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246 ダンジョン映像記録



『……これで大丈夫かな? 大丈夫だよね。録れていると思おう。確認できないのが辛いな』


 壁一面にお姉様の顔が映し出されました。顔、といっても目の部分だけですが。

 そしてすぐに顔全体が映し出されます。いつものような仮面も目隠しもしていない素顔のままのお姉様。


 どうやら、録画デッキを起動しているところのようです。カメラに近いのも致し方ないと思いましょう。

 会場に綺麗に並べた椅子に座っている調査隊の面々がざわめいていますが。


 あぁ、なるほど。お姉様の姿を見るのは初めてと……。ならば仕方ありませんね。私だって、いまだにドキリとさせられることがありますから。

 本当に、女神様にそっくりですからね。


 お母様がお姉様に、演劇で使うディルルルナ様の衣装である、鬘と角を着けてもらったと聞いた時には悔しく思ったものです。


 壁に映し出されたお姉様はカメラから離れたのでしょう。全身が映っています。そして背後に見える巨大な入り口。煉瓦状の大きな石を積み上げて作られたことが分りますが、その全容は映っていません。入り口の左側の部分が映し出されているだけですし。


 さて、本日は王宮にて、調査隊の面々を集め、キッカお姉様が記録してきたダンジョンの様子を上映することになりました。その記録を再生する魔道具の操作の関係上、イリアルテ家の二女である、私も王宮に来ています。


 本当なら、一度この記録を見てからこの上映会を行った方がよかったのでしょうけれど、お父様が先走った感じでアキレス王太子殿下に連絡をして、場を整えてしまいましたからね。


 なにが記録されているのか確認できていないので不安ですが……お姉様、信じていますよ。


 あ、お姉様が入り口にまで移動……って、あの詰まれた石ひとつがお姉様の背丈と同じ高さ!? どれだけ大きいのですか、そのダンジョンは!?


 さすがにその巨大さに会場もざわめいています。


 会場には最前列に国王陛下をはじめ、王家の方々が。その後ろに近衛。そして黒羊騎士と赤羊騎士が座っています。


 私はというと、最後列で、この『ぷろじぇくたー』と再生デッキを操作しています。といっても、再生ボタンを押し、映像のサイズを壁の大きさに合わせ、音量を調節するだけですが。


『――この通り、このダンジョンは非常に大きいです。中にいる魔物、魔獣も大型のものばかりとなっています。

 では、次は浅層へと向かいます。少々時間が掛かりますので、一度ここで切ります』


 そう云ってお姉様が近づき……って、お姉様! 胸がいっぱいに映っているんですけれど! いえ、別に露出をしているわけではありませんが、これは……。


 急に、映像が激しくくるくると回りだしました。慌てるお姉様の声から察するに、多分、カメラを手に取る際に手を滑らせたのでしょう。


 そして最終的に、カメラはまたしてもお姉様の胸を大写して止まりました。それもお姉様が身に付けている革鎧の襟元……というよりは胸元ですね。谷間がみえます。


 会場のざわめきが大きくなりました。


 ……ちょっと苛っとしますね。


 右側から妙な気配を感じるので、そちらに目を向けると、お父様がお母様に太ももを抓られていました。その隣ではアレクサンドラ様がにこやかな笑顔で、ダリオお兄様の腕を掴んでいます。力強く。


 今日と明日は、本当に必要なこと以外、口をきかないことにしましょう。


 丁度目の前には、黒羊騎士の面々が座っています。


 黒羊騎士団長エスパルサ公爵をはじめ、調査隊に参加する黒羊騎士数名。なにも後列に座らずともよいと思うのですが、もしかしたら、赤羊騎士の隊員の反応を見ているのかもしれません。


 いまは、あの映った部分から、入り口の大きさがいかほどであるのかを推測しています。先月、お姉様が王家に献上したという巨人の背丈も加味し、最低でも十メートルの高さはあるだろうと話しているの聞こえてきました。


 十メートルもの高さの入り口。ちょっと想像がつきません。【アリリオ】も大概大きいですが、それ以上です。


 一時画面が真っ暗になり、数舜後、再び映像が壁に映し出されました。


 それは広い草原。彼方に、天に届くような……柱? が映っています。ここどこでしょう?


『ここがダンジョンの浅層部分、第一階層です。見ての通り平原となっています。まるで屋外のようですが、ここは確かにダンジョン内。屋内です。

 その証拠に、空には太陽がありません』


 そういって映像は上を向きます。広がる青空と、白い雲。それらを追うように空全体を見渡しますが、どこにも太陽がありません。


『このダンジョンは終始こんな感じの場所です。ですが、昼夜はあります。外にあわせてあるようです。では、適当になにか魔物を一頭狩ってみます』


 草原を進んでいきます。遠くに大きな角をもつ四足獣の姿も見えます。


『えーっと、ビッグホーンは手を出さなければ大人しいし、なにか丁度いい魔物はいないかな』


 進みながら、この浅層部の気候などをお姉様が説明しています。また、ゴブリンなどがここで集落を作っている場合もあるとのこと。


 五階層までは、危険な魔物はほぼ一種類だけであると説明していきます。


 お姉様、この移動時間を無駄にしないために、いろいろと話しているようです。いえ、見ているであろう調査隊の面々を飽きさせないために、状況を逐一話しているのでしょうか。


 急に視点が下がりました。お姉様がしゃがんだようです。


 そして画面に映る、お姉様の左腕と弓。グリップの上下に、水晶の塊が付いたような、変わった弓が映し出されました。そしてその弓のグリップ近くに、薬壜が逆様にセットされています。


 弓を寝かせたまま矢を番え、左手人差し指でセットした壜をちょんとズラすように突つく。そして放たれる矢。

 直後にもう一射。


 矢の軌跡はかなり弓なりに飛んでいきました。


 えーっと、お姉様。どれだけ遠くに飛ばしたのですか? その、普通の弓兵の放つ矢の軌跡とはまるで違うのですけれど。


 視点の高さが上がり、移動速度が速くなる。どうやら走っているようですが、あまり速くは感じません。お姉様自身、走るのは苦手と云っていましたからね。


『速く走ると頭がこんがらがって転ぶんです』


 こんなことをお姉様が云っていたのを思い出します。なぜ頭が混乱するのかが不明ですけれど。


 腰ほどの高さの低木が群生しているところに、その藍色の巨体は転がっていました。首に一本、耳から頭蓋を貫いているのが一本、しっかりと矢が突き刺さっています。


「あの距離でしっかり仕留めるなんて凄いですね」

「できるか?」

「無茶いわないでくださいよ。あんな長距離、どうしても距離感がズレますって。一射目で距離を測ればなんとかなるでしょうけれど、普通は一射目で逃げられます」


 少し前の席に座っている黒羊騎士団の方々が、今見たことについて話しています。


 えぇ、やっぱりキッカお姉様が映像でやってみせたことは、常識的ではないようです。


 お姉様は妖犬と紹介して、その階層の説明は終了となりました。


 私はデッキから記録媒体を外し、次の記録媒体へと切り替えます。


 えーっと、記録媒体の水晶を取り外して、二本目の水晶を……あれ? ゴブリン集落征伐と書いてありますけれど。でもナンバリングは二番となっています。


 これでいいんですよね?


 ひとまず再生をしてみましょう。


 今度は画面いっぱいに葉っぱが映し出されました。まるで、藪の中にでも隠れているようです。


『えー、先にゴブリンやコボルドの集落が作られている場合があると云いましたが、またしても作られていました。

 この間しっかりと潰したんだけれどな。まったく、どれだけいるのよ、あいつら』


 お姉様、ゴブリンの集落を見つけたみたいですね。


『えーっと、映ってるかな? あんな感じですね。見過ごすわけにもいかないので、ちょっと征伐してきます。さてどうしようかな。狙撃でチマチマだと時間がかかるし、なにより矢が足りないしなぁ……』


 弓を構え、集落から離れた個体を次々と射貫いていきます。とはいえ――


 えっと、見る限り、これ、集落って規模じゃありませんよね? すごく大きいんですけれど、いったい何匹いるんですか? これ。


 集落の外を離れてウロウロしていたゴブリンを射貫いて始末した後、お姉様は目の前に右手を掲げ、そして集落に向かって突き出しました。


 魔法。でも放った魔法は【灯光(メイジライト)】。壁や天井に光源を張り付ける灯りの魔法。


 え? なんで?


 手から放たれた魔法の光はまっすぐと飛び、集落奥の建物の壁に張り付くと、そこで煌々と輝きだしました。


 たちまち、そこへ周囲のゴブリンたちが集まり、ギャアギャアと騒いでいます。


 そしてその集団の最中へ、お姉様は再度魔法を撃ち込みました。


 掌から放たれた赤く燃えた火の塊が突き進み、ゴブリンに激突するや大爆発を起こします。そして吹き飛ぶゴブリン。炎上する小屋。ゴブリンたちはパニックに陥っています。


 そしてそこへ容赦なく火の玉を次々と撃ちこんでいくお姉様。


『うーん。ちょっと時間が掛かりそう。一度録画を止めますね』


 一度真っ暗になり、そして再び映像が映し出されました。


『征伐終了しました。前回ほどの数がいませんでしたけれど、ちょっと時間が掛かりました。女王がいなかったので、さほど厄介ではなかったです。妖術師がトップでしたしね。

 調査隊がダンジョン入りした際にも集落ができている可能性があるので、お気を付けください。では、次は上層部へと入ります』


 お姉様の足元に、妙に“細長い”という表現がぴったりなゴブリンが転がっています。それはそれは綺麗に眉間に矢を突き立てて。


 またも画面が真っ暗に。


 そして次に映し出された景色は森。それもとてつもなく巨大な樹の生い茂る森でした。


 魔物が大きいことは聞いていましたが、樹まで大きいのですか、このダンジョンは。


 そしてお姉様は上層部は平原が森になっただけと説明。そして浅層部のフロアガーダーとボスの説明をしています。


 フロアガーダーは身の丈七メートルもの巨大な雌鶏。とてつもない大声で鳴くため、耳栓は必須とのことです。お姉様はその鳴き声で聴力を失ったといっていました。回復薬(究極)があったから治療はできたものの、この下のランクの回復薬で治療できるかは不明とのこと。

 また、この雌鶏はコカトリスを産みだすため、接敵後は、速やかに倒すようにと説明しています。


 ……いや、お姉様。そんな巨大な鶏をどうやって倒すのですか? 動きが鈍いとはいっていますけれど、その巨体に見合った耐久力はあると思うのですが。


 ほら、会場がざわついていますよ。


 あぁ、ここにお姉様はいないんでした。「バイコーンを捕まえないと」と云って、一泊しただけで、今朝方、王都を出発してしまいましたからね。


 次いで、ボスのトロールについての説明をしています。足をロープで引っ掛けて転ばせて、みんなで囲んで殴ればいいとか云っていますけれど、暴れますよね? 結構危険だと思うのですけれど。いや、頭に油壺を投げつけて火を掛ければいいって、また恐ろしいことを……。


 そして上層階層にいる魔物を紹介しています。


 のっしのっしと歩いている巨人。棘だらけのドラゴン。強面の二足歩行のドラゴンに、ずんぐりした四足の温厚なドラゴンと……ドラゴンだらけですね。


 最後に紹介された温厚なドラゴンはちょっと可愛らしかったです。大きかったですけれど。……え、食用に繁殖させる?


 次いで中層部。沼に丸太橋を連結してつくった道が伸びているフロア。不意にお姉様は屈み、遠くの方を二足で歩いているピンク色の巨人? に向け、矢を射かけ始めました。


 一射目、命中。目標が足を止めます。二射目命中。目標が辺りを見回します。三射目。躱されました。こちらに向かって移動を開始。


 さらに続けて矢を射かけます。目標の巨人? は途中、橋の上でくつろいでいた亀を踏み潰し、こちらへと突き進んできます。が、七射目がその魔獣の目を射貫いた直後、そのままつんのめるように倒れ、動かなくなりました。


 そしてお姉様が上層のフロアガーダーとボスの説明をしはじめます。フロアガーダー、お姉様は中ボスと呼んでいますが、それは背中に棘がたくさん生えていた竜とのこと。先ほど映像に映っていたドラゴンですね。突進に要注意とのことです。そしてボスが、いまお姉様が倒したピンク色の巨人……ではありませんね、これ。このピンクの魔獣の強化版とのこと。


 ……いや、あの、お姉様。戦い方に関して、頑張れ、と、ひとことだけなのはどうかと。


 そして下層。砂です。一面砂です。そして非常に暑いとのこと。


 巨大な昆虫に砂に潜る魚と、見たこともない不思議な魔物がいます。あ、赤羊騎士団の人が、昆虫の方は見たことがあるみたいですね。森でたまに見かけるようです。掌サイズのものを。


 でも映像に映っているモノは、見上げるほどに大きなもの。


 え、これが中層部のボスの劣化版ですか。外殻がとんでもなく硬いと。武器での討伐方法はちょっと思いつかないとお姉様は云っていますね。いや、お姉様、街壁を一撃で穴を空けるくらいの威力が出せればって、どうやればそんなことができると……。


 あ、ここでこの記録媒体に録画されているものは終了ですね。で、次が最後の……なんだか注意書きが記されています。


「お父様」

「どうした? リスリ」

「問題が。最後の記録ですが、問題があるようです。公開は確認してから決めてくださいとあるのですが」

「一応、確認はしてあるが、公開の是非か……。何分、今回の事は急に決めたからな」

「どうしましょう?」

「フロアガーダーとの戦闘記録は少々ショッキングだったからな……。アキレス殿下と話してくる。リスリは魔道具に魔石を補充しておけ」


 ひそひそとお父様と相談します。魔石はまだ大丈夫ですが、これは時間を稼げということでしょう。会場にいる調査隊のみなさんに聞こえるよう、その旨を話し、十分ほど休憩ということにしました。


 お父様は最前列の王家の方々のところへと説明に行きました。


 お姉様が注意書きとか、これにはなにが記録されているのでしょうね? というかお父様が即座にこの場を設けなければ、きちんと確認できたのに。というか、お父様はいつのまに見たんでしょうか。あとで問い質しましょう。


 ……あ、戻ってきました。


「ここでのことは緘口令を出すとのことだ」

「あ、公開するのですね。わかりました」


 休憩も終わり、用を足しに行っていたと思われる調査隊の皆さんも既に席に戻っています。

 カーテンが閉められ、部屋が暗くなったことを確認し、記録を再生します。


 映し出されたのは装飾の施された巨大な扉。


 お姉様が扉に触れると、扉がゆっくりと開いていきます。当然ですが、私はダンジョンに潜ったことはありません。ですからもちろん、こういった、いわゆるボス部屋というものも初めて見るものです。


 この先に強者がいる。


 それがわかっているだけにドキドキします。いえ、この高揚感も、お姉様が無事に戻って来ているからでしょう。


 扉が開き、室内へとゆっくりと踏み込みます。そして閉まる扉。


 えーっと、なにもいませんね。周囲を見回していますが、なにも映っていません。

 警戒するように進み、足を止めたかと思うと、お姉様がなにかを取り出しました。


 えーと……銅貨? あ、投げた。


 ……は?


 会場でもガタガタと椅子を引く音が聞こえ……あ、誰か椅子ごと転倒しましたね。凄い音がしましたよ。


 というか、なんですかあれ!? 巨大なヘビ……じゃありませんね。ミミズ?


 再び砂に潜り、こっちに向かってきます。砂が凹むような跡がこっちに向かってきますから、きっと砂中を進んできているのでしょう。


 お姉様が逃げ出しました。


 えぇ、当然でしょう。砂の中にいる生き物をどう攻撃しろと。砂が天然の盾となって、ダメージなどさして与えることなどできないでしょう。


 お父様を見てみます。いまでこそ落ち着いて……いえ、けっこうやんちゃですけれども、昔は血鬼などと呼ばれた暴れん坊で、ダンジョンを荒らしていたことは聞いています。

 お父様ならどう戦うかを……あ、ダメですねこれ。先に見ていたハズのお父様も、顔を引きつらせて映像を見ています。


 再度、異様な音が響きます。


 逃げるお姉様が振り向き、砂中から飛び出したフロアガーダーの姿を確認します。直後、フロアガーダーの口が光ったかと思うと、すぐ近くに光が当たり爆発しました。


 お姉様も矢を番え、矢を射ます。が、矢はフロアガーダーの外殻を穿つことはできず弾かれてしまいました。


 再びお姉様が逃げ出します。そして追うフロアガーダー。


 え、これ、どうするんですか? 手詰まりじゃないですか?


 そう思っていると、お姉様は魔法を使い始めました。炎の犬を次々と呼び出していきます。


 私が伝授された【走狗】の炎版でしょうか? 炎の犬はフロアガーダーに突撃し、爆発していきます。


 え、そういう魔法――いえ、違いますね。炎の犬は噛みつこうとしています。が、なんらかの攻撃を受けて倒されているのでしょう。ただ、倒されると爆発するみたいですが。


 そこからは炎の犬を使った単調な戦いが続きました。逃げながら炎の犬を放つ。ただそれだけですが、他に手があるようには見えません。一応、怯んでいる様子はあるので、効果はあるようですが……。


「どうやって倒せばいいんだ?」

「魔法を使ってもこれなんだろ?」

「武器だけで勝つとしたら、どう戦えばいいんだ?」


 調査隊の面々がざわつきながら相談を始めました。それもそうでしょう、これと戦うことになるのかもしれないのですから。

 もっとも、下層部まで行くのであれば、でしょうけれど。


『こうなったらやってやらぁっ!』


 急にお姉様の声が響き渡りました。映像にチラチラとなんども映っていた、青紫色のウサギが逃げていくのが見えます。先ごろからお姉様がペットにしているウサギです。


 お姉様は足を止め、振り向き、砂中から飛び出しているフロアガーダーと対峙しました。


 そして、前傾にやや身を屈めます。


 あぁ……でも……。


 フロアガーダーの口が光ります。


 会場から悲鳴じみた声が上がります。危ない! 逃げろ! と様々に。ですが――


 お姉様の背後で爆発が起こります。


 避けた? いえ、お姉様は一歩も動いていません。そして――


『【雷嵐(サンダーブラスト)】!』


 お姉様が掛け声とともに、手首を合わせた両手を正面に突き出しました。


 そしてその両掌から発せられる……雷? 雷がフロアガーダーの岩のような体を打ち据えながら、その先端である口に集中します。


 数舜後、フロアガーダーが仰向け? に倒れました。


 お姉様が慌てて倒れたフロアガーダーを迂回しつつ、頭側へと走って行きます。


 そして倒れた頭が見える位置に陣取り、弓を構え矢を立て続けに三射。すべての矢は倒れたフロアガーダーの口に吸い込まれました。きっと、その奥に突き刺さったに違いありません。


 ビクン! と大きく震えた後、フロアガーダーはもう動くことはありませんでした。


 お姉様の大きく息をつく音が聞こえます。


『疲れたぁ……。はぁ……。調査隊はこんなの相手にしない方がいいと思います。とんでもなく面倒臭いです。あぁ、そうそう。モンゴリアン・デス・ワームはこの環境からは出ないと思われますので、安心してください。あとは……いいかな? うん。では、これで記録を終わります。ありがとうございました。お疲れ様でした』


 いや、なんでお礼を? お疲れ様というのは……まぁ、長く記録を見て、疲れてはいますけれど。


 あ、真っ暗になりましたね。記録が終わりました。


 王太子殿下が会場の面々に、今日見たことについて緘口令を敷いています。あんな魔物がいるというのは知りませんでしたしね。

 調査隊のみなさんも、対抗策が直ぐには浮かばなかったようですし。


 幸いなのは、砂のある場所が生息域であるということでしょうか。


 解散が宣言され、本日の集まりはこれにて終了です。


 では、魔道具を片付けましょう。


 お父様が王家の方々といろいろと話し合っています。そういえば、あの赤竜の映像はありませんでしたね。

 確か、最下層の魔物と云っていましたか。……多分、意図して記録してこなかった、ということですよね?


 悪夢のような場所とも話していましたしね……。




 この次にお姉様と会ったときには、しっかりと【バンビーナ】のことも含めて聞きましょう。


誤字報告ありがとうございます。

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