表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/363

215 なんで倍近く大きいのさ


 どごん!


 もの凄い振動を周囲に撒き散らして、恐竜が壁に激突した。


 これがゲームとかだったら、頭の周りを星がくるくると回って朦朧となっていたり、もしくは壁に突き刺さってもがいていたりするんだろうけれど――


 恐竜は激突の衝撃などものともせず、こちらにのそりと向き直る。


 ははは、現実は非情である。


 こいつはどうしたものか。ジャイアントバイソンよりも厄介だ。突進のスピードは遅いけれど、冷気魔法の効きが悪い。効いていないわけじゃないけれど、即時止められるだけの効果は発揮していない。


 スケ魔姐さんも【氷杭】をバシバシ撃ってしっかりと当てているけれど……。


 こいつ、ちょっとひんやりする、くらいにしか思っていないんじゃなかろうか。


 こうなってくると、魔法より弓で攻撃した方が良さそうなんだけれど、足が止まるからなぁ。


 さすがに突っ走って来る巨大質量の前に立って、度胸試しみたいな調子で弓を射たいとは思わない。


 いまだからはっきり云うけど、私が完全なインドア派で、学校にも送り迎えして貰ってたのって、足が悪いからというよりも、車怖いの方が大きいんだよ。


 乗る分には問題なかったんだけれどね。あぁ、でもそれは運転している人がお父さんかお兄ちゃんだったからかも知れないけれど。


 なにが云いたいかと云うとだ。もう撥ねられるのは嫌だ!


 あ、そうだ!


 タイミングは難しいかもしれないけど。撥ねられたのに撥ねられていないという戦い方にしよう。一射しかできないけど。


 【魔氷の弓】を再度インベントリから取り出す。相変わらず矢はケチって鉄の矢だけれど。


 既にスケさんは撥ねられて戻されている。ビーは小さいせいか、歯牙にも掛けられていないみたい。スケ魔姐さんはなぜか無視されている。チマチマと魔法を当てているというのにだ。


 恐竜は私を追っかけてきている。さすがに逃げ切るのは無理だ。


 私の足が遅いというのもあるけれど、あんなずんぐりした姿でも、あの巨体となると足の長さは私よりもずっと長い。動きは鈍く見えても一歩の移動距離は長いのだ。


 そういや、巨大人型ロボが歩く場合、つま先の速度は音速を超えるとかなんとか。いや、ロボットの大きさ……背丈によるとは思うんだけれどね。


 そこまでいかずとも、巨大なモノから逃げると云うのは至難だと思うのですよ!


 ということで、逃げ切れないので逃げるのを止めます。


――――――(何モノも我を)―――――――――(傷つけること叶わず)


 言音魔法【幽体化】を発動。実体を失くすことで、あらゆる攻撃を無効化する魔法だ。欠点としては、こっちもなにもできなくなる……というより、なにか周囲に変化をもたらすことをすると、魔法が解けるってことだけれど。


 足を止め、弓を構える。


 恐竜が私に向かって体当たりをし、そのまますり抜けて私の前方へと駆け抜けた。


 す、すり抜ける瞬間って、なんというか、感触みたいなのがあるんだね。思った以上に気色悪い。


 異様な感覚に震え上がりつつも、通り過ぎた恐竜に向けて矢を放つ。


 矢は尻尾の付け根へと突き刺さった。


 更に【氷嵐】も撃ちこむ。


 とにかく足を鈍らせないと、まともに戦っていられない。


 突然の背後からの攻撃に振り向く恐竜の顔に【氷杭】が突き刺さっていく。


 スケ魔姐さんはまだ健在。とはいえ、永続召喚じゃないから、そろそろ戻るだろう。


 スケ魔姐さんを追加で召喚。


 冷気魔法で恐竜を攻撃していく。ビーも冷気魔法を使い始めた。あの子は本当に多才だな。


 と、距離を取らないと。


 どうしようか。【不可視の指環】をつけて戦う?


 下手に姿を消して、ビーを狙われても困るんだよね。あのこちょこちょこ瞬間移動じみたことするから、あの恐竜がどう動くか分からなくなりかねないし。


 早く寒さで鈍ってくれないかな。あ、最初のスケ魔姐さんが時間切れ。


 囮要員としてスケルトン兵を召喚。スケさんは盾を構えて突撃していった。




 こうしてスケルトンに注意を引いてもらいつつ、冷気魔法を中心に攻撃を加えることしばし。


 やっと恐竜の足が止まった。


 のそりのそりとしか歩けなくなった恐竜に、更に魔法を掛けていく。


 完全に足が止まり、倒れてから数分後、奥の扉が開いた。


 ボスが死んだという証拠だ。私は思い切り深く息をついた。


 疲れた。本当に。


 なんだろう? 皮膚の硬さとかが関係しているのだろうか? ジャイアントバイソンを相手にしたときは、こんなに苦労しなかったよ? 頭に【氷杭】を数発撃ちこんだだけで、あっという間に動きが鈍ったからね。


 と、そうだ。こいつの名前はなんぞや。


 【菊花の奥義書】を出して、魔物の頁を開いて探す。


 えーと、爬虫類で検索? それとも竜の方が早いかな? あ、あった。こいつだ。アンキロサウルス。体高一.七メートル!? え? こいつ、三メートルくらいあったんですけど!?


 ダンジョン仕様? 奥義書の画を見る限り、全長は……尻尾まで合わせれば五メートルくらいありそう。なら、このサイズでいいじゃないのさ。なんで倍近く大きいのさ。


 凍死したアンキロサウルスを見やる。


 まぁ、いいか。生きてるし。


 半ば凍り付いたアンキロサウルスに手を触れ、インベントリに格納する。


 そういえば、恐竜って美味しいんだろうか? 鰐は美味しいとか聞いたことがあるし。というか、インベントリに鰐が入ってるんだっけ。今度、唐揚げにでもしてみよう。――いや、肉の味の確認なら、普通に焼いて食べるのが先か。


 うん、どうせ隣の宝物部屋で休憩するんだし、鰐肉を焼いてみよう。


 ビーと一緒に宝物部屋へと移動する。


 うん。やっぱり体育館並に広い。左にちょこんと宝箱。正面に大扉。右にはショートカットの普通のサイズの扉。


 まずは宝箱を開けよう。


 んんっ? ペンダント? 


 中に入っていたのは、六芒星をあしらったペンダントトップのペンダント。六芒星の中には、濃い青色の石が嵌っている。


 円の中の六芒星の中央にラピスラズリ。


 ペンダントっていうよりは、お守りみたいな感じだね。


 インベントリにいれて確認してみる。



 【聖護符カノン】 不死の怪物への特効追加。不死の怪物化無効。



 は? え? もしかしてこれも聖武具? 装飾品があるなんて聞いたことないよ? というか、聖武具系は、みんな対不死の怪物用の武具なのか。

 不死の怪物化無効って、ゾンビ化を恐れずに戦えるってことだから、凄い有用だと思うよ。私は作れないしね。


 あ、これがあれば、【アリリオ】の二十層とか安泰……とはいかないか。多分、数の暴力が待っているはずだからね。

 とはいえ、戦いやすくなるのは確実だ。


 まぁ、私には不要だけれど。これも王様に渡してしまおう。


 それにしても、こういうものは日本語表記だと凄い違和感だな。護符って表記されているけれど、お札じゃないもんねぇ。多分、タリスマンとかアミュレットってことなんだろうけれど。


 まぁ、いいか。


 あとはメダルを回収してと。


 それじゃ、鰐を食べてみよう。


 インベントリで解体して、お肉だけをとりだしてと。


 ……足を丸ごと一本出して見たけれど、絵面が凄いなこれ。五メートルクラスの奴ばっかりだったから、かなり大きいし。


 とりあえず塩胡椒をして、網焼きをしていこう。


 七輪に火を熾して、脂を塗った網を乗せて、その上にワニ肉をドン。


 ……さすがに肉がデカすぎるな。切ろう。


 お肉を適当な大きさに切り分けて、あらためて網の上に。じっくり焼いて行こう。


 残りの肉はお酒と醤油で作った簡易のたれに漬けておこう。お酒はジャガイモから作ったアクアビットっていうお酒だよ。私が適当に拵えた奴だから、お酒としての味は残念だと思う。


 待つこと暫し、焼き上がったお肉をお皿に取り分ける。


 ひとつはビーに渡して、ひとつはもちろん私のだ。


 追加のお肉を網に載せてと。


 それじゃ、いただきます。


 さて、ワニ肉なんて初めて食べる訳だけれど。うん。堅めの鶏肉? 胸肉に近い感じかな? それよりもタンパクな感じにも思えるけれど。


 でも味の抜けたカモ肉ってわけでもないし。


 単に焼いただけだと、いまひとつ味気ない感じかなぁ。これは唐揚げとかの方がよさそうだ。


 簡単に素揚げして餡掛けにするとか?


 まぁ、焼いたからには残さず食べるけれど。


 ただ、この手の味の薄い料理は、私にとってはいろいろと問題でもあるんだけれど。


 いや、半ば作業みたいな感じで、ある限り延々と食べ続けちゃうんだよ。それこそ食べ過ぎっていうくらいに。

 中学の時にいちどやらかして、一食で二キロ体重が増えて真っ青になったことがあったからね。


 ……なんでアノ時、延々と焼き鳥を食べまくってたんだっけ? 私。


 どっかから貰った鶏胸肉十キロの処分が間に合わなかったんだっけ? お父さんもだったけれど、お兄ちゃんも妙な貰い物をしてくるからなぁ。


 確かあの鶏肉、鶏肉じゃなくて駝鳥だと思ったし。


 あ、お肉終わった。網の上のお肉は……うん、火は通ってるね。


 それじゃ焼けた肉を皿に載せてと。


 まだタレに浸しただけみたいな鰐肉を網に載せて焼き始める。


 あ、ビーも食べ終わったか。ん? 白菜?


 白菜を取り出し、剥がした葉を三枚渡す。


 野菜がないのもなんだな。また玉菜に塩を振って齧ってよう。


 バリバリと玉菜を齧りつつ、鰐肉をいただく。


 うーむ。もうちょっとこう、味の濃いものが欲しいな。まぁ、いまから別のなにかを用意するのも面倒だし、醤油ダレの鰐肉に期待するとしよう。


 漬け込み足りないから、望み薄だけれど。




 こうして、ダンジョンアタック八日目が終わったのです。


誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ