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56 なんだか面倒なことが起こりそう


 おはようございます。キッカです。五月十九日の早朝です。


 昨日は湖で粘土を大量に確保。大穴が空いた感じになったけれど、そこは周囲から適当に土を少しずつ削ってきて目立たないように埋めてきた。

 そんなことをしていたから一日仕事になったよ。


 あ、移動にはアルスヴィズを使って、向こうの組合には顔を出さずにまっすぐ湖に向かったよ。


 ……粘土を採取している最中に、ヴォルパーティンガーがなんか突撃してきたけど。

 私はあれか、兎にとっては美味しそうにでも見えるんですかね?


 いや、でも攻撃って感じでもなかったんだよなぁ。


 追い払ったんだけど、その後なぜか遠目からじっと見てるんだよね。なんなの?


 インベントリに以前狩ったのが二羽入れっぱなしになってるんだけど、怖くて組合には出せないんだよ。またUMA騒ぎは嫌だし。


 かといって、これ、なんだか食べたいって気にもならないしね。


 これの処分どうしよう? ……うん、今度組合で、賞金の掛かってる獣に関して調べてこよう。あと災害指定の魔物についても。


 その両方に引っ掛からなかったら、組合に売っちゃおう。




 さて、何とか日の暮れる前に自宅に戻って、その翌日から型の作成を開始。


 箱に詰めた粘土にバラした鎧のパーツを押し込んで、型をとるんだけど、ここで気が付きましたよ。この段階での型取り用の素材がありませんよ。

 シリコンゴムなんてないからね。


 どうしようかと思って、ゼッペルさんのところのダグマルさんに訊きにいったよ。


 あ、ダグマルさんはゼッペルさんの工房の鍛冶担当。各種金具や釘、あとは調度品の飾りとか、細々としたものを専門に造っているお姉さん。いや姐さんというほうが似合ってるかな。

 工具も作っているから、刃物関連も専門だ。鉈とか包丁とかね。稀に依頼を請けて、刀剣も作っているらしい。


 刀剣関連は専門の工房がよそにあるから、それは余程のことが無い限り仕事は請けないらしい。


 金具関連で、確か鋳造もやっている筈だから、金型をつくるための素材をしってる筈。


 うん。ゴムもらった。


 こっち、ゴムはあったんだね。ただ、ゴムといってもちょっと違うのかな? 放置していても液体のままらしいし。魔石の粉を混ぜると固まるって話だけど。

 で、現状は実用性が皆無みたいなんだよね。劣化速度が異常に早いらしくて、商品価値がないんだそうだ。


 ちなみに帝国産。帝国はいろんなものを作ってるな。あそこはあれだな、科学……化学? の最先端みたいだね。ただ職人の国というわけでもないようだ。

 学者肌の人が多く集まっているのかな。


 あ、そうそう。帝国って、帝国を名乗ってはいるけれど、実際は連邦国家というか、都市国家が寄り集まってひとつの国と成ったのだそうな。

 ある都市国家が食糧難になって、となりの都市国家に助けを求めてひとつの国家となったところ、周囲の国もそこに降っていった結果、北方国では最大の国になったとか。現状の政治形態はアメリカっぽい?


 いや、ゲームでの舞台の国家の政治形態に近いか。国のトップを皇帝じゃなくて、上位王って呼ぶみたいだから。

 ……いや、なんでそれで帝国なのよ。まぁ、いいや。


 で、ゴム。劣化速度が激しいとはいえ、型を取るための中間素材としては優秀なので、鋳造をやっている工房では必須の品らしい。


 これも樽でふたつも分けてもらっちゃったよ。分量が分量だから、さすがに支払いをと私も粘ったよ。そしたら――


「それじゃ、その鎧ができたら一式譲ってくれないかい?」


 って云われたよ。まぁ、妥当なところなのかな? だからその条件で貰って来たよ。


 で、ゴムと魔石の粉が目の前にありますよ。このふたつを混ぜたものを、準備の整っている箱の中に流し込んでいきますよ。


 量が多いから、この作業もなかなか大変です。パーツの多さもあるけどね。


 で、これらの作業しながら、別ゲーの鎧を作ってみようかといろいろ考えていたんだよ。それで思ったんだけど、正直、ゲームに登場する鎧ってかなり無茶なものが多いよね。


 荒唐無稽というか。


 ビキニアーマーなんてその最たるものだと思うよ。あれ鎧の体をなしてないよね? お腹斬られたら終わるよ。


 某ダークファンタジーゲームのタマネギ鎧を作ってみたいんだけど、ちょっと考えただけで問題点がふたつみつかったし。


・視界の問題。あれ、前がちゃんと見えるのかな? 遮光器のこれは、目にほぼ密着しているようなものだから、視界は狭まるものの、ちゃんと見えるけど。


・腹部の構造。あの曲線を描いた腹部の上下装甲だけど、剣の突きなり横切りを受けると、その曲線も相まって――


 相手の切っ先が自分のどてっぱらにシュート!


 なんてことになりそうなんだけど。


 やるとしたら、兜の正面部分の視界確保を、横一文字から縦に幾つも作る。

 お腹の部分は武者鎧のアレ。胴丸みたいな形状にする感じかなぁ。剣道の防具みたいになりそう。


 ……今度、造ってみよう。あの鎧、丸っこくて好きなんだよ。


 さて、流し込みは終了しましたよ。あとは固まるのを待つだけなんだけど、それまで手が空くので仮面の原型造りを続けていきますよ。


 ふふ。このくちばしの角度というか、曲線の具合が最も重要だと思うのですよ。


 かくして、ゴムが固まるまで、私はひとりでニヤニヤしながら木を削っていたのです。




「あらぁ、やっと一段落ついたのかしらぁ?」


 作業を終えて家に入ると、ララー姉様が出迎えてくれた。

 調子に乗って徹夜しちゃったよ。でもペスト医師の仮面が出来上がったよ。くちばしの内側をくりぬくのに苦労したんだ。


「はい、ひとまず金型用の型は半分できました」

「それじゃあ、ごはんにしましょうかぁ」

「いえ、その、先に寝ます。食べてすぐ寝るのもなんですし。お昼には起きますので」

「そぉ。それじゃ、おやすみぃ。お昼にねぇ」


 手をふりふりするララー姉様を尻目に、私はベッドへと向かう。

 ダメだ。寝るって決めたら睡魔が一気に来てヤバイ。


 そして私は、ボスっとベッドに体を投げ出し、そのまま眠りに落ちていった。




 はっ!?


 飛び起きた。なんで飛び起きたのかはわからないけど、きっと変な夢でも見たのだろう?


 半ば慌てて周りを見回す。


 リスリお嬢様がすぐそばにいた。……あれ?


「おはようございます、キッカお姉様」

「……おはようございます、リスリ様。あの、なにをなさっているので」

「お姉様の寝顔を見ていました」


 えぇ……。見てて楽しいものでもないと思うんだけど。

 というか、普通に恥ずかしいんだけど。


「なぜ起こさなかったのですか?」

「仮面をつけていないお姉様は貴重です」


 えぇ……。


「自宅にいるときは仮面を外してますけど」

「寝顔は見たことがありません」


 えぇ……。


「恥ずかしいので、今後は止めてください」

「眼福でした。ご利益がありそうです」


 なんですかそれは。……まさかまだ女神様と思っているわけじゃないよね?

 本物の女神様はすぐそこにいますよ?




「キッカお姉様も兎を飼い始めたんですね」

「懐かれちゃったんですよねぇ。強いので番兎になるので、今後防犯に関しては心強いですけど」


 私がそういうと、リスリお嬢様は目をぱちくりとさせた。


「え、あの兎も殺人兎なんですか?」

「多分、アルミラージとの合いの子なんじゃないですかねぇ。ちっさいけど角が生えてますし」


 今はみんなでお昼御飯中。正確には軽食になるのかな。こっちは食事は朝と晩、お昼はお茶って感じなんだよね。


 なので、いまは私だけがっつり食べてます。塩漬け猪肉を薄切りにしてベーコンっぽくして造ったベーコンエッグもどきと、いつもの芋餅。それと塩漬け猪肉と野菜を煮込んだスープ。


 塩漬け肉を使うと、下手に味付けしなくて済むから楽なんだよね。


 みんな同じような味になるから、味のメリハリはなくなるけど。味に飽きない限りは、美味しく戴けるから問題ないね。


 今度、型をつくって食パンを作ろうかな。トーストにベーコンエッグを載っけて食べたい。そうするには酵母を作らないといけないのか。


「それで、今日はなにをします?」


 リスリお嬢様に問うた。


 お嬢様がここに来るのは、遊ぶためといってもいいからね。もしくは魔法関連。


「はい、お姉様の故郷の話が聞きたいです!」

「えっ……」


 故郷って、日本の事だよね? いや、下手に話せないんですけど!


 私自身の事となったらなおさら話せないよ。トラウマしかないからね。あとはお兄ちゃんとお父さん。


「おいしい料理の話が聞きたいです」


 ……そっちですか。意外に食いしん坊ですね、リスリお嬢様。


「料理といわれましても。こっちだとまだ作れない調味料とかありますしねぇ。

あ、ララー姉様、昆布ってどうなりました?」


 あとワカメと天草も欲しいんだけどね。あれって普通に乾燥させて大丈夫なのかな? よく分かんないから、こっちは頼んでいないんだよ。そのうち自分で採りにいこうと思ってるんだけど。


「んー? あの海の雑草? いま干してる段階ねぇ。こっちに来るのは早くても来月じゃないかしらぁ」

「昆布? 海の雑草?」

「漁師さんに嫌われまくってる海藻ですよ。私たちのところでは食材として重宝されていたんですけど……こっちだとどうだろう?」


 ディルガエアは内陸だから、海産物なんて見ないしね。でもララー姉様が雑草なんて云ってるくらいだから、食材ではなさそうだ。


 で、思い出したんだけど、日本人以外は腸内細菌の関係で消化できないんだよね? こっちも食材としては見ていないわけだから、多分無理だと思う。となるとダシで使うのが無難かな。


「どういうことですか?」

「いや、異国の人は消化できないって聞いたことがあるので。まぁ、そのまま食べるばかりの使い道しかないわけじゃないですし。というか、スープベースに使うのが多いですしね」


 ダシってこっちだとなんていえばいいのかわからん。この説明で適切、かな?


「ブイヨンのようなものでしょうか?」

「あー、そんな感じですね。私の故郷は島国で漁業の盛んな国だったので、海産物を使った料理が多いのですよ」


 日本は基本、海と山と湿地帯ばかりの島って感じだったからね。武蔵野平野の開拓とか、昔の人はどれだけ頑張ったのよって、ほんと、頭が下がるよね。


「魚料理とかほとんど食べたことがありません」

「このあたりではあまり食べませんからね。川で獲れる魚は泥臭いですし」


 リリアナさんが顔を顰めた。


 そういや、鮒はそのまま焼いて食べるもんじゃないって、お兄ちゃん云ってたな。あと、鯉は小骨が多くて食べるのが辛いとも。

 この辺の川魚もそんな感じなのかなぁ。鱒とか、岩魚とかなら塩焼きで美味しいんだけど。


「まぁ、川魚は仕方ないですよね。上流に居る魚は塩焼きにするだけでも美味しいんですけど、ここらだと魔の森の奥に行かないと獲れないですしね」


 この辺りの水源となっている川は、魔の森奥地の山が水源だ。侯爵邸に行くときに橋を渡ってるけど、川幅はそんなに広くはないね。だいたい五十メートルくらいだ。川の周囲はしっかり整備されていて、氾濫対策はできているようだ。北西の旧採石場跡が、増水時の溜池になるらしい。


 あ、【アリリオ】出張所が廃棄処分場としている採石場跡とは別のものだよ。


 このあたりにも昔は山があって、それを削って更地にでもしたんですかね?

 どうも石というと、山ってイメージがあるんだけど。


「川魚を美味しく食べるなら、甘露煮とかありますけど、お砂糖とかお醤油を使うんですよね。砂糖はともかく、お醤油がないですから」


 魚醤で代用できるかな。というか、手に入るのかな? さすがに作り方は知らないよ。

 あ、味噌は目途が立ったよ。なので、仕込みを近くやるよ。でもできるまで半年かかるんだったかな? 先は長いね。


「しょうゆ、ですか」

「聞いたことがないですね」

「こっちでも生産できれば、一気に食の幅が広がりそうなんだけれどねぇ」


 いや、みんなしてじっと見ないでくださいよ。

 無理ですよ。知っているモノならどうにかなりそうですけど。材料さえあれば。


 黄身が流れ出ない程度に火をいれた玉子を口に放り込む。目玉焼きは黄身部分がゼリー状になってるのが私は好きだ。


 なにせお皿が汚れないからね!

 こびりついた黄身を落とすのは結構大変なのよ。


 かといって火が通り過ぎてるのは嫌。なので火加減がけっこう難しい。


「漁村で作ってませんかね? 魚醤っていう調味料」


 醤油は魚醤の代替品として内陸の人が開発した、なんていう話を聞いたことがある。かなり眉唾な話らしいけど。


「ふむ、調べてみようかしらねぇ。流通に乗らない食品なんて、たくさんあるしねぇ」

「見た目で食べるのを敬遠しているものもありそうですね。タコとかイカとかクラゲとか」

「「「――!?」」」


 ……なんでみなさん凝視しますかね?


「え、食べるの? というか、食べられるの?」

「食べますよ。美味しいですよ。クラゲの調理法は詳しくは知りませんけど、タコとイカは調理できますよ、私」


 タコか。小麦粉もあるし、たこ焼き作りたいな。あぁ、でもその前にせめてソースを作らないと。


「あの? それはどういった生き物なのでしょう?」

「あぁ、リスリちゃんは知らないのねぇ。クラーケンって分かるかしらぁ?」


 あ、リスリお嬢様、固まった。


「あ、あの、キッカ様? そんなものをわざわざ食べるのですか?」

「そ、そそそそうです。なんで食べようなんて思ったんですか、お姉様!」

「そりゃ、なにかしら食べないと死んじゃいますからねぇ。食糧難の時代なんて何度もありましたし。その都度『なんとかしてこれは喰えないのか?』と、試行錯誤して調理法を捻りだしたものとかあるでしょうし。先人のありがたい知恵ですよ」


 もっともらしく云ってるけど、結構適当な答えだ。間違いではないだろうけど、それが正しいとも云えないだろう。


 正直、どういう状況で生まれたのか謎なモノもあるしね。土粥は飢饉の際、どこぞのお坊さんが伝えたってきいたけど。

 そういやヒトデやアメフラシも調理法があるって聞いたな。それを聞いたとき――


 なんで食べようと思った!?


 なんてことを思ったし。必要に駆られなければ、このふたつは食べようとは思わないと思うんだよねぇ。さすがに。

 まぁ、私の単なる思い込みなのかもしれないけど。


「えーと、キッカちゃん、タコ、持ってきたら調理してもらえる?」

「え、いいですけど、こっちまで持ってこれます?」

「商会に【冷気使い】がいるから、凍らせて運ばせるわぁ」


 ふむ。一番問題なさそうなのはたこ焼きだろうな。ソースの代わりに、デミグラスソース的なものでなんとかなるかな。


 ……合うのか?


「あの、ララー姉様、食べるんですか?」

「あの足が沢山うねうねした気味の悪い生き物ですよ」


 いや、確かにそうですけど、お二方。

 タコ、美味しいんだけどな。タコ飯とか。やっぱり見た目なのかなぁ。


「ふふふ、新しく食事処を作ろうと計画してるのよぉ。やっぱり目玉となる料理がいくつか欲しいからねぇ」

「そういえば、豚骨ラーメンをお店に出したいって云ってましたね」


 ミストラル商会は手広くやってるんだなぁ、などと呑気に思っていたら、リスリお嬢様が、くわっ! と目を見開いて身を乗り出してきた。


「ちょ、それはもう決まったのですか?」

「お嬢様、はしたないですよ」

「リリアナ、それどころではありません。我々も、組合に食堂を併設しようと計画しているのですよ!」


 叫ぶようにリスリお嬢様。


 って、それ、云っちゃっていいんですか?


「なにか問題でもあるのですか?」


 訊いてみた。うん。塩漬け肉美味しい。


「ですが、豚骨らぁめんが!」

「? 出せばいいじゃないですか。別に独占というわけでもありませんし」

「そぉよぉ。キッカちゃんにレシピの使用料を払って商品にする形なら、お互い問題ないでしょう? リスリちゃんの云うところは、そこよね?」

「なるほど! それなら問題ありませんね!」


 え? どういうこと?


 私は半ば首を傾げて、リリアナさんに目を向けた。


「要は、どちらが『元祖』であるか、ということですよ」


 えぇ……。


「そんなに大層なことなのかなぁ」

「大事なことですよ、キッカ様」


 リリアナさんの言葉を聞きながら、私は釈然としない面持ちのまま、ララー姉様とリスリお嬢様の商談染みた話し合いを眺めていたのでした。


 というか、リスリお嬢様はイリアルテ家でどういう立場にあるんだろ?

 なんだかやたらと商売っ気があるように見えるけど。


 ◆ ◇ ◆


「それでは、また明日来ます」

「失礼します、キッカ様」


 門にまで見送りにでた私に挨拶をし、ふたりは馬車に乗り込んだ。


 ぞわっ!


 んんっ? なんだろう、いま殺気じみた視線を感じたよ? すぐ消えたけど。


 馬車に乗り、帰っていくふたりを見送った後、キョロキョロと辺りを見回す。不審な者は見当たらない。


 気のせい? いや、それはない。加護による能力的なものだから、これは絶対だ。


 ……気持ち悪いな。


 多分これ、私が邪魔ってことなんだろうと思う。私への殺気がすぐ消えたからね。私を狙っているなら、ずっと殺気が突き刺さっているだろうし、その道のプロなら、そもそもその殺気が僅かでも感じられるというのがおかしい。


 となると、視線を外したってことだ。


 ふむ。状況から察するに、リスリお嬢様絡みって感じかな? 感じだろうなぁ。

 うーん、リスリ様、侯爵令嬢だしな。敵対貴族からの攻撃を受けてるってことだし、ソレ絡みか。


 これは、なにかしら対策した方が良さそうだなぁ。


 そんなことを考えながら、私は家へ戻る。


「あらぁ、浮かない顔ねぇ。どうしたのかしらぁ」


 ララー姉様に問われ、先ほど感じた殺気のことを話した。


「あぁ、確かに良からぬモノが来ているわねぇ。一応、私たちは立場上、こういったことには手を出せないのよねぇ。大災害レベルになったら干渉もするけど」


 と、ララー姉様。


 そういや、教会でディルルルナ様のそんな話を聞いたな。魔物の大規模集団暴走の際、直接手を出したって。


 うん、神様としてみると、過保護ではあるよね。人間が頼り切ったら大変だとも思うけど……。あ、それを考えたらあの髭の件は丁度いいのか。


 畏れのない神様なんてことになると、人間は図に乗るしね。あっちの宗教はもうビジネスの一環って感じで食い荒らされてるようにしか見えないし。


 大体、救いが金で買えるって時点でおかしいんだよ。


 地獄の沙汰も金次第っていうけど、それはこの世の地獄で使うもんだろ。


 って、いかんいかん。思考がまた明後日の方向に突っ走ってる。偏見も酷いぞ。

 うーん、気を張ってるときはどれだけ寝なくても平気みたいだけど、一度でも気が抜けると寝不足感が酷いな。


 ふふ、寝不足になると酷く機嫌が悪くなるんだよ、私。

 多くの人がそうだろうと思うけど。


 しかも寝不足で頭が鈍ってるせいか、考えが酷く物騒になるんだ。


 とりあえず、いま考えるべきはお嬢様の身の安全の対策だよね。

 自身になにか身に付けさせた方が一番楽だから、魔法をなにか覚えさせよう。


 とはいえ、攻撃魔法はいろいろ問題にしかならないから、却下。


 例え周囲に露見したとして、流通に流すことになっても問題なさそうなもの。

 ……いや、攻撃関連でそんなのないんだけどさ。


 召喚武器系はダメだよねぇ。下手に武器を渡して、自害とかされたらいやだし。そもそもその手のものは持ってるだろうしねぇ。


 一番無難なのは【走狗(バウンドドッグ)】かなぁ。あれ、術者の敵には攻撃するけど、それ以外の時はただの犬っころだし。いや、見た目は狼っぽいんだけどさ。


 とりあえず作っておくか、呪文書。これと【爆炎(エクスプロード)走狗(バウンドドッグ)】は呪文書化できたし。


 あ、【爆炎走狗】はもう呪文書化はしないよ。あれ、自爆の危険性が高いから。


 あと問題となるのは、魔力か。……召喚用の魔力軽減装備ならまぁ、いいか。

 予定を変更して付術の技量を一気に上げよう。どうせいずれやる予定だったし、産廃を量産して、ある程度技量が上がったところで指輪にでも付術して、呪文書と一緒に渡そう。


 技量を上げない事には、役に立たないものしかできないからね。


 よし。明日は安物の指輪や首飾り、あとは腕輪とかでも問題ないか。その辺を買い漁ってこよう。自分で作れば鍛冶技能も上がるんだけど、そんな暇ないしね。




 やれやれ、なんだか面倒なことが起こりそうですよ。





誤字報告ありがとうございます。

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[気になる点] いくら知り合いとは言え、家主が寝ている間に無断で寝室に入り込むって頭がおかしいのでは……?
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