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214 上層階層部に突入


 結論から云うと、トロールは強くなかった。


 いや、きっとまともに戦ったら面倒臭いんだろうけれど、こっちにはまさに死兵となったスケさん――いや、骨だし、そもそも死んでるといってもいいんだけれど――が、トロールの足元でちまちまと注意を引き付け、その隙に私が狙撃。


 という策で戦闘開始。弓スケさんとビーは遊撃だ。


 一撃で終わった。終わっちゃった。


 あれぇ?


 完全に注意から外れた私の一射が、狙い通りに側頭部に命中。それで終了。驚異的な再生力なんて意味もないほどに、頭の中身が大変なことになった模様。


 尚、スケさんはまともに攻撃を喰らって、バラバラになった。とはいえ役目は立派に果たしてくれた。再召喚して褒めてあげよう。


 で、問題はこのトロールなんだけれど。


 持って帰ったとして、なにかに使えるのかな? ゴブリン並みになんの役にもたたない素材なら、持って帰るだけ無駄なんだけれど。


 そういや、トロールの虫歯(?)を指輪にしたアイテムがアイテム蒐集系RPGにあったっけ。虫歯の穴に宝石を突っ込んで、歯の根の二股になったところをいい塩梅に削って指を差し込めるようにした指輪。


 確か、自動回復機能付きだったかな?


 ……このトロールの歯を引っこ抜いて加工しても、そんなものはできたりしないよね?


 一応、インベントリに入れておこう。


 外傷は頭に空いた矢の痕と、スケさんが殴りつけた脛の傷くらいだからね。その脛の傷もほとんど治ってるんだけれど。死んだ後も治癒能力は残ってるんだね。いや、脳がダメになったからって、すぐに体の各機能が完全に止まるわけでもないか。


 人形に植え付けた髪の毛だって伸びるなんて話もあるし。


 あれ? あれは湿度の関係で伸びている様に見える、だっけ? まぁ、どうでもいいことか。


 さて、お宝部屋へと移動しよう。


 ボス部屋の奥。ここも扉が馬鹿でっかい。完全に巨人仕様となっているよ。もしこれが自動扉でなく、力で開ける羽目になっていたら大変だったよ。


 そして入ったお宝部屋。兼、次の階層へと続くスロープ部屋。


 この部屋もやたらと大きい。感覚的には体育館サイズだ。


 右の壁に扉が見える。あの扉は人間サイズだから、きっとショートカットの扉だろう。

 そうそう、ショートカットの出入り口、ダンジョン入り口の近くにあるんだけれど、あれ、ショートカットの扉を開けるメダルがないと見えないんだよね。見えないし、通り抜けることもできない。

 まぁ、通り抜けられても、扉が開かないから意味はないけれどね。


 で、左の壁沿いに宝箱がひとつちんまりと。部屋の大きさに対して、酷く場違いに思えるくらいに小さい。


 まぁ、それでも私ひとりくらいは入れるくらいに大きくはあるんだけれど。


 黒鉄で補強したような木製の宝箱。リベットをやたらと打ち込んであるこの重厚な造りは、なんていうんだろ、いいよね。


 この宝箱も持って帰るとして、中身はなんだろう?


 ということで、オープン。


 頭の中で、宝箱開けるときの定番のBGMを奏でつつ蓋を開ける。


 中に入っていたのは一振りの剣。それも、見た感じいたって普通。いや、普通と云うかなんというか、一切の遊び心がない代物。


 うん、普通、剣にしろメイスや斧にしろ、武器には職人のこだわり的な遊び、装飾があるものなんだよ。

 日本刀なら刃紋なんかがそんな感じ?


 これにはそういった物が一切ない。実用性一辺倒。かといって、使い潰す事前提の鋳造の粗悪品ってわけでもない。まさに【人斬り刀】なんて呼ばれるようなものの類にみえる。


 とりあえずインベントリ鑑定。



 【聖剣カノン】 攻撃力:七十五 重量:三キロ



 うわぁ、聖剣だぁ……。


 また扱いに困る物を拾ったな、これ。基礎能力は普通の剣の倍、いや、六倍くらいかな? 普通の鉄剣の攻撃力が確か、十二、三だったから。


 副次効果は……不死の怪物への特効。あとは【弱点看破】? 急所、じゃなくて弱点? 痛めている部分を見抜くってことかな?


 これ、どうしよう。この場所からしてディルガエアの管轄だろうから、王様に献上品として押し付けようか。


 さて、あとは……あ、メダル。


 六角形のトロールのレリーフのメダル。


 ここのメダルは六角形なんだね。各ダンジョンごとに形が違っているのかな? まぁ、一緒だとどれがどこのか分からなくなるか。


 聖剣とメダル、そして宝箱もインベントリに格納する。


 それじゃ、十一層、上層階層へと行こう。


 あっと、その前にスケさんを再召喚しないとね。


 スケルトンを再召喚する。


 紫色の円柱が立ち上る中に、スケさんが現れる。が、なんか変なポーズをとってるんだけれど!?


 なんだろう。この子はおかしな方向に育ってないかな? レブロンに添い寝させた時も、最初は嫌がってたけれど、途中からノリノリで遊んでたからね。


 ……弓スケさんが、あちゃー、とでもいうような仕草をしてるけれど。


 これが個性か。


 まぁ、いいや。先へ進もう。




 上層階層部に突入しましたよ。


 十一階層。ここは、というか、ここからは森林地帯になっているみたいだ。


 森林と入っても、生えているのは巨木。あれだ、昔、本かネットでみたアメリカの巨木の森みたいだよ。


 木々の間がかなり広い。足元もそこまで根っことかで凸凹してはいないね。地表部分に出ている根っこも、地表部分に広がらずに下へと伸びているようだ。おかげ存外に歩きやすくはある。


 とはいえ、樹々を縫うように進むわけだから、まっすぐではなく、くねくね曲がるように進むことになってはいるけれど。


 てくてくと、上へのスロープから右斜めに方向に向かって進む。多分、法則的にこっちに下へと向かうスロープがあるはず。


 あ、魔物発見。すぐに木の陰に入って見えなくなったけれど、多分、あれはトロールだ。肌の色がなんだか緑色っぽい灰色だったから、さっき戦ったボスのトロールより格下のヤツかな?


 ええと、レッサートロール? それともさっきのをボストロールとでも呼んだ方がいいのかな?


 相手にすると時間をとられるから、無視して進もう。


 召喚器を探す、っていうのなら、本当ならくまなく探した方がいいんだろうとは思う。とはいえだ、送り込んだ奴は人に持たせたいわけだ。でなければ知的生物。

 それを考えれば、手に入れやすい場所に放り込むのではないかと。


 となると、宝物部屋かボス部屋のどちらかだろうと私は睨んでいるんだ。

 実際、あの【へしゃげたピンクスライム】はボス部屋にあったし。


 まぁ、あんなところまでいける人類はいないと思うけれど。


 下生えがさほど鬱蒼とは茂ってはいない。おかげでさほどペースを落とさずに進むこともできている。


 ……今度は、なんかデカい狼の親分みたいなのが向こうにみえるな。ヘルハウンドの親分? あれはなんだろう?


 まぁ、相手にはしたくないから、無視して進むよ。


 そんな感じで、戦闘を避けつつ中ボス階である十五層にまで到達。なんとか一日で来ることができたよ。

 戦闘を一切していないからね。それとさすがに、上層階層には地上から侵入して集落を作っているような魔物はいないみたいだ。


 確認したのはゴブリンとコボルドだけれど、多分、オーク鬼とかもいるんじゃないかなぁ。


 ここも設定を変更して、そういった魔物を駆除するようにした方がいいような気もする。一応、大木さんに云っておこう。


 さて、目の前には中ボス部屋の扉。


 時間的には、ここで休憩するか、中ボスを倒して休憩するかのどちらか。


 まぁ、選ぶのは後者しかないんだけれどね。


 宝物部屋は一応、安地だからね。安心して休憩するなら、ここよりも宝物部屋だ。稀に下から魔物が上がってくることもあるみたいだけれど。


 それじゃ、扉に触れて中へと入ろう。


 部屋の中で、ソレは蹲るようにして佇んでいた。蹲る、というのは適当な表現ではないかもしれない。

 分かりやすく云うと、猫が良くやっているような恰好だ。四肢を畳んで腹ばいになっているような恰好。


 その状態で全高は三、四メートルほどだろうか。立ち上がれば六メートルくらいになりそうだ。


 赤茶色の固い皮膚に覆われた巨獣。その背からは棘……というよりは角という表現がぴったりなものが幾つも生えている。側面から突き出たものは大きく、背に並ぶそれは控えめな大きさだ。


 瞑っていた目が開いた。私たちを確認する。


 え、えーと……恐竜?


 なんか、こんなの見たことあるよ。名前はなんだっけ? アン……アン……アンギラ……は怪獣だ。でもこんなにでっかかったっけ? もうちょっと小柄だったような……。


 あ、立った。


 立って、身構え――


 走って来たぁぁっ!


 慌てて散開し逃げる。


 直後、四つ足の恐竜が今しがた入って来た扉に激突した。その際の衝撃による振動から、その威力が窺える。


 あんなの喰らったらとんでもないことになりそう。こういっちゃなんだけれど、私は交通事故経験者だぞ! 乗用車サイズに撥ねられただけで、右足がひどいことになったんだ。あんなの喰らったらそれどころじゃないよ。


 なに? あんなにデカいんだから、撥ねられるんじゃなくて踏み潰すだろうって?

 どっちにしろ変わんないよ! 喰らったら一撃で死ぬって!


 それをいったらさっきのボスのトロールの棍棒の一撃もそうだけれどさ。


 こっちは余裕がないんだよ。


 恐竜は扉に激突して一度は止まったものの、すぐに体勢を立て直してまたしても突撃している。


 狙われたのは弓スケさん。哀れ弓スケさん、粉々になって戻された。


 これ弓を射る暇ないな。


 スケさんは器用に下げられた頭を躱し、さらには迫りくる足をも躱して恐竜の腹の下に潜り込んだ。


 そのまま剣を上に突き上げ、腹を攻撃!


 あ……。


 恐竜、その場で蹲る。スケさん、潰されて戻された。


 頭がいいぞ、あの恐竜。


 スケさんを再召喚。そして弓スケさんの代わりにスケ魔姐さんを召喚。


 恐竜。爬虫類。寒さに弱い!


 ということで、冷気魔法を逃げながら撃ってもらおう。私も弓をしまって、魔法攻撃に切り替え。弓はどうしても射るのに足が止まるからね。


 それにしても、体当たりなんてシンプルな攻撃方法だけれど、巨大質量による攻撃で、これほど怖いものはないよ。


 だって止められないもの。


 しかも相手は恐竜。それも鎧竜なんて呼ばれている類のものだ。その皮膚、鱗はまるで装甲板みたいに固い。


 矢を射ても、ダメージが入る程には刺さらないだろう。そうなるともう魔法しかない。


 とにかく走って逃げ回りながら、【氷杭】を撃って行く。【氷嵐】はスケさんを巻き込まないと確信できる時以外は撃たないようにしよう。


 なんか、前にやったジャイアントバイソン戦みたいになってきた。




 こうして、中ボス戦、恐竜との追いかけっこがはじまったのです。



 あぁっ、スケさんがまたっ!


誤字報告ありがとうございます。

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香箱座りでしょうか?♡ 素敵な小説ありがとうございます♡ 応援してます♡
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