『ふはははは、貴様を不死身にしてやろう』とかいうもの」

「姉上たち、酷いな!」


 おぅ、みなさん容赦ないな。というか、やっぱりそういうポジションか。


「自業自得ですよ。諦めなさい。

 ではキッカさん。私たちはそろそろ帰ります。

 最後になにかありますか?」


 アレカンドラ様が確認する。

 なにか……っと、これをお願いしておかないと。


「ふたつお願いがあります」

「なんですか?」

「ひとつは人払いを。ここに一ヵ月くらい人が来ないようにして欲しいです。折角ですので、ここで修業します」

「それは構いませんけど、食料はどうするのですか?」

「なんとか調達します。

 あと、例の召喚アイテムの替え玉が欲しいです」


 回収したことがすぐにバレては困るからね。時間稼ぎはしたい。


「あぁ、すり替えるんですね」

「はい、でもどうせなら嫌がらせもしましょう」

「ほほぅ」


 アレカンドラ様がにたりと笑う。

 なんて晴れやかな悪い笑顔だ!


「ではキッカさん、ちょっと記憶を見せてくださいね。召喚アイテムの形状を知りたいです。いいですか?」

「あ、はい」


 アレカンドラ様がこつんと私のおでこに額を当ててきた。

 おぉぅ、こういうのやったことないからドキドキするよ。


「あ、ここのは宝珠なんですね。先にひとつ回収しましたが、そちらは球状に絡まった木の枝でしたからね」


 え、なにその得体のしれない物体。というか、もしかして一個一個形が違うの? 探すの面倒臭そうだな。


「ふむ。ではこれをお渡しします。間違っても使わないように。嫌がらせアイテムになっていますから」

「はい。了解です。あ、回収したアイテムはどうやってお渡しすればいいんでしょう?」


 半透明の水晶玉を受け取りながら、アレカンドラ様に訊ねた。


「教会で適当に祈っていただければ、そこの主祭神が回収にいきますよ。

 では、私たちはこれで。出だしは酷いですけれど、この世界を楽しんでもらえると幸いです。頑張ってくださいね」


 にこにことアレカンドラ様が手を振る。


「ではキッカ様、失礼しますねー」

「なにかあったら、気軽に助力を求めるがよいぞ」

「キッカちゃん、またねぇ」

「召喚アイテムの方、お願いしますね」

「教会であれば、助言もできるわ。なにかあれば来るのよ」

「今一度謝罪しよう。すまなかったな。では、これにて失礼する」


 そういって神様たちは、普通に牢屋の扉を開けて帰っていった。


 ……。

 ……。

 ……。


 え?


 慌てて立ち上がって、扉を開ける。

 うん。普通に開いたよ。鍵が掛かってないよ。というより、鍵を開けてというか、外していってくれたんだろうなぁ。

 足元に南京錠が落ちてるし。

 とりあえず南京錠は牢の中にいれて、扉は閉めて置こう。

 ふぅ、急に静かになったなぁ。


 で、いまだにアレカンドラ様がだしたステータス画面が消えないんだけど、いつ消えるんだろ?

 ちなみに、加護を頂いている間もリアルタイムで更新されていたらしく、ステータス画面にはその旨が反映されている。

 いまはこんな感じだ。


名前:キッカ・ミヤマ(深山菊花)

種族:人間 性別:女 年齢17歳

職業:学生

属性:影


筋力:C

知力:B

気力:S

体力:B

技巧:B

敏捷:F

走力:F

魅力:S

運気:(F→)C(加護により三段階上昇+α)


技能:炊事 洗濯 掃除 裁縫 基礎学術知識

祝福:アレカンドラの加護(運気上昇)

   ディルルルナの加護(抗毒)

   ノルニバーラの加護(看破)

   アンララーの加護(外見不老)

   ナルキジャの加護(菊花の奥義書)

   ナナウナルルの加護(天の目)

   テスカカカの加護(察知)

(※※:主人公)


 ……確か、括弧の内容は鑑定されても見えないんだったよね。

 でもよく考えたら、神様全員の加護あるって、とんでもないことなんじゃないの?

 ……考えないでおこう。こうなった以上、なるようにしかならないさ。


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