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167 トラブルもなく過ごました


 王都から帰ってきましたよ。


 帰ってきましたが、のんびりしてなどいられません。やることがいっぱいです。

 とりあえず、温室の鉢植えであるドワーフグリーンペッパーを別の鉢に植え替え。これをエメリナ様のところへと持って行きますよ。あと玄関先のトマトも一鉢。それと、養毛剤のサンプルも渡しておかないとね。


 このふたつを侯爵邸まで運ぶわけですが、さすがに抱えていくのは厳しいので、台車に載せてゴロゴロと。


 イルダさんにトマトを渡し、エメリナ様にもドワーフグリーンペッパーを渡してきました。これで侯爵家の食事事情が更に改善されるでしょう。


 いや、この云い回しだと、なんだか侯爵家の食事が貧しいみたいだ。豪勢というわけではないけれど、普通に質の高い食事ですよ、侯爵家は。


 まぁ、こっちの残念な料理文化のせいで、汁物以外は悲しい状況であったのですが。

 いまでは揚げ物が加わりましたからね。あとはパスタ系が進化した感じかな。ラザニアみたいなものが美味しくなったし。


 エメリナ様と養毛剤に関してのお話を終えてお屋敷から出たところ、如雨露を持ってクルクル回ってるイルダさんを目撃。トマトに水やりをしている模様。本当、どれだけトマトが好きなんですか、イルダさん。


 なんだか微笑ましい気分で冒険者組合へと移動。


 私が不在中の委託品のことを確認してきましたよ。預けていた刻削骨の鎧は完売。更に注文が二領はいっていました。近衛隊の鎧のこともあるので、ひとまず受注はストップしてもらいました。

 そして代金を回収。薬の……権利料っていうの? それを含めて。


 それと、運搬力増強薬をお願いされたよ。組合で使うことが思いのほか多いとか。


 倉庫の整理とかかな? でも五分しか効かないものだから、効率が悪いと思うのだけれど。どうせなら装備品のほうがいいんじゃないかな?


 そう思って、タマラさんに提案してみたよ。指輪、ペンダント、グローブ、靴の四点セット。多分これで、二百キロくらい増えるんじゃないかなぁ。


 そんなことをいったら、相談して後日、依頼するかどうかお知らせしますと云われてしまったよ。それとは別に、やっぱり運搬力増強薬は欲しいそうだ。予想外に需要があるみたいだ。


 あぁ、それと、常設依頼で頼んでおいた骨の粉を自宅に運んでもらうように依頼。結構な量とのこと。これは引き続きお願いしておく。依頼料を追加で支払っておく。


 最後にタマラさんからペスト医師仮面を一時的に返して貰って来た。なんだか悲しそうな顔をされたから、代わり仮面として、私が人形の振りをしていたときに被っていた仮面を渡してきたよ。普通の仮面だから面白くはないんだけれどね。


 それと玉ねぎ鎧のモニターをお願いしていたミランダさんと遭遇。問題点を確認しました。問題点は視界だけだったけれどね。見えにくい、ということではなく、左右の視界がないのが問題とのこと。


 あぁ、兜、胴鎧に固定する形になっているからね。視界確保のスリット(っていうの?)は真横にまでつけていないからね。

 途中に支えのフレームがはいるけれど、スリットを脇にまで伸ばそう。


 そして玉ねぎ鎧を回収。報酬は玉ねぎ鎧購入割引とのこと。これも前に云ってたね。


 そして内緒話を少々。もし魔石を持っているのなら、鎧の一部位に魔法を付術するといってみたところ、食いつかれた。

 付術には魔石が必要で、大きいものほど付術する魔法の効果があがる、といっておいた。一部の付術は、魔石の大きさは関係ないけれど、それは内緒。もし、その付術を頼まれたら、極小でいいといえばいいだろう。ちなみに、【無音歩行】と【水中呼吸】【水上歩行】のみっつだ。


 で、後日希望されたのは【運搬力上昇】の付術。


 やっぱり重装鎧はその重量がネックだよね。


 組合での用事を終えたら、次はゼッペル工房。いや、防具系の付術をまだ渡していなかったからね。

 さすがに二月も間が空くと、壊しても構わない防具関連は必要数集まっていたよ。


 ということで、武器の時と同様に、順番に付術を行って、それをダグマル姐さんが分解して術を会得する流れ。耐火の付術を喜んでいたよ。

 鍛冶師だからね。やっぱり火に対する対抗策はありがたいんだろう。


 実際、私のクラフト装備は耐火装備にしてあるしね。


 ちなみにこんな感じ。


 頭:錬金技量上昇

 銅:鍛冶技量上昇+持久力回復速度上昇

 腕:錬金技量上昇+鍛冶技量上昇

 足:耐火+運搬力上昇

 指:錬金技量上昇+鍛冶技量上昇 耐火

 首:錬金技量上昇+鍛冶技量上昇


 指輪は六個も装備すると上昇値上限に余裕で達するので、装備はみっつ。それに四つ目に耐火の指輪を装備してるよ。これで火への耐性は百パー超えるので、火傷とは無縁になりますよ。


 廻るところを回って、止まっていた近衛隊の鎧制作を再開です。




 そんなこんなで十二月も間近に迫ってきましたよ。珍しくなんのトラブルもなく過ごましたよ。


 ……いや、一度、リスリお嬢様に全裸を見られるトラブルはありましたけど。同性だし騒ぐようなことじゃないしね。


 入浴中に突撃されたから、驚きはしたけれど。


 ……いや、長湯過ぎて、倒れたんじゃないかと思われたんだよ。実際、湯船で寝てたから、危ないっちゃ、危なかったんだけどさ。


 あぁ、それと、トラブルではないけれど、よくわからないことがひとつあったよ。


 王太子殿下がお見えになりました。


 ……。

 ……。

 ……。

 え? いや、なんで?


 わかりもしないことで悩んでも意味がないので、話を訊きましたよ。


 体力錬成の方法を訊かれました。


 いや、なんでそれを私に? 軍団にしろ騎士団にしろ、それ専門の人がいるよね?


 私が知ってる体力錬成法なんて、軍隊のアレぐらいしか知らないよ。


 あの品のない歌を唄って走るヤツ。歌詞は即興らしいけれど。実際のところ、大きな声で歌いながら走るのは、体力錬成に効果的だそうだ。心肺能力も鍛えられるしね。さらにマスクをすると負荷が掛かってより効果的。


 かなりキツくなると思うけれど。


 とりあえずそれを云ったよ。ほかには知らないし。


 それで納得されたのかどうかはしらないけれど、そのあと鍛冶場に並べてある鎧を見学して、帰られましたよ。


 なんだったんだろう?


 さて、一ヵ月とちょっと掛かりましたが、近衛隊からの注文の鎧と武器が出来上がりましたよ。あとはこれを納品するだけです。いっしょに国王陛下への献上品として、例の神剣(笑)のお仲間である大斧と弓も送ります。えーと、たしか呪文書もいくつか送るんだよね。

 と、遅くなっちゃったけれど、王妃殿下にも献上品を贈っておかないと。王女殿下に贈って、王妃殿下に贈らないとかおかしいからね。指輪、ネックレス、イヤリングでいいかな。確か王妃殿下は月神教信者だから、黒真珠でつくろう。と、忘れちゃいけない。オカリナも送らないと。


 ……あとは、あぁ、七支刀を教会に送るんだった。鎧作っている時の息抜きと云うか、気分転換で七支刀を打ったんだよ。教会のシンボルだからね。正確には神枝(しんし)っていうらしいけれど。

 実用性のある剣ではないからね。ちょっと装飾をして、シンボルとなる七神それぞれの宝石を刀身の先に埋め込んで、劣化防止のために付術をして完成ですよ。


 付術したのは【不死怪物退散】。全力で付術しましたからね。吸血鬼も裸足で逃げ出すんじゃないかな。さすがに真祖級には効かないと思うけれど、下級吸血鬼には十分効果が出るレベルだと思う。

 まぁ、これは刀剣の体を成しているけれど、祭器だからね。そう云う風に使われることはないだろう。


 収穫祭に間に合わなかったのがあれだけれど、まぁ、いっか。


 と、そうだよ。収穫祭があったんだよ。


 収穫祭は十一月の一日。やったことといえば、教会での祭典で作物をディルルルナ様にお供えを行い、その後、奉納舞いとかがあって、その後は夜通しで宴会に突入という感じ。


 なんだか、女性が想い人に料理を振舞う風習? もあるみたいだ。バレンタインみたいなものかな? いや、こっちのはかなりガチだけれどさ。全力で胃袋を掴みに行くみたいな。

 なにせディルルルナ様、婚姻関連の女神様でもあるわけだからね。


 私もお供え物をして、広場のテーブルに料理を提供しましたよ。宴会用の料理は各家庭が適当に持ちよって、広場のテーブルに並べとくんだよ。それをみんなが適当に摘まんで騒ぐ、って感じ。


 私が出したのは唐揚げ。素材は王都へ向かう途中で狩った斑蛇。さすがに土竜を調理するのは止めましたよ。大変な事に成り兼ねませんからね。

 あんなんでも竜種らしいし。


 唐揚げは好評でした。


 冒険者食堂でも出される料理だから、いまや珍しいものでもなくなったしね。


 あ、食堂で思い出した。ミンサーを作ったよ。エメリナ様が部品単位で頼んだものが届いたから、それを私が組み立てたんだ。それぞれのパーツを作った職人の腕が非常に良かったんだろうね。さしたる調整も必要なく、組み立てられたよ。


 そしてひとつもらっちゃった。


 ひゃっはー! ひき肉が作りたい放題だーっ!


 ハンバーグ、メンチカツ、ミートローフ、コロッケ、肉団子……。


 ふふふ、メニューの幅が、また広がりましたよ。


 ここ暫くはこんなところかな? こんなところだね。


 あとは、ララー姉様に、ナツメグを渡したくらいだよ。あれも温かいところじゃないと育たないから。

 ただ、実が生り始めるまで八年と、柿と一緒だからズルをするようにいっておいたよ。よく実りだすのは二十年経ってからって話だしね。


 王都への荷物は送った(組合へ依頼をだして、隊を組んで傭兵を雇ったよ)。他の鎧の注文も終わらせた。薬も卸した。


 これで請け負っていたものはすべて完了したので、今度こそ、そう、今度こそダンジョンへと突撃しますよ。


 ……あぁ、いや、その前に気になってたことがあるから、それだけ確かめるけど。どうにも不安だから。


 ほら、サンレアンを襲った飛竜。あれの生息地がどこか知っておこうと思ってね。あの吸血ゾンビが見つけて隷属化して、サンレアンを襲わせたわけだけれど、そんなに遠い場所じゃないと思うのよ。


 もしまだサンレアンを行動範囲にするような飛竜が居たら、どうにか処置をしておこうと思って。


 始末するか、【支配】の言音魔法を使うか、どっちかになるかな。


 あぁ、そうだ。【支配】だけれど、これ、【死の宣告】と同様に効果が永続だった。なので、基本的に禁呪扱いにすることにしたよ。


 ほら、前に馬車で絡んできた残念な金髪がいたじゃない。あれを黙らせるのに使ったんだけれどさ、なんか、いまは凄い真人間になってるんだよね。

 それまでの素行が悪すぎたおかげで、無駄に評価が高くなっているという。


 教会を介して、いろいろと奉仕活動的なことを積極的にしているのだとか。


「頭でも打ったんですかね?」


 と、仲良くなった侍祭の女の子が云ってたよ。あぁ、そういや、家に泥棒が入ろうとしてたって、教えてくれたのもその子だ。ボーが足をへし折って捕まえたとか。


 とりあえず我が家の防犯は問題なさそうだ。ちょっと過激だけれど。


 と、話をもどそう。


 まぁ、そんな感じで、飛竜の確認をする予定だよ。【道標】さん頼りになるけれど、反応がなかったらダンジョンにそのまま突撃の予定だ。


 さて、どこのダンジョンから入ろうかな。


 森の奥の未発見ダンジョン、【アリリオ】、そしてテスカセベルムの【バンビーナ】のどれかの予定。

 【バンビーナ】は山の中腹に入り口がある、放置されているダンジョンだ。場所が悪すぎて、今以て尚、発見済みであるにも関わらず、管理されていないダンジョンとなっている。


 でもあの王太子が王位に就いたら、すぐにでも管理に乗り出すと思うんだよね。ダンジョンは資源の塊なんだからさ。

 だから、そうなる前に突撃したい気分ではあるんだよね。


 ほんと、どこから行こうかな。




「【バンビーナ】にしなさい」


 相談したところ、ララー姉様にそう云われたよ。


「理由はなんでしょう?」

「キッカちゃんが云った通りよぉ。管理が始まる前に攻略しちゃいなさい。聖武具がでたら、匿名でテスカセベルムに送りつければいいわぁ」


 えぇ……。


「さすがに匿名はマズいのでは」

「それじゃ、手紙でも付けておけばいいわぁ。“お前を見ている”とでも書いてねぇ」


 ぶふっ!


「いや、ララー姉様!? それじゃ脅迫じゃないですか!?」

「あの国はそのくらいでいいのよぉ。出どころの分からない聖武具。常識的に考えれば、それをポンと渡すなんてことあり得ないことよぉ。

 それも、それがなぜか自分の執務室の机に鎮座して居ようものなら、恐怖でしかないわねぇ」


 ……忍び込んで置いてくること前提ですか。


 ふむ、どこから行くかは決めかねていたし、最初は【バンビーナ】にしよう。【アリリオ】はソロだと、入るのが大変そうだしね。




 よーし。久しぶりのお出掛けだ。ダンジョンを攻略、楽しみだよ。



誤字報告ありがとうございます。


やっと次回からダンジョン?

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