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44 過労死とかしないよね?

19/08/27 ルビのミスを修正

19/11/28 販売魔法変更

20/10/20 ルビのミスを修正


 現状のことを考える。


 正直、これ、結構マズいんじゃないの?

 だって、神様方が直接干渉してきたんだよ? ということは、魔法の普及を円滑にやって欲しいってことだと思うんだよ。


 魔法の普及は、魔素消費の一環なわけだけど、私としてはやらないよりマシって程度のことだと思ってたんだよ。

 それがこの干渉。


 ……魔素濃度、もしかしてかなりマズい状態にある可能性が高いんじゃ。

 でなきゃ、あんなおっさんひとり、放置しただろうし。今回のことが物別れというか、ダメになったら、私が好き勝手にバラまけばいいだけだしね。


 アンララー様の商会を介して頒布することだってできるし。


 いや、もうひとつあるか。


 例の召喚アイテム。あれが使われる可能性を潰したいんだ。

 ここで教会に周知してしまえば、すくなくとも教会関係者が使う可能性はなくなる。いや、極めて可能性は低くなる、というべきか。どうせ使うやつは使うだろうからね。


 ふむ。アレカンドラ様の狙いはどっちだろう?

 両方かな?


 となると、このことを云っといたほうがいいか。

 確か、木の枝が捩じくれた変なのが回収されたのって、帝国だよね?

 ナルキジャ様を主祭神としてる教会だから、えーっと、水神教か。


 部屋を変え、全員が席に着いたところで私は口を開いた。


「あの、水神教の方はどちらに?」

「私です。水神教、枢機卿のヒルデブラントです。何用でしょう、キッカ殿?」


 色白の青髪の男性が答えた。この人も四十前後ってところか。やや痩せ気味な感じの人だ。


「水神教では以前、こう、木の枝が絡まったような、変な物品が見つかり、それを神に奉納したと聞いています」

「よくご存じですね。【召喚器】という鑑定結果が出た物なのですが、教皇様が不穏な代物であると断じ、ナルキジャ様に封じて戴いたのですよ」

「ナルキジャ様をはじめ、すべての神様がそれを高く評価していますよ。特にアレカンドラ様は。

 その物品は、勇神教が使用した宝珠と同様のものなのですよ。もしそれを使っていたのなら、アレカンドラ様はさらに多くの異界の神を相手にすることになっていたでしょうね」


 あ、あれ? ヒルデブラント様、真っ青になってる。なんで?

 アレカンドラ様、褒めてたんだよ?


「あの、ヒルデブラント様? 顔色が悪いようですけど、どうしました?」

「い、いえ。アレに関しては、教会でも意見が二分しましてね。使用するか否かで。もし、教皇様の声が無ければ使用していたでしょう。

 なにぶん、我々は未知なるものを探求するとなると、少々見境がないので」


 あぁ、知識の神様の信徒だものね。分からなくはないな。

 というか、そういう人の集まりなのに、ナルキジャ様に奉納したのか。凄いな。


「そうすると、今回の魔法関連はいい研究材料になるかもしれませんね。私は神様から魔法を授かっただけなので、原理だのなんだのはさっぱりなんですよ」

「そうなのですか?」

「はい。私以外にも呪文書を作成できるよう、その為の技術、というよりは、それを可能とする作業台ですね。それを頒布しますから。是非とも解き明かしてください」


 そう云ったらヒルデブラント様、目を輝かせていたよ。

 本当に根っからの研究者というか、未知のものに目がないって感じだったよ。




 そうこうして、やっと予定の会議が始まった。

 勇神教は髭がリタイアしたから、急遽、付き人として来ていた、別室で待機していたもうひとりの司祭が参加することになった。


 うん。可哀想に、ガチガチに固まってるよ。まぁ、ここにいる人たちと比べたら、下っ端もいいところだものね。


 んー、この人もなんか見たことある気がするんだよねぇ。もしかしたら召喚の時にいたのかな。

 確か、王様、王太子、髭、騎士ふたり、あとは……そうそう、へたり込んでた人が何人か。


 多分、きっとそのへたり込んでた人のひとりだろう。

 なんで疲れ果ててたのかは知らないけど、まぁ、召喚の際に使われたってところかな? お約束的な感じだと。というと、髭に道具として使われた人ってことか。


 まぁ、真実のほどはわからないけど。敵視することもないだろう。


 そんな中、魔法の説明をし、販売する予定の呪文書を並べる。


【冒険者組合】販売用

・素人魔法

 【照明(イルミネーション)】【堅木の皮膚(オークスキン)


・見習魔法

 【鎮静(サニティ)】【灯光(メイジライト)】【硬石の皮膚(ストーンスキン)


・玄人魔法

 【生命探知(ディテクトライフ)】【鋼鉄の皮膚(アイアンスキン)



【七神教会】販売用

 素人魔法

 【魔法の小盾(マナバックラー)


・見習魔法

 【聖なる矢(ホーリーアロー)】【太陽弾(サンライトバレット)】【魔法の盾(マナカイト)


・玄人魔法

 【聖なる息吹(ホーリーブレス)】【神の霊気(ディヴァインオーラ)】【太陽球(サンライトボール)】【魔法の大盾(マナスクトゥム)


 余計な問題を起こさないものとなると、こんなところかな。召喚魔法の【召喚鎧甲(バウンドアーマー)】系も候補にしたんだけど、これは様子をみてからかな。

 【魔法の盾】系は一応いれておいたけど、基本的に使い勝手が非常に悪いものであるとは説明して置いた。いや、産廃だからね。できるなら売らない方向で。


 で、魔法の習得の実演をすることになったんだけれど、それは侯爵様にやっていただいたよ。というか、立候補されたよ。どうもエメリナ様とリスリお嬢様が魔法を使えて、自分が使えないのが悔しかったみたい。


 修得したのは【堅木の皮膚】。防御力を上げる魔法。簡単にいうと、全身に木の盾を張り巡らせるようなものだね。それなりに防御力があがる。


 魔法の使い方を説明し、侯爵様が早速使用。ジャキン! っていう、金属音がして魔法が発動。すっかり忘れてたけど、魔法の鎧は独特の発動音がするんだっけ。この音は、なんというか、いわゆる厨二病心をくすぐるようなものがあると思う。なんとなく恰好良いんだよ。……慣れるとうるさいだけだけど。


 侯爵様はご満悦だったよ。よかったよかった。


 で、次に魔法の杖。放出するのは以下の七本。


【火炎の杖】 :炎を放射する。

【火炎矢の杖】:炎の矢を撃つ。

【電撃の杖】 :電撃を放つ。

【電光矢の杖】:電撃の矢を撃つ。

【灯光の杖】 :目標に光源を撃ちだす。

【鎮静の杖】 :対象を落ち着かせる。

【治療の杖】 :対象の怪我を癒す。


 これの実演は、お兄さんに【灯光の杖】を使ってもらった。ちょっと薄暗かった会議室が明るくなったよ。

 これも問題なし。ここに来てすっかり失念していた問題に気が付いたけど、それはあとで。


 最後に薬。これは回復薬だけだね。

 効能に関しては組合長さんたちが保証してくれた。

 で、問題の万病薬だけど、これは非売品扱いで、組合と教会にストックするという形となった。


 現状、生産はできないんだけど、別の方法を使うことにしたよ。それはまた後程。まぁ、素材の確保は依頼できたけど、使えるかどうかは別だしね。あ、確保にはララー姉様のミストラル商会にお願いしたよ。それと鷹の羽も。


 鷹の羽は鷹を飼っている貴族や鷹匠の人から、換羽で抜けた羽を集めて貰っている。さすがに羽のためだけに殺すのはね。羽ペンの素材にすることもないそうなので、それなりの数は集められるとのことだ。


 ちなみに、羽ペンの素材には鵞鳥の羽が一番だそうな。


 で、気になるお値段の方が、またえらいことに。……いや、ゲームでの値段だと、一番安い家の値段を加味すると、かなり安い? いや、でも林檎一個一ゴールド、一番安い家五千ゴールド。建売だと……いや、考えないで置こう。価値なんて場所によりけりだよ、うん。


 魔法の値段は、素人魔法、見習魔法、玄人魔法、それぞれ一律で同じ値段に。

素人魔法が金貨二枚。見習魔法が金貨三十枚。玄人魔法が金貨百枚。となった。玄人魔法、ひとつ白金貨一枚だよ。


 個人で買うのは厳しいのではなかろうか。


 そして魔法の杖。これがかなり値段付で揉めた。で、あまりにも決まらないので、魔法に当てはめた場合、どのランク、素人なのか、見習なのかとなって、魔法に準じた値段+杖の実費代となった。


 ということで、

 【火炎の杖】【電撃の杖】が金貨二枚+杖代


 【火炎矢の杖】【電光矢の杖】【灯光の杖】【鎮静の杖】【治療の杖】が金貨三十枚+杖代


 となった。杖の実費がいくらかかるのか分からないので、こんな感じだ。


 最後に薬。


 ダンジョン産のポーションのこともあったんだけど、大量生産可能ということで、最終的には安価にすることで決定。

 現状ではダンジョン産と同じ値段ということに。金貨十枚だそうな。

 これでもかなりの安値になっているとのこと。実際には白金貨単位で取引されることもあるらしい。


 まぁ、時間が掛かるものの欠損も修復するからね。体を治せるなら、お金はいくらでも出す人はいるだろうね。




 そんなこんなで会議は終了した。疲れた。あの髭の一件がなければ、ここまで疲れなかったと思うけど。


 あ、帰り際に、勇神教の人に呼び止められたよ。呪いの指輪を外すにはどうすればいいのか? なんて聞かれたよ。


 知らないよ。


 どうやっても外れないっていうから、ダンジョン産のポーションが用意できるのなら、指を斬り落とせばいいんじゃないですか? と答えたけど。そうしたらガックリと肩を落としてたな。


 私は万能じゃありませんよ。決まりきった形の魔法が使えるだけの小娘です。


 帰りも馬車で送ると云ってもらえたけれど、それを固辞して、ただいまテクテクと徒歩で移動中です。

 すっかり忘れてたんだよ。作業台の発注。図面を渡して、錬金台と付術台を作ってもらわないと。あと、杖用の付術台と呪文合成台も作ってもらわないといけないんだけど、こっちは図面がないから、実物を見てもらわないとダメなんだよね。


 そんなわけで、またしてもゼッペルさんの所へ向かっています。あ、その前にお肉屋さんに寄って行かないと。


 ◆ ◇ ◆


「できたぞ」

「え?」


 なんか前にやったようなやり取り。

 はい、ここはゼッペルさんの工房ですよ。今は応接室でゼッペルさんと商談中?


 私は目をぱちくりとさせて、ゼッペルさんを見つめた。


「なに呆けてるんだよ。家具だよ家具」

「え? もうできたの? 結構な数だよ? はやくない?」

「……暇だったんだよ」

「えぇ……。塀をお願いしたじゃない。【アリリオ】から戻ってきたら、もう出来てたからびっくりしたんだけど」


 うん。しっかりできてたんだよ。仕事早すぎでしょ。

 まぁ、さすがに漆喰とかは乾き切ってはいなかったけど。

 花壇とかもできてたし。とりあえず肥沃土を入れて青茜を植えて、ついでに玄関脇の、ゲームでいうところの菜園にはドクダミと赤紫蘇を植えといたよ。


「塀は煉瓦を積むだけだからな。きっと嬢ちゃんが依頼するはずだ! って云ってゴーロの奴が適当に人を集めて煉瓦を焼きまくってたからな。材料があれば、あの規模の塀なら一日でできらぁな」

「じゃあ、暇だった訳じゃないじゃん」

「陽の高いうちに手が空いてたら暇だ。

 そんで塀を完成させた後、ひとりで黙々と家具を造ってるベルントを見てな『ぐずぐずひとりで作ってて、嬢ちゃんに不便をさせるな!』って、アロイスの奴が云いだして、まだ手がついてなかった予定分の家具を造りだしたんだよ」

「あぁ……」

「あとはなし崩しにみんな参加だ」


 なんというか、ありがたいんだけど、ワーカホリック過ぎない? なんだか仕事をしてないと死んじゃうみたいな雰囲気があるんだけど。


「これから持って行っていいか?」

「あ、うん。それと、また仕事の依頼なんだけど」

「お、今度はなんだ?」


 うわー、楽しそう。過労死とかしないよね?


「今回は私が依頼するけど、後から組合か教会か、どっちかから依頼が来ると思う」

「ん? いったい何を作ればいいんだ?」

「この作業台なんだけど。ちょっと特殊だよ。あと二種類あるんだけど、それは図面がないんだよ。実物は家にあるから、今日、家具を運んだついでに見てってくれないかな」


 云いながら、DLCの家具図面をだして、錬金台と付術台のところを見せる。


「また変わったテーブルだな。こっちは……これは蒸留器ってやつか? 帝国でもないと、このあたりだと誰も取り扱ってないぞ?」

「造れない?」

「こういうガラス細工を造ってるやつはいないな。取り寄せになるから、少しばかり時間が掛かるぞ。あとは、素材さえあれば大丈夫そうだが、さすがに月長石(ムーンストーン)とか孔雀石(マラカイト)はすぐに用意できないぞ?」

「それは持ってきてるよ。あと魔石も。どこに置けばいい? あ、ちゃんと魔銀(ミスリル)もあるよ。だから蒸留器以外は問題ないと思うんだけど」


 あ、あれ? ゼッペルさん、なんか驚いた顔してるけど、どうしたんだろ?


「ま、まぁ、なんだ、ブツを見せてくれ」


 云われ、テーブルのお茶を脇に退けると、布を敷いてインゴットと魔石を並べた。もちろん、背嚢からだしたふりをしながらインベントリから取り出しましたよ。


 月長石と孔雀石のインゴットを五つずつ。極大サイズの魔石も五つ。多分、これで作業台を一台ずつ作れると思うんだけど。あ、そうだ、【生命石】もだしておこう。でっかい塊をどどんと三つ。とりあえず、杖付術台にはみっつもあれば足りるだろう。あ、そうすると魔石が足りない。追加で十個だしてと。見た感じかなり使いそうなんだよね、杖付術台。


「木材とかはそっちにお任せするよ」

「また随分と立派な石を持ってきたな。というか、どんだけ持ってきたんだよ。これだけでも結構な価値があるぞ? この訳の分からん石も素材か? いったいこの作業台はなんなんだ?」

「それは今は秘密。あ、もしかしたら、そのうちここにも設置することになるかもしれないよ。こっちの方は特に。そうしたら面白いものが作れると思うよ。あ、この図面だと頭蓋骨なんて使ってるけど、ただの飾りだから、なにか別のにしてね。見た目がおどろおどろしいから」


 そういって付術台の図面を指差した。

 ここには鍛冶職人さんもいるしね。ダグマルさんを筆頭に三人。付術台があれば、そのうち魔法の剣とか作れるね。


「ほほう?」

「仕事っていうより、面白がって、いろんなものを作るようになるかもしれないけど」

「これで、なにか特殊なモノを作れるようになるんだな?」

「そ。情報が解禁されるまで待ってね」

「組合と教会が絡んでるんだろう? それじゃしょうがないな。楽しみに待つとするよ。よし、それじゃ家具を運んじまおう。あと、実物から図面を起こさないとだめなんだろ?」

「うん。よろしくおねがいするよ」


 そしてお茶をしっかりと飲んでからみんなで自宅へ移動しましたよ。距離的にはそこまで離れてないからね。




 で、自宅に到着。家具を運び込んでもらっている間に、ゼッペルさんとベルントさんに作業台を見てもらう。


 あ、メインホール用の大テーブルは案の定入らなかったので、ひとまず玄関先に置いて貰ってあるよ。そういえば、ベッドがしっかり入っているのを知って、かなり胡散臭げな目で見られたけど。


「このふたつがそうか。で、こっちとあっちが、さっきの図面の奴の実物か」

「そこまでヘンな作りじゃないっスね。これならすぐに作れそうっスよ」

「だがこれはかなり難しいぞ」

「……訳がわからないっスね」

「えぇ……」


 杖付術台を見て、ふたりが首を捻る。


 まぁ、真ん中で【生命石】が浮いているというか、固定されていなくて、ゆっくり回っていたりするからね。微妙に発光しながら。


「こっちの細っこい台は問題無いっスけど、これはちょっと。分解はしちゃダメっスよね?」

「さすがにそれは勘弁してください。んー、わかりました、なんとか図面を手に入れられるか、やってみます」


 手に入れられるかなぁ。というか、渡してもらえるかなぁ。これ作ったの常盤お兄さんだし、そもそも連絡とれるのかしら?

 さすがに使い走りみたいなことをアレカンドラ様に頼むのは気が引けるんだけど。


 クッ。まさか作業台の制作時点で蹴躓くとは思わなかったよ。もしかしたら、魔法普及は予想以上に前途多難なのかもしれない。

 でも無責任にバラまくわけにもいかないし、その上それだと私ひとりで広める羽目になるしなぁ。呪文書やらなんやら作れる人を他に作らないと、意味ないからね。


「それじゃ嬢ちゃん、ひとまずこの作業台は、作るのを後回しにするぞ。ほかは問題なく作れそうだからな」

「あ、うん。お願いするよ。そうだ、あっちのアレ。蒸留器が載ってる方だけど、あれ出来たら組合の方に搬入してね」

「ん? 組合の依頼なのか?」

「ううん。私だけど。とりあえず勝手に組合に置く。まぁ、おじさんが持ってく前に許可は取っておくよ。組合でも必要になるものだけど、多分、現状だと予算が出ないと思うのよ、実績もなにもないから。でも代金はのちのち回収できると思うから、きっと大丈夫」

「また適当だな、嬢ちゃん」

「もし代金回収できなかったら泣くからいいよ」


「親方ーっ! テーブル以外運び終わりやしたぜー!」


 おぉ、軽口とか叩いてたら作業が終わったみたいだ。

 そうそう、すぐそこの角のデッドスペースにも、樽が入ったよ。これで杖を立てて置ける。

 まぁ、私がどれだけ魔法の杖を作るか分からないけど。


「ベルント、描けたか?」

「えーっと、はい、ばっちりっス」

「よっし、それじゃ帰るか。じゃあ、嬢ちゃん、満足のいくものをしっかり(こさ)えるから、楽しみにしてな」

「うん、よろしくね」


 こうして仕事を終え、ゼッペルさんたちは帰っていった。


 そしてお家の中。


 なんということでしょう、あんなに殺風景だった家の中が、家具で溢れているでは――いや、溢れてはいないな。

 でもいい感じに、こう、ごちゃっとしたね。いや、云い方が悪いけどさ。


 と、それじゃ大テーブルを運ばないと。


 外にでて、念のため【霊気視(オーラヴィジョン)】で周囲を確かめて、よし、誰も見てはいないな。テーブルをインベントリに収納。でもって、メインホールにどん。


 おぉ、まさにゲームでみた光景まんまですよ。テーブルが大分立派な感じだけど。


「収納がたくさん増えたわねぇ」


 いままで姿を消していたララー姉様が現れ、私に後ろから抱き着いてきた。


「これでお皿やら鍋やらをちゃんとしまえますよ」


 いままでは出しっぱなし、もしくは私のインベントリの中だったからね。これでインベントリの整理も多少はできますよ。

 あ、マネキンと武器収納棚に盾の飾り台もできたんだ。

 よし、ここには黒檀鋼の鎧を飾っておこう。ふふふ、お気に入りなんだよね、この鎧。ドワーフ鎧の、ロボットみたいな重厚な鎧もいいけど、黒檀鋼の、重装鎧なのにスマートな感じもいいのよね。なにより、デザインがシンプルなのに格好いい。


「そうそう、キッカちゃんの注文、目途がついたわよぉ」

「本当ですか?」

「蟹と鷹は大丈夫。椿の方も問題なし。これは私もありがたかったしねぇ」


 おぉ、やったぁ。


「で、キッカちゃん、明日のご予定は?」

「明日は一日料理です。ちょっと試したいことができたので。あと、ゼッペルさんたちに差し入れをつくらないと」


 ふふ、ちょっと思いついて、作ってみようと思ったものがあるんだよ。


 多分、作れると思うんだ。ただちょーっと時間が掛かるけどね。


 さー、明日も頑張るぞー。




誤字報告ありがとうございます。

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