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162 サンレアンへと帰るのです


 九月の四日となりました。本日王都を発ちますよ。サンレアンへと帰るのです。

 侯爵様の馬車に便乗させていただくことになっていますよ。実際のところ、私としてはひとりで帰る方が気楽ではあるのですけどね。とはいえせっかくの好意ですもの、お断りなどしませんよ。


 で、昨日と一昨日にあったことを。三日。ナイフの鞘が出来上がったので、バレリオ様とエメリナ様に確認をしていただく。問題なしとのことだったので、セシリオ様に入学祝を贈りましたよ。

 喜んでいただけましたよ。喜んでいただけましたが、なんだろう、やっぱり距離がある。怖がられてるのかなぁ。

 リスリお嬢様とイネス様にそのことを相談してみたところ、なぜか残念なものを見るような目で見られましたよ!?


 え? え? なにか私に問題があるの!?


 オロオロしていたら――


「問題ありません。キッカお姉様はそのままでいてください」


 リスリお嬢様のお言葉。


 え? いや、ちょっと、本当にどういう事なんですか?


 更に混乱していたら、今度は優しい目で見られましたよ!?


 ……これ以上追求することはやめておきましょう。藪をつついて蛇がでてきたことに驚いて飛び退いたところ虎の尾を踏んづけ、ひぃっ! と悲鳴をあげて手を振り回したら持っていた棒がスズメバチの巣を叩き落とすなどという、まことに恐ろしい状況に成り兼ねません。絶望しかありませんよ。


 人間、知らなければ良いこともあるのです。


 そういえば、柄巻に関しては珍しがられましたよ。こっちは革ひもをグルグルと丁寧に巻き付けて留めるのが主流ですからね。たまに荒布を巻き付けた剣とかもみるけれど、あれは持ち主が応急処置というか、好みで自分でやったものだろう。装飾を施した柄ともかあったけれど、あれ、手が痛くなりそうなんだよね。彫るレリーフのデザインも考えないと、掌が痛くてしょうがないと思うんだけれど。

 なにかの罰ゲームじゃないんだから。


 そしてエメリナ様関連。というよりも食堂と菓子店の方のこと。


 羊焼きの型を八つ、エメリナ様がお買い上げ。いまだになんで十個も納品されたのかはわからないんだけれど、私はふたつもあれば十分だからね。

 お祭り中は菓子店の方は顔を出さなかったけれど、あのガラポンを使って、祭り中はお買い上げのお客様に回してもらっていたそうだ。


 一等は特製ケーキをワンホール。特製というのは、バニラエッセンス使用という意味。バニラエッセンスを一本(日本で売っているような小瓶)提供しましたよ。現状、これの入手先は私以外にない上に、私も量を持っていませんからね。希少品ですよ、希少品。

 ということで、特別なケーキとして景品用にひとつ。


 二等は芋羊羹。私が作っていたのは、パウンドケーキの型を使って固めた大きいものだったけれど、それを切り分けて、日本で売ってた羊羹一本と同じようなサイズにしたものを景品に。これが八本。二本一組で計四つ。


 三等はあのデニッシュ擬きを用いたシュークリーム擬き三個の詰め合わせ。中は生クリームと果物。それぞれ組み合わせを変えた物を三種類。これを八組。


 スカは羊焼きをひとつ。これはこれで受けていたようだ。


 お菓子屋さんらしい、外れなしの福引ですよ。


 これらを祭りの期間中に行っていたらしい。なんだか、異常に盛況であったらしく、争いはなかったものの、開店前から店先で客同士の牽制がすごかったらしい。


 一等がでると周囲から絶望の声が上がったとか。


 ……うん、様子を見にいかなくて正解だったね。殺伐としたお菓子屋さんなんて見たくありませんよ。


 食堂の方は基本的には変わらず。ただ、あの料理対決後、新メニューはまだかと問い合わせが多いらしい。なので、ローストベニソンが先行してメニューに載りましたよ。塩釜焼は要予約です。


 ……ちくしょう。奥義書に鹿肉の英訳が載ってやがったよ。というか、こっちでの料理名が英語になっちゃったけれど、ま、いっか。ローストベニソンってどういう意味と訊かれたので、炙り焼きした鹿肉と答えておいたよ。


「まんまだな」

「まんまですよ」


 なんてやりとりを食堂の料理人さんとしていたよ。


 教会関連。


 こっちは特に変わりはなかったかなぁ。コソコソとお祈り。相変わらず神像が光り輝くから目立ってしょうがない。とりあえず姿を見せて逃げて、その後で【不可視の指輪】を着けて再突入。侍祭のみなさんの噂話を拾ってきたよ。


 男爵は人間を辞めていたっぽい。いまは国の預かりになっているみたいだ。


 あと冒険者組合にも複数人人間を辞めた者がいるとのこと。なんでだ? と思っていたら、バッソルーナから引っ立ててきた連中らしい。


 ……そういや、バッソルーナの男爵邸の使用人もいたな。あいつらも人間辞めているだろうし、聖水、足りるかな?


 不安になったので、足りなくなったら女神様にお願いしろと記した手紙を、教皇猊下の執務室の書類に混ぜて来たよ。署名はレイヴンで。


 粛清者に関しては、男爵邸でのことが広まれば利用しようとする馬鹿は減るだろう。仕事を増やされてたまるかってんだ。


 そうそう、男爵邸にいた唯一人間に戻れたあのメイドさん。彼女は転職……転職? 出家っていった方がいいのか? いや、こっちの宗教はそのあたりは地球の宗教とくらべてゆるいからな。教皇猊下だって結婚可能だし。つか、結婚して子供産むことをルナ姉様が推奨しているからね。


 話が逸れた。


 彼女ですが、侍祭になってたよ。月神教の。熱狂的信者となっているもよう。狂信者とはちょっと違うみたいだから、熱狂的って表現にしたよ。レイヴンが原因みたいだ。


 ま、まぁ、大丈夫かな。きっと大丈夫だよ。


 冒険者組合。


 ここには依頼をひとつ。依頼と云うか、サンレアンまで荷物の運搬をお願いしてきたよ。例の馬鹿みたいに重い鎧。さすがにあれを着て帰るわけにはいかないからね。


 ん? インベントリに入れとけばいいって? いや、そうなんだけれど、侯爵一家と一緒に帰るから、そういうわけにもいかないんだよ。かといって、あんなくっそ重いもんを馬車に積んでもらうわけにもいかないからね。


 あとラモナさんに錬金補助装備を押し付けてきたよ。最高のクラフト装備を作り上げる途上で作ったヤツ。

 指輪六個、ペンダント、コック帽、皮手袋。これだけじゃバランスが悪いから、ブーツとエプロンも渡してきたよ。ブーツは耐火の付術をつけてあるから、火傷をしにくくなるはずだ。エプロンは毒耐性。蒸留中に毒性の蒸気がでたら危ないからね。

 魔法の装備と云うことで、またしてもちょっと騒ぎになったけれど。


 カリダードさんもでてきて、押し付け合いみたいになったけれど、最終的に押し付けることに成功したよ。あぁ、販売したわけじゃないよ。これは錬金台の付属品みたいなものです。と、云いくるめて来たよ。

 そもそも錬金装備って、錬金台がないと意味がない装備だからね。


 そしてどうも錬金台を作るのにとんでもない額が掛かる模様。主に素材のせいで。


 ……考えてみたら依頼した時に宝石を一山置いてきたようなものだしね。いくら安価な宝石とはいえ、塵も積もれば山となる、ということか。


 そういや「なんで月長石がインゴットになってるんだよ」って、おじさん、ブツブツ云ってたな。まぁ、気にしないでおこう。


 さて、これで死蔵決定だった錬金装備が片付きましたよ。でもまだ二セット残ってるんだよなぁ。そういや錬金台ってみっつ作ったんだよね? ひとつはサンレアン、ひとつはここ王都。もうひとつはどこにいったんだろ? 


 カリダードさんに訊いたところ、王宮とのこと。なるほど、ということでさらにワンセットカリダードさんに押し付け。なんか真っ青になってたけれど、なんでだろ? 需要が無ければ、いかに高価なものでも素材の値段でしかありませんよ。服にいたっては二束三文ですよ。


 残りのワンセットはサンレアンの組合に押し付けてと。それとは別にタマラさん用の錬金装備を渡そう。あ、あのペスト医師の仮面を、一時的に戻してもらわないと。付術しないとね。


 そして最後に王宮関連。


 これはバレリオ様経由で聞いたことだけれど、オルボーン伯爵の死亡で、少々騒ぎになっているらしい。レイヴンが出入りしていたことが置手紙により判明して、独房管理官数名が数ヵ月減給になったとか。


 ……うん。ごめん。


 でもそれなら歩哨と門番もなんだけれどね。


 王太子殿下はお祭り中もいろいろと吸血鬼関連の対処を行っていて、ほぼすべての例のお酒を回収したらしい。消費分はどうにもならないけれど、飲んだ者もほぼみつけだして、現在は解毒薬待ちとのこと。……ラモナさんが作ったモノの他に、私も在庫をほぼ提供したんだけれど、それでも足りなかったか。まぁ、私は二百本しか出せなかったからなぁ。

 あとは教会頼みなんだけれど、他者に解毒の魔法を掛けるのは厳しいだろうなぁ。魔法を合成しないとできないし、そうすると魔力を馬鹿みたいに喰うから。


 それにしても王太子殿下、すごい頑張ったんだな。あとダリオ様も。お祭りとアレクサンドラ様そっちのけでお手伝いしていたみたいだし。……将来の夫婦生活に問題を残さなければいいんだけれど。


 アレクサンドラ様が会うと私にべったりなのは、ダリオ様がいないからじゃないかと思うし。今にして思うと。


 それと、本当にナランホ侯爵の領地が没収された。人身や領地を賭けた決闘は駄目と国王陛下はいっていたと思ったけれど、おかまいなしにやったみたいだ。まぁ、私は一向にかまわないけど。ナランホ侯爵は性癖のこともあって大変なことになっているそうな。知ったこっちゃないけど。一応、文官としての仕事をしているらしいので、路頭に迷うことはないみたいだ。領地無しの宮仕えの下級貴族はそれなりにいるけれど、上級貴族は前代未聞の存在だぞ。どうでもいいけど。


 と、あとひとつあった。私が男爵邸から教会へと向かった後に、王太子殿下と殿下直轄部隊が男爵邸に到着。男爵邸を家宅捜査したそうな。まぁ、バッソルーナの本邸のほうから不正の証拠が山ほどでてきたらしいから、レブロン家取り潰しは確定しているみたいだけれどね。というか、男爵は死罪確定みたいだから、レブロン家は滅亡だね。


 そうそう、あらゆる病を治す薬、実在したよ。あの毒の酒のことだった。なるほど、あれを一定量以上飲めば不死の怪物化するから、そりゃ病も毒も無効化できるわな。なにせ生命活動がなくなるんだもの。毒にも病にも侵されませんて。


 王宮のほうはこんな感じかなぁ。


 そして最後にイリアルテ家。セシリオ様がこのまま王都邸に残って学院に通うわけだけれど、それに伴ってサンレアンから同行してきたメイド二名も残ることに。うん、セシリオ様付きのメイドさんふたりね。その替わりに王都邸のメイドふたりがサンレアンへと異動となりました。


 ひとりはイルダさん。急に知らされて泣いてたよ。トマトが……トマトが……って。いや、種をあげたらはしゃいで植えてたのは知ってるけどさ。毎日にっこにこして世話してたのも知ってるけどさ。どれだけトマトを気に入ったのよ。


 うん、サンレアンに戻ったら、玄関先のトマトの鉢植えをひとつあげよう。あそこまで執着しているなら、きっと大事に育ててくれるだろう。あ、あの土はチートな土だっけ。いや、魔石と聖水がないと維持できないで普通の土になっちゃうから問題ないか。私の留守の間は女神さま方にお世話して頂いてるから維持できているけれど。


 そしてもうひとりが私のアシスタントをしてくれた、名前をかたくなに教えてくれなかったメイドさん。このほどエメリナ様から教えてもらえたよ。


 ティッカさん。字で書くとこうなんだけれど、こっちの発音だとほぼ私と一緒になるんだよね。そのせいもあってか、名乗りたくなかったみたいだ。……なんで!? え、私と同名じゃ嫌なの? 訊いてみた。


 畏れ多いです。


 とんでもない答えが返って来た。神子と呼ばれることに関しては半ば諦めつつあるけれど、畏れ多いとか……私は女神様じゃありませんよ!


 これはどうにかしないとダメなんじゃなかろうか? もっとポンコツっぷりをだすとか。いや、さすがにそれは嫌だなぁ。そもそもわざとやってるわけじゃないし。高校時代、歩く無駄遣いとかよくわからないことを云われたりしてたんだから、しっかりしないとロクなことにならないんだよ。ならないハズ。え、却ってそれが悪い? ならどうしろと?


 結局なるようにしかならないか。


 最後に黒マント。行方不明になってやがった。


 これにより、遺体安置所の番人だか警備だかがクビになったらしい。いや、どうでもいいよそんなこと。

 これ、私を殺しにくるんじゃないかな。帰るところなくなっちゃったし。




 お屋敷の前に馬車が六輌……馬車も輌で数えていいのかな? なんか違和感があるから台にしよう。馬車が六台。なかなかの大所帯。侯爵一家四名+一名で二台。メイドさんたちで二台。二台は荷物。護衛騎士さんたちは馬で同行しますよ。御者は専任の御者ではなく、メイドさんたちが持ち回りでやるみたいだ。


 ……多芸だな、侯爵家メイドさん。


 出自は王宮仕えと違って平民出の娘もいると思うんだけれど。いや、だからこそか。


 というか、イルダさんはまだトマトトマトとぶつぶつ云ってるよ。トマトに中毒性ってあったっけ? しょうがないなぁ。サンレアンに戻ってから驚かせようと思ったけれど、いま云っちゃおう。サンレアンに戻ったら、トマトを一鉢あげるからって。このままじゃ鬱陶し過ぎるし。


 道路に出て、荷馬車に荷物が積み込まれるのを眺めつつ、出発まで暇つぶし。


 私の荷物は特に増えていないしね。羊焼きの型くらい? ガラポンはエメリナ様に売却済みだし。あぁ、玉は交換して貰わないと。あれ魔石だから、サンレアンに戻ったら、骨で作り直そう。


 うーむ、本当にやることないな。ベニートさんたちには、お世話になったお礼に回復薬軟膏を渡してきたし。


「キッカお姉様、なにをそんなところでぼんやりとしているのですか。早く馬車に乗りましょう」

「準備は完了ですか?」

「次が最後の荷物です」


 リスリお嬢様が運ばれて来る木箱を指差した。


 なんだろ? ……あぁ、イルダさんかティッカさんの荷物か。ふたりは引っ越しみたいなものだからね。


 ん?


 ゆるい殺気を感じ、出どころに視線を向ける。


「リスリ様。侯爵様の元へ。急いで」

「お姉様?」

「急いで」


 リスリお嬢様が不安げな顔で離れる。


 私が目を向けた先。フード付きのローブを羽織った人物。目深に被ったフードでその顔は伺い知れない。だが軽装の金属鎧に身を包んでいるのがわかる。


 某ゲームの逃亡兵みたいだ。


 金属製のブーツで石畳を叩きつつ、ゆっくりと歩いてくる。


 貴族街はほとんど人通りがないから、いやに目立つ。


 というかさ、フラグ回収が早くないかな? こう、流れ的にはサンレアンで襲撃されるのがパターンってものじゃないかな? ここには護衛の騎士もいるんだよ。ナナイさんにロクスさん。それに加えてバルキンさんも入ったからね。


 うん、怒っているんだろうな。それでこの程度の殺気か。王宮で蹴り飛ばされた時は分からないハズだよ。殺気がないんだもの。完全にビジネスとしてやってるような感じなんだろうな。


 歩みが速くなり、急にダッシュに変わる。


 剣の柄に手を当て、右肩を前にショルダーアタックでも掛けるような感じて突っ込んで来る。


 居合みたいなことをする気かな? でも剣を抜かせなけれな問題ないよね。


 襲撃者が抜剣す――


『加速装置!』


 言音魔法【時間鈍化】。時の流れを遅くするというとんでもない魔法。それも、自分とそれ以外で、時間の遅さに差ができる。結果として、私の動き、思考が加速されたようなことになる魔法だ。


 剣を抜き切られる前に間合いを一気に詰め、柄頭を踏みつける。当然、剣は抜くに抜けない。そして私は剣を足場に駆け上がる。


 結果として、襲撃者の顔面に左ひざが直撃した。


 敏捷・技巧上昇指輪最高! どっかの漫画で読んだようなことが、鈍臭い私でもできたよ!


 でも左ひざがめっちゃ痛い。だけど顔面の骨を砕いてやったぞ! 顔を蹴られたお返しをしてやったもんね!


 私は襲撃者に覆いかぶさるように前傾に身を倒し、そのまま地面にごろんと前転して立ち上がった。

 足の痛みをこらえ振り返ると、襲撃者は剣に手を当てたままよろけていた。


 右手を向ける。言音魔法の効果が切れ、時間が正常に動き出す。


 【電雷撃(サンダーボルト)】!


 手から撃ち出された雷が襲撃者を貫いた。その一撃の威力にたたらを踏み、顔面を手で押さえた。

 そこをロクスさんとバルキンさんが取り押さえる。ナナイさんは侯爵様たちを護るように立っている。


 うーむ、熟練級でもひるむ程度か。スタンもしないし、不死の怪物化すると本当に厄介だな。


「ちょっ、なんて馬鹿力だよ」

「諦めろ!」

「そいつ不死の怪物ですから気を付けてくださいね。もし引っ掛かれたり噛まれたりしたら云ってください。薬を渡しますから」

「マジかよ、って、大人しくしろや」


 バルキンさんが襲撃者の頭をどついた。


 おぅ、骨の折れる音がしたね。【死の宣告】の威力は本当に恐ろしいな。誤爆は絶対にしないように気を付けよう。


「キッカ殿、どういうことだ?」

「あ、こいつ、王宮で私を殺そうとした奴です。バレリオ様が教えてくださったじゃないですか。あの消えた死体ですよ」

「以前キッカ殿が捕らえたやつか?」

「いえ、武闘大会予選後の夜に呑んだくれて転んで死んだ奴です」


 私が答えると、驚いたようにバレリオ様は襲撃者を見つめた。


「どうしましょう?」

「ベニートを治安維持隊詰め所に向かわせたが……王太子殿下の部隊を呼んだ方がよさそうだな」


 バレリオ様がそう云った時点で、メイドさんのひとりが王宮に向かって走って行った。


「やれやれ、これは出発が遅れそうだな」

「私は私の命を狙っている奴らがすべて片付いたので、一安心ですけどね」




 かくして、私たちの出発は、午後へとずれ込んだのです。



誤字報告ありがとうございます。

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