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212 覇者スケさんも装備を変更したい


 ただいま無双しております。


 覇者スケさんが。


 いや、大木さんが「ゴブリンとかが住んでるかもしれないよ」とはいっていたけれどさ。

 まさかこんな規模だとは思わないよ。


 集落どころか、これ、数だけなら都市レベルに増えているんじゃないかな。まぁ、都市と云っても、建っている建物は掘っ立て小屋に毛の生えた程度のものばかりなんだけれど。


 なんというか、規模ばっかり巨大化した村みたいな感じ?


 見つけちゃったものは仕方ない。ということで、殲滅を決行中です。


 ゴブリンからしたら悪夢でしかないし、私なんか悪魔そのものだろうけれど、敵性生物である以上、容赦をするわけにはいかないのですよ! 生存競争は厳しいのです!


 アッハト砦で見たことはしっかりと覚えているからね。奇怪なオブジェにされてた兵士さんたちの姿をね。


 そんなわけで、先ずは手始めとばかりに覇者スケさんを突撃させたんだけれど、おかしいくらい強いんだけれど。


 いや、経験を積めば強くなっていく仕様だっていうのは聞いていたけれどさ。覇者は最初から強いのも知っていたけれど、それを差し引いても強すぎでしょ。


 【バンビーナ】でケルベロスと戦ったりしてたせいなのかな?


 大剣一振りだけで、他に武器はもちろん、防具だって着けていないようなものなんだよ。

 大剣を引っ掛けるベルトを袈裟懸けにしているだけでさ。


 にも関わらず、まともに攻撃を受けることもなく群がってくるゴブリンをバラバラにしていっているよ。


 いわゆる“扇風機”なんて揶揄されるような剣の振り回し方をしているんだけれど、ブン! と一巡りするとゴブリンが五、六体が両断されて吹き飛ばされていく。その飛んできた上半身だの腕だのに当たり、転倒するゴブリン。


 普通は当たんないから扇風機なんて云われるんだけれどね。さすがは覇者。めっぽう強いよ。


 既に百体以上血祭りにあげているけれど、一向に減る気配がない。


 ……冗談じゃなしに万単位でいないか、これ。さすがに洒落にならないでしょ。生存競争相手になってる知的生命体がこんだけ増えてるとか。脅威でしかないんだけれど。


 えぇ、数の暴力には個体の強さなんぞ何の意味もありませんからね。象だって軍隊アリには負ける、なんて聞きますし。

 潰せるものは潰さねばならないのですよ!


 とりあえず、覇者スケさんから離れたところのゴブリン集団に魔法を一発射込む。


 射込む魔法は【狂暴化】。同士討ちをさせるよ。


 あぁ、私は【不可視の指環】を装備して姿を消しているよ。もちろん、隠形モードで気配も消していますとも。

 すぐ側にはビーもいるはず。この子、いつの間にやら透明になる魔法まで覚えたんだよね。多分、私が使っているのを見て真似たんだろうけれど。


 さすが悪魔兎(ヴォルパーティンガー)、というところなのかな?


 ゴブリンは盛大に同士討ちを開始。また随分と容赦ないな。敵と認識しているとはいえ、同族であることも認識しているだろうに。


 英雄スケさんも追加するか。


 そうそう、召喚魔法、ララー姉様の調整が済んだみたいで、若干仕様が変わった。というか、拡張? って云えばいいのかな。


 永続召喚が特定個体に限定されていたものが解除されたよ。


 とはいえ、魔力で体を構築している【走狗】とかは永続召喚はできないけれど。


 なので、スケさんシリーズが、どの子でも永続召喚できるようになったのだ。まぁ、私としては時間制限がとっぱらわれた程度の認識でしかないんだけれどね。


 いや、覇者スケさんが通常召喚できるようになったのか。これまでは永続召喚だけだったから。


 スケさんたちは経験を積めば積むほど強くなるので、ダンジョン内では積極的に呼び出して使って行こうと思うよ。


 そんなわけで、英雄スケさん追加。


 鎧でガチガチだから、見た目的にはリビングアーマーみたいにも見える。


 覇者スケさんが無謀に暴れまわる狂戦士だとしたら、英雄スケさんは堅実に立ち回る騎士だ。


 落ち着き払った動きで剣を振るいゴブリンを屠っていく。そして間合いを越えて接敵したゴブリンは盾で殴り倒し、容赦なくその首を踏みつけ殺す。


 いや、それは騎士の戦い方ではないな、きっと。


 それにしても減らないなー。幸先悪いなこれ。


 容赦なく殲滅していくスケさんたちの後を追うように進む。時折【狂暴化】を周囲に放ちつつ。


 どのくらい時間が掛かるかなぁ。


 ★ ☆ ★


 階層を移動しました。


 現在、三階層へと到達。野営に入っていますよ。


 三階層も平原ダンジョン。浅層は平原で統一されているんじゃないかな。


 ゴブリンの集落の征伐は丸二日とちょっとかかったよ。時間が掛かりすぎ。


 集落の中央に寄るにつれて、やたらと強い個体がいたのが面倒くさかった。戦争師(ウォーモンガー)とか、本当、相手にしたくないよ。あぁ、覇者ゴブリンとかもいたよ。戦争師って、多分、覇者の上の個体みたいだ。そりゃ強いわけだよ。


 うちの英雄スケさんと互角に殴り合っていたからね。


 で、その時、覇者スケさんはなにをやっていたかというと、赤頭(レッドキャップ)共と殴りあい。赤頭。ゴブリンの上位個体? それとも変種扱いにしたほうがいいのかな。

 殺した人間の血で染めた帽子を被ってるっていうゴブリン。


 ここらに人間は来ないから、多分、あの赤黒く染まっている帽子は、動物の血で染めたんだろうけれど。

 こいつらは個体が強いというよりも、集団戦に長けている感じだったよ。


 とはいえ、近接戦闘をしてくるから、覇者スケさんに各個撃破されてたけれど。

 で、私はと云うと、王と女王を狙撃してたよ。


 ゴブリンって女性上位種族っぽいね。王は添え物みたいな感じに見えた、というか、ゴブリン女王が異様に大きかったっていうのがあるけれど。

 なにあれ、三メートル近くあったんだけれど。


 人食い鬼とかじゃないんだからさ。


 とはいっても、飛竜くらいなら一撃で落とせる威力の弓で狙撃したから、さすがに一撃でお亡くなりになりましたよ。


 そもそも竜を一撃必殺で仕留めることを前提に作った弓なんだから、そんなものを女王とはいえ、ゴブリン如きに使うことが反則級なんだろうけれど。


 対物ライフルを振り回してブッパしているようなものだからね。


 ヘッドショットしたら首がもげたよ……。


 こうしてみると、地竜とケルベロスが、どれだけイカレタ耐久力をしていたのかがわかるよ。あいつらを仕留めるのに、どれだけ矢を射ったっけ?


 あれが地上に出てきたら、それこそ災害でしかないね。剣と弓が主流の世界で、どうやって退治するんだ? ってレベルだもの。


 毒を使うのが一番楽だけれど、あの巨体を仕留めるだけの毒を作るのも大変だし、そもそも毒の扱いは面倒だからね。保管だのなんだの。


 で、王の方はビーが電撃で仕留めてた。ただ、かなり手間取っていたよ。王は王で、覇者ゴブリンくらい強かったみたいだ。


 というか、ビー、強いな。


 でもサムヒギン・ア・ドゥールには捕食されたりするみたいだから、相性的なものはあるんだろう。

 実際、私ももう、あの蛙は二度と相手にしたくないし。あの聞こえない【叫び声】は洒落にならないよ。


 さて、野営だ。


 野営といっても、殊更やるようなことはない。食事の準備だけ。寝るのは適当に敷物を敷いて寝ればいいし。


 人目もないので、道具は取り出し放題だから準備も片付けも楽なんだよ。


 まずは七輪をだして火を焚いてと。


 フライパンをどん。バターをたっぷり落として全体に馴染ませたら、縦に四等分にスライスした茄子を並べていく。


 ふふふ、茄子のバター焼きですよ。茄子を使った料理では、一番好きな料理だ。バターを含ませてしっかりと火を通した茄子は、醤油をちょっぴり垂らして食べると美味しいのですよ。


 皮の固い茄子だと、ちょっと食べにくいけれどね。


 ひとりニヤニヤしながら、フライパンの中の茄子を様子を見守る。


 ビーには白菜を丸ごと一個、渡してある。一枚一枚葉っぱを丁寧に剥がして、もりもりと食べている。

 ペースが遅いのは、あとで焼くお肉のためだろう。


 茄子が焼き上がったところで皿へと移し、次いでフライパンにはお肉を投入。塩胡椒をして、蓋をしてじっくり焼いていく。


 そこで見張りをしていた英雄スケさんが私の肩を叩いて来た。


「ん? どうしたの?」


 訊くと、英雄スケさんは自分を指差し、ついで、手でなにか丸いものでも持っているかのように、胸元で左手を下、右手を上に置き、くるんと回転させた。


 えーっと……。


「自分を交代させろ?」


 英雄スケさんがうんうんと頷く。


「ほかのみんなも出したい、ってことかな?」


 またしても頷く。


 ふむ。これは、他のスケルトンたちにも経験を積ませたい、ってことだろう。


 スケさんたち、中身はみんな一緒で、経験を並列化なんてことをしているわけではないみたいだ。各々別個体、ってことか。


 ……あれ? そういや、私は同時に二個体まで召喚できるよね。その場合はどうなるんだ?

 中身が同じものが二体?


 英雄スケさんに訊いてみたよ。


 うん。どうやら、同一の個体が二体でてくる感じみたいだ。その場合のみ、経験は並列化するみたい。


 ってことはだ、同じスケさんを二体だして戦闘させると、二倍の速度で成長するってことか。


 あ、そうだ。前から気になってたことを聞いてみよう。


「装備をこっちで変更したらどうなるの? 変更した装備で次の召喚の時もでてくるのかな?」


 訊いてみた。もしできるのなら、強化ができるんじゃないかな。今使ってる武器は鉄製の武器だし。

 ぶっちゃけ、初心者装備みたいなものだ。質はいいみたいだけれど。


 なんだか、わちゃわちゃ動いているけれど、いまひとつ読み取れない。いちど送還しろって云ってるようにみえるんだけれど。


 あ、あってるみたいだ。


 それじゃ【自己解呪】を掛けて、召喚維持状態を解除。英雄スケさんが消える。でもって、再度召喚すればいいのかな?


 英雄スケルトンを召喚しなおす。すると、素のままの姿で英雄スケさんが召喚された。除装された状態だから、ふつうのスケさんにしか見えないよ。武器をもっていないけれど。


「英雄スケさん……だよね?」


 コクコク。


 スケさんが頷く。


 とりあえず、フライパンの肉をひっくり返す。焦げたら大変だ。


「それじゃ、装備を……そうだ、どうせなら【竜骨】装備にする?」


 おぉ、両手を天に突き上げ、喜んでる喜んでる。


 【竜骨の鎧】、鍛冶技能がレベル百を突破したときに、試しに作ったんだよね。基本的に削るだけだから、金属鎧ほど大変ではなかったよ。いや、削るのは骨が折れたんだけれどさ。えらく固いから。


 【竜骨の鎧】をスケさんが装備する。


 ……骨が骨を装備するのか。自分で提案して置いてなんだけれど、地味に画面が凄いな。


 武器は……あぁ、盾を持つから、【竜骨の盾】と【竜骨の剣】でいいのね。打撃武器は? あぁ、剣じゃないとダメなのね。


 かくして装備終了。


 おぉ、なんだか凄いぞ。【竜骨の兜】は、面頬の部分が日本の甲冑みたいな感じで、仮面みたいになっているんだよ。髑髏が被ると、なんというか、妙な怖さがあるよ。


 ん? 覇者スケさんも装備を変更したい? っていっても、武器だけだけど。


 覇者スケさんは大物武器。迷わず【竜骨の大剣】を選ぶも、【竜骨の大槌】にも興味がある模様。


 大槌……大槌だなんていってるけれど、これ、竜の大腿骨そのまんまだからね。関節部分の丸く膨らんだところを槌にしているだけの。


 これ、アホみたいに重いんだよね。というかだ。飛行生物であるというのに、骨が異常に頑丈で重いんだよ。どういうことなの?


 完全に物理法則に則って飛行しているわけなじゃないっていうのがわかるよ。竜はまさに理不尽の塊だ。


 覇者スケさんが大槌を振る……ちょっぴり振り回されてるな。さすがに重すぎるか。

 うん。大人しく大剣にしておこう。大槌は無骨過ぎて、振り回したくなる気分になるのもわかるけど。


 大斧? 大斧の方がまだ軽いかな。柄まで竜骨じゃないからね。肩甲骨の部分からの削り出しの一品だよ。


 大斧をブンブンと振り回す。今度は振り回されたりもせずにいい感じ。だけれど、覇者スケさんは首を傾げている。


 フィーリングが合わない、って感じかな。


 で、結局、【竜骨の大剣】に落ち着いた。やっぱり使い慣れた武器が一番なのかな。


 それじゃ、ふたりを送還して、ノーマルのスケさんと弓スケさんを召喚するよ。


 スケルトン兵とスケルトン弓兵を召喚。もちろん、このふたりの装備も変更しよう。スケさんには【竜骨の槌】、弓スケさんには【竜骨の弓】だ。


 あ、いま思ったけれど、ひとつしか渡していないから、二体呼ぶと片方は鉄装備だね。サンレアンに戻ったら、もうひとつずつ作らないと。


 私はスケさんと弓スケさんに見張りをまかせると、ちょっぴり冷めた茄子のバター焼きと、ちょっぴり焦げたステーキを食べ始めたのです。




 ビーにも分けないとね。追加でお肉をもう少し焼くとしよう。


誤字報告ありがとうございます。

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